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「ぶ、ぶえくしょい!」


ぽかぽか陽気が当たる縁側で日向ぼっこをしながら、ズズッと鼻を啜る音を出す。啜っても啜っても尚鼻の奥に存在している主は負けじと出ようとしてくる。それを再び啜る。


「......花粉かな?」


おかしいな、花粉症ではないはずだ。しかし花粉症というのはある日突然来るものだとお母さんが鼻声で教えてきてくれた。わたしもその日が来るのを怯えて待っていた時期があったなハハッ懐かしい。


あ、また出る。


「あくしょいっ!」


「ぶえくしょいコノヤロー!」


わたしのくしゃみと誰かのくしゃみが重なる。横を見れば顔を歪ませながら鼻を啜る沖田さんがいた。


「あ゛ーっ、辛いねィこの時期は。」


「沖田さん花粉症?」


「いや、だけどくしゃみがよく出るんでィ。」


「それ花粉症でしょ。」


いや、んなことはねェとブツブツ呟きながら縁側を歩いていった。暇だったのでわたしもついていってみる。


「どこ行くんですか?」


「巡回。」


「いいなあ、わたしも。」


「凛華、仕事なかったんでィ?」


「うん大丈夫かなきっと。」


「きっと大丈夫とか言って俺に任せんなよ。」


「いやいや、大半沖田さんの始末書だからね。本当は沖田さんがするはずの仕事だからね。」


「......さーて、巡回行くかィ。」


「あれ?無視したなコイツ。」


本人曰く自分の悪口に関しては聞こえない耳をお持ちらしい。そんな耳があったらあんたの目の前でボロボロに悪口言ってやるわきっと。


まあ息抜きがてらに巡回に行こう。一応一言土方さんに声掛けとこうかな。


「凛華ー?行くぜェ。」


「ちょっと待ってて!あと数分!」


「じゃあ1分。」


「本当に数分だな!」


とにかくダッシュで土方さんの部屋へと行く。いつもならノックとか声を掛けてから入るが今はそんな時間がない。思い切り開けた。


「土方さん!わたしちょっと......」


そこにはわたしの今の行動を怒鳴る鬼はおらず、可愛らしく机に伏せて寝ている鬼がいた。


「ひ、土方さーん?」


「......スー。」


試しに声を掛けてみるが聞こえてくるのは寝息だけ。なんだか微笑ましくなった。そんなときに掛かった悪魔の声。


「凛華ー。まじ置いていきやす。」


「ああああぁぁあぁ!!!!待ってェェェェ!!!!」


襖から薄手の毛布を取りだしそれを鬼に掛けて沖田さんが待っている玄関へとダッシュした。


 
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