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「あらら?」


目をまんまるくして盗聴器を見る。


「この声は土方柳江様でしょーか?この前はどうもー。」


顔はニコニコ、だけど声はバカにしたような感じだ。


「すみませんねー、お宝盗れなくって。思わぬ邪魔が入ってしまってね。」


挑発、のつもりだろうか。銀ちゃんはニヤニヤしながら話していた。


『......銀の猫、貴様の目的はなんだ。』


「あぁ?目的だァ?」


『こんなことをしてるのは、理由があるんだろう?』


「理由って言われりゃァ、あるぜ。」


「ぎ、銀ちゃん!」


肩を持ちその次の言葉を止める。これ以上は、


「俺たちはある事情で怪盗になった。」


『その事情は警察が絡んでいるのか?』


「おうおう。すげー絡んでるぞ。」


『......警察のせいか?』


「さァ?そこまでは調べてみろよ。」


「銀ちゃァァァん!!!!」


「ぶべらァ!!?」


銀ちゃんの頭を思いっきり叩き更には足蹴りをする。そして口パクで伝える。


これ以上喋ったら〇〇〇〇する、と。


『銀の猫、か。面白いな。』


「そうか?どもども。」


マイク越しで話しているはずなのにふたりの殺気が痛いほど伝わってくる。銀ちゃんもいつもの馬鹿な銀ちゃんじゃない。


「そんじゃ、柳江様。次の依頼お待ちしておりますよ。」


『はっ。次の依頼とやらはもうないだろうな。』


「......へぇ?」


『その時にはこっちにいるからな。』


自信満々の声で言う。こいつ、強敵だな。


と、その瞬間、


『柳江ェェェェ!!銀の猫と無線繋がってるって本当かァァァ!!』


『あ、兄さん。ちょうどいいとこ』


バキッ


音と共に銀ちゃんが持っていた盗聴器が粉々になる。掌には黒い何かが転がっていた。


それをゴミ箱に捨てる。


「さ、荷造りやるか!」


「......うん。」


「どうした凛華?」


「銀ちゃんの馬鹿さに呆れてた。」


「あ、あれはなァ、ちょっと面白味を分けてやってだな。」


「はいはい。それにしてもさ、」


土方柳江が最後に言った言葉がわたしの耳に残る。


「兄さん。」


「......いいなー、兄弟って。」


「そうだな。」


「天涯孤独のわたしらには関係ないよね。」


「......そうだな。」


沈黙に耐えきれなくなり顔を上げる。窓から空を見上げると、ひとつの星が他のより輝いていた。


それは儚く綺麗に光を放っていた。







天涯孤独の星







あの一等星は私たちによく似ていると思う。

世界で、宇宙でひとつのどこにも属さない寂しい星。




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