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ギラギラと辺りを宝石みたいに輝きを撒き散らしているある都市から少し離れたところに存在している街。
そこは住宅街がいくつも立ち並んでおり太陽からの陽を遮断していた。おかげで薄暗くしかもくね道が多いため迷子になりやすい。
それらをある手順で進んでいくと、古びた家が一軒ぽつりと立っている。近づいてみると扉のところには「裏・万事屋銀ちゃん」と書いてある。
興味本意でそこの扉を開けば、
「いらっしゃいませ。」
スペシャリストが迎えてくれるだろう。
「今日はどのようなご用件でご来店致しましたか?」
さあ、全てを話してみなさい。その心の奥にある欲望や嫉妬、憎しみを。
「......実は。」
私たちはそれらを全て解決してみせる。
「なるほど。こちらがお望みのお品ですか?」
「そうですね。」
今日もいいことに客は途切れず依頼を持ってきてくれる。
わたしと銀ちゃんは依頼主の向かい側に座り依頼内容を聞いている。
「それで、その例のドレスってのはどれだ?」
「あ、はい。こちらです。」
そう言って鞄から出した一枚の写真。それを私たちは覗き込むように見る。
「あれ?このドレスってどこかで見た気がする......。」
「それ俺も思ったわ。」
写真に映る美しい紫色のドレス。キラキラとドレスが光っておりまるでダイヤモンドのような輝きだった。
「それもそのはずです。だってあの女優さんが着ていましたから。」
「え?女優さん、ですか?」
「はい、たしか名前は。」
「......思い出した!香山汐莉だ!!」
「香山汐莉!?香山汐莉って大物女優じゃない!?」
香山汐莉。女優界で大変有名で25歳という若さにも関わらず女優最優秀賞を受賞。その後もなお幅広く活動を続けている女優である。
そんな大物女優が着用していたドレスらしい。
「わたしの依頼物はドラマ『千の夜の果て』で香山汐莉が着ていたあのドレスです。」
「......まさか、だな。」
まさか洋服が依頼物の件だとは思わず唖然とする。
「......無理ですか?」
しゅん、と項垂れる依頼主。
「まっさかあ!私たちが引き受ける依頼の達成率は100%ですよ?」
「例え依頼物が洋服になろうがそれは関係ないぜ?」
そして私たちはダンッとテーブルを叩き、言った。
「「この依頼、引き受けます。」」
依頼主はぽかん、と拍子抜けた顔をしていた。
「ほ、本当ですか?」
「もちろんですよ!ね?」
「まあ、任せなって。」
依頼主は先程とは違う顔になり、よろしくお願いしますという言葉を残して去っていった。
笑顔で見送った後、わたしは銀ちゃんの方を向く。
「......で、どうするよ。銀ちゃん。」
「本当だなオイ。」
その時の彼の顔は「面倒くさい」とでも言っているようだった。
「盗むのがあの洋服か。」
「しかも世界的有名が着用していたというあのドレス、だぞ。」
「でも大丈夫でしょ、銀ちゃんなら。」
そう言うと銀ちゃんはニヤニヤした顔で自分のことを絶賛し始めた。わたしはそれを軽く受け流す。
銀ちゃんは褒めたら調子に乗るタイプだ。
ため息を出しデスクに座りパソコンを開く。これは私専用デスクパソコンだ。中身はもちろん企業秘密。
「さて、始めますか!」
銀の猫、行動開始します。
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