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昼間の騒ぎも落ち着きその日の太陽は既に沈んでいる頃、未だに一定の機械音が鳴り止むことはなかった。ただ静かにリズムを刻みベッドで寝る彼女を見下ろしている。


どうやら彼女は運が良かったのか弾が急所を外れたらしい。しかし貫通していたため撃たれたお腹は縫い痕がついているだろう。総理は彼女に一生消えない痕を残して刑務所に入った。


彼女はあの日から目覚めていない。


沖田は彼女に近づきその眠った顔を見つめた。


月の光に照らされた彼女の顔の血色はいい、しかし目元が一切動かない。人は眠っている時時々目元が動くらしい。まあ眠っている限定だが。昏睡状態の時はよくわからない。自分もあまりなったことがないしその時に意識なんてないから。


「しっかし、こいつがねィ...。」


今まで世間を騒がせていた銀の猫の傍ら。こんな華奢な女がよく務まったものだと感心する。


ブー ブー


「!」


ポケットに入っていた携帯が震える。本当は病院で携帯電話を使ってはいけないが沖田にはそんな常識通用しない。


「柳江じゃねーかィ。」


しかもメールではなく電話だ。さすがにこの病室で電話をするのもいけないだろう。そう思い彼はその病室を出た。


扉を閉めて電話に出る。


「デートの誘いかィ?」


『なんでそうなるんだ馬鹿!!ってそれどころじゃない!!』


「なにが?」


様子がおかしい。電話越しの彼女は非常に焦った感じで彼女の声以外にパトカーのサイレンも聞こえる。


『沖田よく聞け!』


「だから総悟。」


『総悟!』


「そうそう。」


『じゃなくて!緊急事態だ!今そっちに銀の猫の傍らが向かっているとの目撃情報が入った!』


「まじかィ。」


『片時も目ェ離すなよ!』


沖田はその言葉を最後まで聞かずに扉を勢いよく開けた。


時は既に遅し。ベッドで寝ていた彼女の姿はなくかわりに爽やかな風が頬を横切った。


「......ありゃりゃ。逃げちった。」


『なんだとォォォォ!?』


「ん?なんかありまさァ。」


ベッドに近づいてみると一枚のメモ紙が置いてあった。そこには小さな丸っこい字で「ありがとうございました」と書かれていた。


「......次こそは捕まえてやらァ。」


柳江の罵声を聞き流し俺は開いている窓へそっと視線をやった。




















「......ふぅ。ここらでもう大丈夫か。」


わたしを横抱きしていた銀ちゃんはそっと息をつき、その場に下ろす。そこはどこかの建物の屋根らしい。下を見ると人がとても小さく見える。


「もう!迎えが遅いじゃない!寝てるフリ本当に疲れた!」


「悪ィ悪ィって。引越しに手間が掛かっててな。」


実はここ3日間の昏睡状態は嘘。医者にも口裏を合わせるように言っていただけ。なんせ昔の客ですから。


「それにしては3日も遅すぎよ!いい加減泣くかと思った!」


「寂しすぎて?」


「そう、寂しすぎて!」


「ごめんって。ちゅーしたら機嫌なおる?」


「そんな安い女じゃない。」


「俺のちゅーは高いぞ。」


「......馬鹿。」


ちゅっとリップ音と共に重なる唇。どうしてこいつは昔からちゅーをしたがるのだろうか。恥ずかしくないのか。


「さて、準備は整ったぞ。」


「うん。」


私たちが追い求めていた真実は暴かれた。使用人が見つかってはいないが直に捕まるだろう。さっき必死に逃げている姿を目撃した。


怪盗の活動理由がない今、私たちが怪盗をする意味がない。これからどうするか、そう問われていた時この都市から随分離れた田舎の方にいい部屋を見つけた。そこは空気も美味しくなにより自然いっぱいに囲まれているらしい。


一から始めたい、そう思って私たちはこの都市を離れることにした。


「ここでは色んなことがたくさんあったね。」


「厄介事ばっかだったな。」


「本当。最悪だった。」


でも、そう言葉を繋げたら不思議と目にたまる涙。


「真実を知ることができた。」


「あぁ。もう呪縛から解放されたな。」


「長年の作戦が今、終わったんだね。」


ウー ウー


下を覗くと赤いランプがこの建物を囲む。どうやら見つかってしまったらしい。


「銀の猫ォォォォォォ!!大人しくお縄につけェェェェ!!」


「やーなこった!」


「それに俺らはもう銀の猫なんかじゃねー。」


ふわっと浮遊感がわたしを取り巻く。銀ちゃんはわたしを再び横抱きにしていた。どうやらまた逃げるつもりらしい。


「ただの坂田銀時と坂田凛華だ!」


ちゅっ


そう叫んでみんなが見ているというのに銀ちゃんはお構いなしに再びキスをした。


「ちょ、馬鹿!人前で!」


「見せつけてんの。お前は俺のだって。」


ニヤッと笑う彼には本当苦笑いしか出ない。というかまだプロポーズもされていないのに結婚もしていないのに勝手に苗字は坂田になるし。本当困っちゃう人。


でも、そんな彼だから


「「逃げろォォォォ!!」」


「あ、待て!!この、坂田ァァァァ!!」


ずっと一緒にいたいと思えるのです。







ずっと一緒に






「銀ちゃんっ。」

「あ?」

「わたしを盗んだ代償は大きいよ!」

「勿論、覚悟できてまーす。」



 
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