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チュンチュン チュン
障子の隙間から朝日が零れ落ち、優しい小鳥の鳴き声がわたしの耳に入る。心地よくてもう一度夢の中へと行きそうになったがなんとか戻ってこれた。
「......朝、だ。」
重たい体を起こし布団を捲る。肌寒い風が布団の中の暖かさを奪っていく。
その布団から出て寝巻きを脱ぐ。そしてハンガーに掛けてある隊服を手に取った。
「......よし、行こう。」
手に取った隊服を身に付けようとした時だった。
「姫路野、いるか?」
ガラッと障子が開く音がした。
「ちょっと話してーことが......、」
「あ、」
隊服に着替えようとしたわたしは勿論下着以外何も身に付けていないわけで、そこには目を点にした土方さんがいた。いやいや目が点なのはこっちだから。
「わ、悪ィ!!!」
バンッと勢いよく障子を閉められたごわたしは未だ何が起こったか理解できずぼーっとしていた。
障子の奥の影はしばらくそこにいたがソワソワしながらどこかへと消えてしまった。わたしはその数秒後今起こったことが理解できた。
「ぎぃやあああぁあ!!!」
わたしの叫び声は屯所を通り越して遠くの方まで聞こえたという情報が後に耳に入った。
――――――――――――――......
「凛華ー、おはようごぜェやす。」
「......はよ。」
ぶすっとした顔で挨拶をしたわたしの隣に朝ごはんを持って隣に座る。その向かい側にはマヨネーズでびちゃびちゃの朝ごはんを口に運んでいる土方さんがいた。
「土方さん、はよーごぜ......どうしたんですかィその頬。」
「別に、なんでもねー。もぐもぐ。」
「綺麗に真っ赤な手形がついていやすぜ。もぐっ。」
「だからなんでも」
「もしかしてどこぞの女にやられ「全部知ってるくせに聞いてくんなァァァ!!!」」
ガシャーンッ
「ありゃりゃバレてやしたか。」
「こっちは知ってんだよ!!!朝から隊士に言いふらしやがって!!!」
「だって土方さんが新人隊士に覗きったァ、「覗きじゃねェェェェ!!!」」
「......覗かれた。」
「ほら凛華もこう言ってまさァ。」
「だからあれは覗きじゃねェっつってんだろォォォォ!!!」
ガシャァン ドカン
相変わらずの騒がしさというかテンションというか。わたしは頬杖をつきながら騒ぎまくるふたりを眺めていた。つか土方まじ死ね覗きとかデジャヴか。
そんなふざけたやつらでも先日の仕事はきちんとした、攘夷志士を取り締まる仕事を。わたしが台無しにしてしまったが。
一応事件は解決し歌舞伎町は一時期の平和を戻した。だから当分は見回りの強化と攘夷志士の取り締まり強化だ。
「ふぅ、ごっそうさま。」
お盆を持ち食器返却口へと返しに行く。
「おばちゃーん、ごちそうさまァ。」
「はいよー!!」
ふたりは未だに喧嘩をしていたのでそれを上手い具合に避ける。
「姫路野!!」
沖田さんとの対戦?をやっと終えた土方さんがわたしを呼び止めた。本当は無視をしてもいいのだけれど体が言うことを聞かなかった。
「......なんですか、覗き方。」
「それただの変態じゃねーか。」
「だって変態なんだから。」
「......だからすまねーって。」
頭を掻いて申し訳なさそうに謝る。そろそろ許してあげようかな。
「別にいいですよ。」
「あ、あぁ。」
「次があれば抹殺するだけですからねおほほほほ。」
「......他の隊士にも伝えとく。」
そう顔を青ざめながら言った。
「あと、今日午後俺と見回りだからな。」
「......。」
「あからさま嫌な顔すんな!!」
ボコッ
「いたっ!!!痛いよこの拳骨!!!」
「痛くしたからな。」
「畜生ーっ、変態め!!!」
「......いつまでそのネタやんの?」
「土方さんが覗きの言葉に反応しなくなるまで。」
「......。」
とにかく午前中は書類片付け、そう言って渡された大量の書類(大半沖田さん関係の始末書)。
それを渋々部屋に持っていき、わたしは気が遠くなるまでデスクワークをした。
誰かわたしを褒めて。
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