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今日は涼しいからと窓を開けた。空は闇で覆われていてその中で必死に輝き続ける星にエールを送る。
「ぶっえくしょい!」
ずずっと鼻をすする。もう花粉の季節かコノヤロー。どこかで花粉対策しねェとな。鼻で息を再び吸い込んだらまたくしゃみが出た。
「ジャネットソンッ!!」
「ん、ぅ。」
肩をびくつかせ声がした方を見る。そこにはソファで気持ち良さそうに寝た凛華がいた。やっぱり昨夜寝不足だった彼女は眉間に皺を寄せながら寝ている。
「ったく、女が眉間に皺つくってんじゃねーよ。」
つんつんと眉間をつつくとふにゃっとだらしのない顔になった。それがひどく面白い顔だったので思わず吹き出してしまった。
そして優しく頭を撫でてやる。さらさらとした髪が俺の指と指の間を通り抜けていく。触り心地のいい髪だ。
「......と、さん。」
ぼそりと呟くその言葉に体が反応する。父さん、身寄りのない俺たちを救ってくれた恩人だ。そんな父さんの真実を追い求め俺たちは今もこうして怪盗を続けている。
しかし最近疑問に思うようになった。父さんは殺された、ならどうしてニュースや新聞には載らなかったのだろうか。殺人事件は地元新聞だったらどこかに載るはずだ。それがいくら探してもなかった。つまりこの事件はある圧力によって揉み消されたとなる。
どうしてそこまでしてこの事件を揉み消さなければならなかったのか。俺の考えだとその圧力を掛けた人間が偉い高い地位にいるからだと考える。もし関わっていると知られたらその地位が危険に及ぼされるからとか。まああくまで予想だが。
「......面倒臭ェな。」
この世界は人間関係がごちゃごちゃしすぎて本当に面倒臭い。まるで木の枝みたいだ。こっちと繋がっていると思えば実は他のところとも繋がっていました、みたいなオチ。まじ笑えねー。
あー、考えすぎたら喉乾いた。
重たい腰を上げ冷蔵庫の中にあるいちごみるくを取り出そうとした時だった。
カタッ
「?」
玄関の方から僅かだが物音がした。新聞にはまだ早すぎるし郵便もこんな遅い時間には届かないはずだ。
警戒しながら玄関を開け、ポストの中を確認する。そこには一通の手紙があった。
「依頼か?」
ここの依頼は郵便屋さんに任せられない。そんなことをしたら居場所がバレてしまうからだ。だからこうして夜な夜な手紙を置き依頼を申し込むことも少なくはない。といっても大体鳥かなんかに任せることが多いが。
ガチャ、と鍵と錠を閉め手紙の封を切る。手紙の中には「招待状」と綺麗な字で書かれてあった。
「おいおい、こいつァもしかしたら...!!」
招待状と書かれた下の文字を見る。
あなた様「銀の猫」を来週末にあるパーティにご招待致します。その時に依頼の話をさせて頂こうと考えております。
場所は下記の通りです。
よいお返事お待ちしております。
その時俺は脳裏でなにかが思い出された。
「来週末、て。」
リモコンを手に取りピッとテレビをつる。
『いやー、この度は本当におめでとうございます!』
『ありがとうございます。』
『今後はどんな政治をしていきたいですか?』
『そうですね、やはりまず一番最初は国民の皆様の安心安全信頼を守っていけるような政治にしていきたいです。』
『今後の活躍に期待しております!』
『任せてください。』
そこに映し出されていたのはつい先日決まった総理大臣とアナウンサー。
『また来週末にはなにかが開催されるようですが。』
『はい、実はわたしの取り組みについて国民の皆様にお話をしたいと思い就任式を致します。』
『それは一般人の方は入場可能なのですか?』
『本当はそうしたいのですが、そうしてしまうと大規模なことになってしまうので今回は招待された方のみとなります。』
『それも大規模なことですよね!』
『えぇ、しかし皆様に今後のわたしの取り組みを知ってもらいたいので。』
そこからの会話は一切聞こえなかった。あまりにも驚きすぎてだ。下に書いてある住所も来週末にあるパーティも全て辻褄が合う。
そして俺が考えた予想も。
「ははっ、やべーな。」
とんでもない奴に手を出そうとしていたのか俺たちは。
夢の中の子羊よ
できればこのまま夢の中で過ごしてほしい。
こんな汚い真実、知ってほしくないんだ。
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