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「......。」
「......。」
「はよ。」
「......ん、はよ。」
居場所がばれてしまったため、新しいところに引っ越さなければならない私たちはつい昨日引っ越すことに成功した。といっても秘密場所の中の一つだが。
そこで久しぶりに朝を迎えたわたしは少し寝不足気味だった。
「いや、少しじゃねーだろ。相当だろ。」
「人の心境勝手に読むなコノヤロー。」
「読んでねェよ口に出てんだよコノヤロー。」
「なんだとコノヤロー。」
「あんだとコノヤロー。」
いがみ合うがなんかそんな気もすぐ無くなり視線を下に向け、体の中の域を思い切り出した。
「......なんかあったか?部屋使い難かったとか?」
「とくにない。」
「じゃあ、Gが出たとか。」
「そんときはすぐ銀ちゃんを呼ぶよ。」
「あ、お腹減ったか?」
「不思議なくらいに減っていない。」
銀ちゃんがわざわざ心配してくれているのにわたしは冷たい言葉でしか返せない。こんな自分は嫌いだ。昔はもっと純粋で明るくて素直で、今とは真逆の自分だ。
「凛華。」
「なに?」
わたしの手を片方でぎゅっと握り、もう片方で頭を優しく撫でてきた。
「昔の夢、見たか?」
「......別に。」
「震えてっぞ。」
暖かい手が銀ちゃんの方へと引き寄せた。わたしはそのまま銀ちゃんの中へと埋もれていく。
「震えてない。」
「嘘、震えてる。」
「震えて、ない。」
「......昔から変なところで意地っ張りだよな凛華。」
「う、うるさ、ぃ。......ふぇ。」
なんかわかんないけど昔から銀ちゃんはわたしを慰めるときに、手を握り優しく頭を撫でてくれる。それが妙に心地よくてつい甘えてしまうわたしがいる。
それを卒業したのはあの、父さんが亡くなったあの日。あの日からわたしはひとり復讐心に燃えていた。あの現場を見たのがわたしだけだっただろうか。他の子よりも遥かに憎しみが大きかった。
そんなわたしを見て銀ちゃんはいったのだ。
「復讐して何が残んだよ。」
知らない、そんなこと知らないよ。そう頭の中では否定の言葉を並べるのに、隅では銀ちゃんの言葉が強く残っていた。
結局わたしは復讐という道には走らなかったが、かわりに真実を求める道に走った。それがこれ「銀の猫」だ。
父さんに依頼した奴らはどうもあるお宝が欲しかったらしい。なんでもこの世に一つとも並ぶものがない高級品ということだ。
私たちが有名な怪盗になったらあいつらは絶対依頼しにくるはずだ。今のところそのお宝が盗まれた情報はないから。
「ぐすっ。」
堪えようとする涙は余計に銀ちゃんの胸元を濡らしていく。その部分が見えないように力強く服を掴んだ。
こんな弱いわたしは、
「う、ぅ......。」
「大丈夫、あいつらは絶対来る。絶対。」
あいつらがくる瞬間まで、
「ぎ、ちゃん...っ!!」
「大丈夫だ。」
銀の猫で居続けると誓った。
これからも
負けない、昔なんかに負けない。
わたしは復讐をするんじゃない。
真実を知りたいだけなんだ。
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