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目の前に広げておいてある毎朝届く新聞。この新聞はこの都市で人気のあるもので都市の約86%は読んでいるという。
その大人気の新聞を私たちは挟んで眺めていた。
「......。」
「......。」
そこに書かれているのは「銀の猫が失敗!?」というでっかい文字。
「「はぁ...。」」
それを再び見て、また溜め息。一体これで何回目だよ。
いや、別に悔しいとかそんな...。嘘です非常に悔しいですこんな風に書かれて。
そう、私たちはこの前の罠にはまってしまい依頼の物を盗り損ねてしまったのだ。
こんなことは今までなかったので心境があやふや。悔しいけど悲しいしどこかほっとしてる。
「なぁ、凛華。」
新聞を掴みゴミ箱に投げた銀ちゃん。顔が怖いわ。
「なに?」
「結局昨日の罠どこからかわかったのか?」
「......それがさー、」
本日何回目の溜め息をつき、わたしの愛用パソコン(べりーちゃん6号)を開く。
そしてカタカタとキーボードを叩きある画像を開く。その画像とは、
「あれ?こいつこの前依頼してきたやつじゃねーか。」
「そう、この依頼主なんだけどよくよく調べたらね、」
エンターキーを勢いよく押す。でてきたのは警察の格好をしている依頼主。
「警察署警部補佐の妹、土方柳江でした。」
「......おーおー、大層な美人なことだ。」
そう、今回の最大のミスはあの依頼主を受け入れたことから始まったのだ。
警察に偽物の依頼をされ偽の宝物、そして罠があるお屋敷。全て警察の作戦だったということだ。
「あーあ、素顔も居場所もバレたね。」
「ちぇ、面倒臭ェ。。」
ぶつぶつ言いながら口を尖らせる。子供か、とツッコみたいけど気持ちがわからんでもないのでやめておく。
「まあ、移動するしかないわ。」
はああぁー、また大きな溜め息をつく。引っ越しとかは楽しんだけど荷物整理とかが面倒なんだよなー。
「っつーことで、」
銀ちゃんはソファのクッションの間に手を突っ込み、小さな黒いものを取り出す。
最新型の盗聴器だ。
「俺らは移動するわけ。」
あえて「俺ら」のところを強調する。そうだよね、今まで警察は一人だと思ってたもんね。
「居場所を突き止めよーが、素顔を確認されよーが俺らは簡単に捕まんねーよ。」
「銀の猫は最強の怪盗なんだから。」
ねぇ?と首を傾げて銀ちゃんを見上げたら子供のように撫でられた。
子供扱いすんな!わたしよりものすごく背が高いからって!
「じゃ、今から他んとこ移るけどなんか質問とかない?」
「はいはーい。」
「はい、どうぞ。」
「先生のネックレスの上についている小さい丸いやつはなんですかー?」
「......これはな、またまた最新型のGPSだな。」
「はいはーい。先生は今まで気づかなかったのですかー?」
「いや、気づいてたよ?気づいていたけどそこはあえてお前に譲ってだな、」
「言い訳見苦しいでーす。」
「いいい言い訳じゃねーし。」
「吃りながら言われても......。」
『......おい。』
ぎゃんぎゃん言っていると、突然銀ちゃんが持っている盗聴器から声がした。
さすが最新型、話すこともできるんだ。つか最早盗聴器じゃなくなってるよね。
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