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なんでだよォォォォォォォォ!!


昼間から屯所で甲高い声。もちろん真撰組初女隊士の姫路野凛華である。


あれからトーナメント戦とかなんとか言ってたくせに結局、一戦だけでわたしの入隊が決まった。まあラッキーだけど。


それで住み込みなので部屋をもらい(残念ながら土方の隣)日用品も買ってさあ今から隊服が届くぞ!という時だった。


「凛華ちゃん、部屋から一歩も外に出ちゃダメだよ。絶対だよ。


と、地味先輩に釘を刺されわたしは大人しく部屋で体操座り。まあわたしはなんていい子なのかしら!


「うああああぁ。」


暇だなー。荷造りも終わったし、本当に暇。暇、暇暇暇暇暇暇暇。


障子を開けてそっと外を覗いてみる。もう既に夕闇で暗い色がオレンジ色を包もうとしていた。


「......江戸、かァ。」


しっかし、あのとっつぁん?て人おかしな人だったな。


急にわたしに近づいてきて「辻褄合わせのために」とか言ってわたしに嘘をつくよう言ったり、本当変な人ー。


ま、おかげで住むところ見つかったしいいんだけどね。一応感謝感謝。


近藤さんも見た目は可哀想なほどゴリラだけど優しい人だし、沖田さんは中身がまあ、あれだけどわたしがわからないこととか色々教えてくれるし。


土方さんは、はは、あー、うん。いい時と悪い時が半分半分。ま、いい人だよ。きっと。


とにかく真撰組の人は暖かい。血は繋がっていないのに本当の家族みたいだ。


家族、ね。


わたしは畳の上に寝転がりいつもと違う天井を見上げる。


父さん母さん兄ちゃん、元気にしてるかな?


「ま、あの馬鹿達が元気じゃないときだなんてあるわけないか!土方さんじゃあるまいし!」


「なにがだゴラァ。」


陰がわたしを包む。ゆっくりと右を向くと、


「げ、土方さんじゃん。」


「げ、は余計だ。あほ。」


ボカッと頭を殴られる。痛い!乙女の頭を殴るなんて、最低よ!


「ところで土方さん何の用ですか?もしかして夜這い?夜這いなのか?」


「誰がてめーなんざに夜這いしに行くかァァァァ!!」


「まあひどい!前はあんなに迫ってきたのに......!!」


「被害妄想激しいなオイ!!!」


あーもう 、と土方さんは頭をガシガシ書きながら大きく溜め息をつく。あ、今幸せ逃げていったぞ。わたしがとっちゃうぞ。


「行くぞ。」


「はい? 」


そう言ってわたしに近づき、手を伸ばして


襟を掴む。


「ちょ、なんで襟ィィィィ!?そこは腕を掴んで立たせて一緒にいくとかなんとかでしょーがァァァ!!」


「乙女チックだなお前。けど一生お前を女として見れなさそうだから期待すんな。」


ズリズリと鈍い音を立てながら冷たい廊下で引きずられるわたし、凛華。


そこでわたしは手を顎にあて少し考えた。


「わたしって、乙女チック?」


「疑問そこかよ。」


土方さんのツッコミは無視して、引きずられていくわたしであった。


「しっかし、お前軽いなー。飯食ってんのか?」


「食べてます!それにわたしは「お前」じゃありません。」


「あ?」


「自己紹介したでしょ!?わたしの名前は、」


「姫路野凛華だろ。」


ふと自然に呼ばれたフルネーム。覚えていたのが不思議すぎてびっくりした。思わず土方さんを見る。


「覚えてたんですか......っ!」


「変な名前だと思ってな。」


「いいい今すぐひいひいひいおじいちゃんに謝ってください!!!」


「ひいひいひいおじいちゃん!?どんだけ前の世代のじいちゃんにつけてもらったんだ!!?」


「少し盛りました、正確にはおじいちゃんです。」


「盛りすぎだろ!?」


「でも名前馬鹿にしたこと謝ってくださいいい!!」


「......別に馬鹿にしてねーよ。」


未だに引きずりながらボソリと小さい声で呟いた。


「可愛い名前だ。」


にこり?にやり?と笑う土方さん。陰がいい感じに入ったベストの表情だった。


「......は、はい。どもです。」


「んで照れてんだよ。」


変なやつ、と鼻で笑われた。く、悔しいぜ。


きっと顔が真っ赤だろう。わたしはだらけてた手足を曲げ体操座りで引きずられていった。


少しお尻が痛かった。


そして暫く引きずられ着いた場所は食堂、と書かれたところだった。


「おら、入れよ。」


「......え?」


「察せよそれぐれー。」


土方さんはまた襟を掴んで、もう片方の手で扉を開けてわたしを放り投げる。


「いたっ!」


パンパンパーン


突然の爆発音、耳を塞いで体を縮こませる。な、ななにごと?


そこには笑顔でクラッカーを持つ近藤さん、沖田さん、地味先輩、そして他の隊士さんたち。


「「「ようこそ真撰組へ!」」」


にかっと笑う近藤さんの後ろには急いで書いたような字で「真撰組へようこそ凛華ちゃん!」と書かれていた。


なんだか、頬がつい緩んでしまう。


「凛華ちゃん。」


近藤さんがわたしの腕を掴み立ち上がらせた。


「今日から俺達ァ血は繋がっていないが、家族同然だからな!」


「か、ぞく。」


「そうでさァ。遠慮はいらねー。」


そう言ってクラッカーのゴミをわたしの頭にのっける沖田さん。良いこと言ってんのにこの人何してるの?


「それでは、姫路野凛華ちゃんの入隊を祝いまして......、」


「「「「かんぱーーーーい!」」」」


「かんぱーい!」


お父さんお母さん兄ちゃん、わたしに貴方達以外の家族ができました。







家族同然です







「あひゃひゃひゃ!かかってこいこのにゃろー!!」

「うわぁぁぁぁ!!凛華ちゃん酒乱だったんだ!?」

「任せときなせェ。この竹刀で一発殴れば、」

「総悟それ真剣だからァァァァ!!」

「ぎゃああああ!!!やめろォォォォ!!!」

ガシャーン ガチャーン




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