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ざわざわ


がやがや


真撰組唯一ある剣道場はいつもより多くの人で賑わっていた。


彼らの真ん中にいるのはひとりの見知らぬ女と数人の隊士。そこには局長や副長もいる。


なにが始まるのかわからない隊士達はただざわざわと騒いでいた。


それもそのはず。


まず、真撰組の剣道場に女がいることが珍しいから。女中さんなら皆がいない時などに掃除などには来るが、こうして隊士の練習を中断させるまでのことはないから。


それにその女の近くにいるメンバー。これも地位が高すぎて逆に何事かと思ったりもする。


隊士たちは呟いていた。


そんな彼女の名前は、姫路野凛華だと。


「えー、では腕試しを始めたいと思います。審判は僕、山崎退が努めさせて頂きます。」


なんか地味な人がお辞儀をする。私も反射的にお辞儀した。


「ルール、は知ってる?」


全く。


「それ、誇らしげに言っちゃ駄目だから。」


はぁ、と私は溜め息をつかれる。


「ルールは至って簡単。今から対戦する相手を順々に倒していけばいんだ。但し、一回負けるとそこで終わり。トーナメント戦て言ったらわかるかな。」


「ふむふむ、なるほど。」


「メモするほどのことじゃないし。というか『地味な人は説明が上手い』て何書いてんのォォォ!?」


「いや、大事かなと思い、」


「わけわかんないからァァァ!」


「山崎、進めろ。」


鬼の副長こと、土方十四郎が低い声で言った。


「で、では、第一回戦を始めます。両者前へ。」


私は自分の横に置いてあった竹刀を手に取り立ち上がる。


「両者、礼。」


「お願いします。」


「お願いしやす。」


ちょっと待てェェェェ!!


「なにさ土方さんよォ。」


「男同士の真剣勝負には口出ししちゃいけやせんぜ。」


「ツッコミは多々あるが......、総悟!なんでてめーが戦う!」


「姫路野の泣き顔見たさに。」


「最悪だな!」


なんか土方さんは総悟と戦わせたくないみたい。こいつ、そんなに危険なのかな。


「とにかくお前は駄目だ!......おいお前、やれ。」


「はい!」


沖田さんはずるずると土方さんに引きずられて退場。変わりに他の隊士が構えた。


「お願いします。」


「こちらこそ。」


「やっと始まる......。では、始め!」


その瞬間、男隊士は猛突進で攻撃する。私はそれを必死に受け止めた。


「力、すごいっ!」


「まだまだあ!!」


ガキン バキッ


男隊士はスピードが自慢なのかあちこちに移動し、攻撃を仕掛けてくる。


「......凛華ちゃん、一方的にやられてますね。」


ははっ、と少し苦笑いの山崎。


「本当にそう見えるかィ?」


「え、どういうことですか?」


慌てて試合を見直すがどう見たってあれはやられっぱなしの光景。


「よく見て見なせェ。あいつ、あそこから一歩も動いてないんでィ。」


「は、」


「それだけじゃねーぞ。」


今度は隣の副長。


笑ってやがる。」


久しぶり、この感じ。


わくわくする心臓。これは相手がかなり手強くピンチな時になる。


「姫路野さんっ!さっきからやられっぱなしじゃないか!!」


そう言いながらも攻撃をやめない相手。


「やられっぱなし?」


クスクス、笑いが出る。


「試合は、これからだ。」


相手の一瞬の隙をつかい、私は今まで垂らしていた腕を上げ竹刀を構える。


そして、そのまま


うぉりゃぁぁぁ!


ドゴォォォオン


相手は悲鳴を上げることもできず、壁に打たれた。


私は一礼をし、土方さんたちにブイサインをした。


「大・勝・利!」







正体不明の女隊士







「勝ったよ勝ったよ!隊士でしょ?」

「......姫路野、お前その剣術一体どこで、」

「ああぁぁ!対戦相手さん大丈夫ゥ!?」

「人の話は最後まで聞けって習わなかったかァァァ!」

「私、悪い子だったから先生の言うこと聞かなかった。」

「本当お前最悪だな。」

「いやあ、それほどでもぉ。」

「褒めてねェェェェ!!」



 
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