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「......んっ。」
足元が非常に寒い、そう思って起きた。
目を開けば見慣れた天井、布団。周りも見てみると可愛らしいぬいぐるみに荒れた机の上、そしてぐちゃぐちゃのクローゼットの中。
「......戻ってきた?」
目をいくら擦って開けても映る景色は変わらない。
枕元にある携帯を取り、時間を確認する。そこにはあの時と変わらない日にちと時間が表示してあった。
カーテンを開けても朝日が昇り始めた頃でまだ寝ていても学校には間に合う時間帯だ。
わたしはやるせない気持ちになり布団に再び潜った。布団に潜れば潜る度やるせない気持ちは奥底から溢れはじめてわたしを包み込んだ。
「頑張れよ。」
最後に土方さんに言われた優しい言葉を思い出す。その言葉を思い出したことでさっきまでのやるせない気持ちは押さえ込まれていく。
「......頑張るよ、土方さん。」
だから、また会えるよね?だから「さようなら」って言わなかったんだよね?
「負けない。」
そう呟いてわたしは布団から飛び出して階段を降りた。
「おはよ!」
「......え、凛華?早くない?」
「たまには早起きしてみたかったの!」
「......おかしいわね、今日の天気は晴れだし。あ、槍でも降ってくるのかしら?」
「おいそれどういうことだ。」
「そのまんまの意味よ。日本語わーかーるー?」
「......うへへ。」
数週間しか会っていなかったのにこの久しぶりの感じと大好きな気持ちが溢れる。そのせいかにやけが止まらなかった。
「あーら、きもっ。不審者としか思えない。」
「あんたの娘だよゴラァ。」
「お母さんこんなに不細工じゃないもの。」
「は?わたしの方が可愛いし。」
「は?なにいってんのこのバカ娘。」
「結局わたしあんたの娘じゃない。」
「娘じゃない、バカ娘よ。」
「成績はいいもんねー!」
「成績が良くても精神がダメだからねェ。」
「はああ!?」
朝から激しい母さんとの絡み。それをテーブルの上に準備されたご飯を食べながらしていた。
「じゃあ学校行ってくる!」
「いってらっしゃい、頑張ってね。」
「へへ、任せて!!」
「あ、警察沙汰にはならないでね。」
「わたしそんな不良じゃないんですけど!?」
前と同じ通学路、信号、人混み。それに紛れながらわたしは慣れた電車に乗って学校という目的地へと歩いていく。
「頑張れよ。」
「......うん、頑張るよ。」
空に返事をした、その刹那だった。
「待ってる。」
びっくりした。聞こえないはずの声が隣から聞こえたのだ。
「土方さん!?」
反射的に振り向いてもそこにあなたはいなくて変わりにあの日と変わらない景色が流れていた。
なんだかそれが嬉しくて思わず頬が緩む。
「......待ってて。」
その日はいつも以上に気分が晴れ晴れしていた。
僕らはいつだって
あのね、絶対また会える気がするんだ、あなたに。
とくにちゃんとした根拠はないけどね。
だから今日も負けじと歯を食いしばって汗をかいて
あなたに会えるその日を夢見て生きていく。
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