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コツコツ


華麗な容姿、危険な香りで大勢の人々を振り向かせる。振り向く人々はわたしの真の姿に気づかないまま、ただ囚われたように見つめていた。


その視線を無視し真っ直ぐとある人物のところまで歩いていく。口に弧を描いているやつの姿を見つめながら。


「えぇ、是非ともお願い致します。」


わははと雑談を交えて愛想よく話を進める彼の左側からそっと声を掛けた。


「総理。」


振り返った彼が目を丸めたのは数秒後。わたしはそんな彼をニコニコと笑いながら話を続けた。


「使用人がお呼びでございます。宜しければご案内致しましょうか。」


「......あぁ、宜しく頼む。」


畏まりました、そう呟き彼を扉まで案内した。背中には痛いほどの鋭い視線が突き刺さっていた。


バタンッ


扉を閉めた瞬間、彼はわたしを蹴り上げようとした。それを上手くかわす。


「ちょっと、危ないじゃないですかァ。」


「なぜっ、なぜ貴様がここにいる...っ!!!」


鼻息を荒くし興奮気味に問いかけた彼を鼻で笑う。


「嘗めないで下さい。伊達に何年も怪盗していません。」


「あそこには鍵が掛かっていたはずだ!!!」


「なに言ってるんですか。そんなの頭を使えば壊せますよ。」


「き、貴様ぁっ!!!」


「それにしてもあの謎はなんですか?大掛かりな情報システムでしたね。あんなものどこで手に入れたんですか。」


「そんなの決まっているだろう、松陽の奴に割り出させたんだ!あいつの情報能力でな!」


「一体あの情報システムはなんですか。」


「あれはな、人工戦闘ロボットの起動システムだよ。」


「じ、人工戦闘ロボット!?」


「あれさえ手に入ればこの国は総理などにならなくても私のものになる!国の王に君臨することができるのだ!」


「そ、そんな...。わたしはなんてことを...。」


「!?まさかっ...!」


「そんなものとは知らず...。と、父さんが研究していたと聞いたから。う、嘘だ!!!」


わたしはしゃがみこみ手で顔を覆う。


「ハハッ、ハハハッ!!!やったぞついに長年の研究が報われたぞ!!!これであの屑研究員共も用無しだ!!!金に困ることもない!!!わたしは自由だ、わたしは王だ!!!ハハハハハッ!!!」


狂うように笑う総理。世界は終わった、そう感じた瞬間だった。




















「あーあー、こちら銀の猫。聞こえますか?」


「......は?」


襟に口を近づけ涙も見せずにわたしは通信機に呼び掛けた。すぐに耳元から聞こえる確認の声が聞こえた。


それを合図に立ち上がる。


「ど、どういうことだ...っ!!!」


「いやあ、残念ですね総理。」


クスクス笑うわたしとは対照的にわなわなと肩を震わしている総理。


「わたしの安い芝居に引っ掛かるなんて、人生やり直した方がいいですよ。」


「き、貴様、まさか、さっきのことは、」


「嘘です。」


そう言って笑うと彼はわたしに殴りかかってきた。一度やられたことはもうやられない。上手い具合にかわしていく。


「よくも、よくもォォォ!!!」


「しかも聞いてくださいよ。これ流れてるんですよ。」


「い、一体どういうことだ!?」


「......だからぁ、」


ザザッ


「『中も外も丸聞こえなんですって。』」


「な、に!!!?馬鹿なっ!!!」


総理は勢いよく扉をバンッと開く。


すると中にいた人達全員が総理を怪訝な顔で出迎えた。中には手に持っていたグラスを落とし顔を真っ青にして否定の言葉を呟いていた。


「嘘、だ。」


「『残念ながら真実です、総理。』」


「......そんな。」


「『さあ、観念してお縄につきましょう。貴方はたくさんの人の幸せを奪いすぎた。罪を償って下さい。』」


どしゃ、と膝から崩れた総理。わたしは彼の横を通りすぎ前に立った。


「『これにて下らないパーティーはお開きです。さあ、皆様外に出てください。』」


その言葉に動揺していたがしばらくするとゾロゾロと人は出口へとむかっていった。


「......けるな。」


カチャッ


その途中だった。


「ふざけるなァァァァァっ!!!!!」


バンッ


「!?」


「き、きゃああぁあぁぁ!!!」


目の前が赤い色に染まった。







明かされる真実







ゆっくりと体が倒れていく時わかったのは、

何人もの警察に取り押さえられる総理と

わたしの耳に貫く銀ちゃんの声だった。



 
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