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「ん......っ?」
なにやら微かに物音がした気がする。ぼんやりと意識だけが起きた状態でそれを感じ取ったので定かではないが。目で確認しようとしたが瞼が重たくて開けれない。
「おいおい、こいつァもしかしたら...!!」
微か、本当に微かだが銀ちゃんの声が聞こえる。いつも独り言をぶつぶついう人だが今回は自棄に騒がしい。わたしが小さな物音でも起きることを忘れているのだろうか?
その時暗い部屋に灯る小さな明かり。明かりが付くと同時に機械音が聞こえたということは今ついたのはテレビだな。
「ーーーーーーー。」
「ーーーーー!!」
「...?」
なにを言っているのかよく聞こえないがふたりの内ひとりは何やら興奮しているらしい。早口で声も大きかった。
その声を数分聞いていたらソファがドカッと沈んだ。今のでまた少し意識が目覚めた。
「ははっ、やべーな。」
小さな声だったが確かにそう聞こえた。わたしはその呟いた理由を聞こうと体を起こそうとしたが、寝不足のためか体が重く言うことを聞いてくれない。
わたしはただただ乾いた声で笑う銀ちゃんを眺めることしかできなかった。
そこで意識が途切れた。
「......っ。」
「......あ、起きたか?」
頭を押さえながら起き上がると既に部屋は陽の光で明るく、朝だと感じさせられた。ぼやけた視界に映るのは冷蔵庫を漁る銀ちゃんだった。
「......今、何時?」
のそりとソファから起き上がり髪の毛を手櫛で整える。その間に飲み物をとりコップに注ぐ。そしてわたしの隣に座り頭を撫でた。
「ちょうど11時ぐれーだよ。凛華にしてはよく寝たなァ。」
「11時かァ。本当よく寝たね。」
大きな欠伸をする。目に涙の膜が出き視界が歪む。
「ご飯は後でいいよな。」
「うん、昼と兼用でいい。」
「おう。」
そう言って飲み物を飲み干し立ち上がる銀ちゃん。
「......ま、待って。」
それを袖を掴み阻止した。
「なんだ?やっぱ腹減ったのか?」
「ち、違う。聞きたいことがあって。」
「聞きたいこと?」
「うん。」
昨日ね、そう呟いたら銀ちゃんは片手でわたしの口を塞ぐ。突然のことで驚いた。
「ひ、ひんひゃ?」
「......。」
口が塞がれているためうまく話せない。
「......実はさ、昨日依頼が来た。夜中に。」
「!」
夜中、ということはどこかのお偉いさんか秘密企業かはたまたヤクザ関係か。とにかく表にあまり出れない人達が依頼をする時は必ず夜中と決まっている。
「ひょ、ひょれれ?」
「......来週末、依頼主が開催するパーティーに参加することになった。」
「!」
「そこで依頼の話をするそうだ。」
そこまで喋り片手を外す。わたしは目一杯酸素を吸った。
「な、なんで口塞ぐのよ!」
「いや、先に言われたら言うこと忘れちまいそうだから。」
「あんたの頭どんだけ記憶力ないの!?」
「こーんだけ。」
「頭おかしいんじゃないのォォォ!!?」
「あぁ?俺の記憶力嘗めんなよ。あることだけの記憶力だけはいんだぞ。さてなんでしょう?」
「......AVビデオの映像。」
「ピンポ「んなこと自慢しなァァァァァい!!!」ぐぼえっ!」
こんな会話をしていたら夜中聞いていた謎の呟きも乾いた笑い声もいつの間にか頭の中にはなかった。
ただ時々、こうしてふざけているたった一瞬悲しい目をしてわたしを見る銀ちゃんを見逃すことができなかった。
真夜中のメモリー
おやすみなさい。
しばらくの間だけ。
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