( 1/1 )
「ーーーーーで、最近異常までに攘夷志士の出没及び関連の事件が増えていることがわかった。」
さっきまでの騒ぎも一段落つきやっと会議にでることができた私、姫路野凛華。皆先程までの馬鹿さが嘘のようにしん、と静まり返り真面目に話を聞いている。
今回の会議の内容は攘夷志士検挙、見回りの強化。特に夜間の見回りを強化するらしい。わたしは初めてのことだらけなので少し楽しみだ。
「特に攘夷志士共は女子供を狙うらしい。最近じゃァ失踪事件や誘拐事件としてうちに捜索願いが出るまでだ。」
はいはーい、わたしは手を高く挙げる。隣にいる総悟もわたしの口調真似をして手を挙げる。
「攘夷志士達は女子供をなんで狙ってるんですかー?」
「なんで土方さんは死なねーんですかィ?」
「んなの決まってんだろ。売るんだよ天人になァ。」
つか総悟お前が死ね、と毒台詞を吐き煙草を一服する。わたしは目を閉じることができなかった。
「売るの?人を?誰が?」
「売るんだ。人を。天人が。」
額に青筋を浮かべながら答える。しかしそれに気づかないままわたしはうーん、と頭を唸らせながら呟いていた。
「......そんなひどいことを。」
「奴らはんなことは思ってねーだろうな。金さえ手に入ればどんなことでもする。」
「......結局世の中金かよ。土方じゃあるまいし。」
「おいてめェ最後の台詞聞こえた!!!はっきり聞こえたぞ!!!」
「だって土方さんはお札をあぶらとり紙として使用してんでしょ?お札があまりにあまり過ぎてるから。」
「んなわけねェだろォォォ!!!一体誰情報だ!!!」
わたしはニヤニヤしている蜂蜜色の頭の奴を指差した。
「総悟ォォォ!!!またてめーか!!!」
「俺ァ見やしたぜ、土方さんがあぶらとり紙を使用してるところ。ほら証拠写真。」
「......こりゃどう見たって合成だろ!!?んな暇があったら仕事しろォォォ!!!」
「俺の仕事はただひとつ。土方コノヤローの抹殺でィ。な、凛華。」
ガッと肩を組む総悟。わたしはそれに苦笑いしかできなかった。
「う、うん。」
「どーしたんでさァ、元気ねーぜィ。」
「な、なんでもない!これにてお開き!」
勢いよく総悟と離れ、中心でもないのにお開き宣言をして部屋を出ようとした。
「待て、姫路野。」
他の隊士がぞろぞろ出ていっている途中わたしだけが呼び止められる。わたしは振り向かずその場で小さく返事をした。
「ちょっと付き合え。」
「......は?」
「いいから、付き合え。」
呆然とするわたしに近づき腕を掴むとそのまま外へ出る玄関へと引きずられた。
「ちょ、土方さん!どこ行くんですか!?」
「いいから黙ってついてこいアホ。」
「とか言って本当は寂しいんじゃないんですかー。」
うりうり、と肘で土方さんをつつくが先程の威勢がなく大人しい土方さんがいた。なんだかすごく大人に見えた。
「馬鹿かアホ。」
「馬鹿かアホかどっちかにしてください!」
「じゃあお前は確実にアホだな。」
「なんで...?」
「アホは生涯治らないらしいからな、だからお前はアホ。」
「ひ、ひどい!」
しばらく他愛もない話をしていると、土方さんはある店の前で足を止める。わたしも自然と止まった。
「......着いた。」
「銀治、屋?」
カーンカーンと鉄がぶつかり合う音の先へと進んでいく。中に入ると数は少ないが刀が何本か並べておいてあった。
「刀屋さん?」
「どう見たってそうだろ。」
そして彼は数本刀を持ち鞘から抜く。鞘から抜く度出るシャキン、と綺麗な音が耳にへばりついて離れない。
わたしがじっとその場に立っていると土方さんが手招きをした。わたしはそっと近づく。
「お前に聞きてーことがある。」
あるひとつの刀を前に差し出される。
「これを手に持つってことは、どんな意味か知ってっか?」
「意味?」
「あぁ。」
再び鞘から刀を抜く。今度は中途半端に出はなく全部抜いて。刃の部分を優しく撫でる。
「刀を持つってことは誰かの命を奪うことに等しい。だから覚悟と理由が必要だ。」
「覚悟と理由...。」
「俺は一生ついていくと決めた近藤さんの背中を護るため、刀を手に取った。」
その前から手に取っていたが、なんて言いながら苦笑いをする。わたしはそんな彼をじっと見つめていた。
「姫路野は覚悟があるか?理由があるか?人殺しになる覚悟はできてんのか?」
「......。」
「今回の会議の事件でも俺らは少なくとも数人の攘夷志士と殺し合うだろう。殺れるか?やつらを。」
「......。」
「できないんなら止めとけ。お前が辛いだけだ。」
刀を元の場所に置き「一服する」と一言残しその場を立ち去った。その後ろ姿をぼーっと眺めていた。
「覚悟...。」
わたしはさっきの刀を手に取る。予想よりもずっしり重く黒い。
この刀を振り回して人を殺す想像をしてみた。しかしその想像は真っ黒ではっきりしたところが見えない。
ただ見えるのは黒く大きな背中に煙草を加える後ろ姿だった。
シャキン、この音もいつしか聞き慣れていてとても心地よかった。刃を全て取りだし天に掲げた。
「......決まったか?」
一服し終わった土方さんが壁に寄りかかって立っていた。
「覚悟、理由て言うよりも誓いができたよ。」
「ほォ?」
カチャと音を出し刃を土方さんに向ける。刀を向けられても眉ひとつ動かすことはなかった。
「わたし、全力であんたの背中護るよ。」
唖然とする彼を他所に話を進める。
「土方さんのその大きくて黒い背中を全力で護り抜くことを、今ここでこの刀に誓う。」
「......なんで俺を護んだよ。」
「自分でもわかんない、どうしてこんなこと言ったのか。」
「はぁ?」
「でも目を閉じた時にね、」
再び目を閉じる。真っ暗闇がまたわたしを支配する。
「暗闇の中でたったひとり立っている男がいるの。足や手から血を流しながら足引きずりながら。
それを見てわたしが護んなきゃダメだ、とか無意識に思ったわけ。」
「......曖昧だな。」
「初めはこんなモンですー。」
刀を鞘にしまい目の前に突き出した。
「あんたのために、わたしは血塗れになります。」
確認したいこと
「......なんか俺のせいみてーじゃねェか。」
「土方さんのせいだよ当たり前だよだから刀買えよコノヤロー。」
「それが人に物頼む態度かァァァ!!!」
「そうですこれがわたしです凛華です、ぷふ。」
「よーし、特別に俺が切腹解釈してやろう。」
「嘘ですごめんなさい調子乗りました。」
もどる
|
|