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「......沖田さん。」
「なんでィ。」
「これ、本当に巡回?」
「当たり前でィ。他になんて呼び名があるんでさァ。」
「サボり。」
あれから巡回とか言いながら沖田さんが目指した場所は歌舞伎町にある小さな駄菓子屋。確かに懐かしいものばかりで楽しいがこれは巡回ではないといえる。土方さんが苦労する気持ちが少しわかった気がした。
「サボりとは失礼な。」
「だって巡回中に駄菓子屋寄るとか初めて。」
「だったら今覚えなせェ。巡回 = 駄菓子屋直行。」
「これじゃあ、市民の皆さん安心して町歩けないよ。」
「自分の身は自分で守る。常識でィ。」
「......ああいえばこう言う。」
「俺に口で勝とうなんざ生きてるうちは思っちゃいけやせん。」
ババアこれも追加ァ、沖田さんが奥の方にいるおばさんに言うと奥から怒鳴り声が聞こえた。誰がババアだ糞餓鬼!とかなんとか。お二人共口が悪いな。
「......まあ、いっか。じゃあバ、おばさんこれとこれちょーだい。」
「あんたも今ババアって言おうとしただろ!?」
「気のせいですよそんなわけないですババア。」
「今はっきり言ったァァァ!!!!」
「ちょ、沖田さんのがうつった。」
「人のせいにすんな。」
そんなやりとりを終え駄菓子屋を後にする。
沖田さんは袋にいっぱい詰まった駄菓子を口に運びながら巡回する。わたしも先程買った雨を口の中へ入れた。懐かしい味が口の中いっぱいに広がる小さな幸せ。
「あっ。」
「げっ。」
町を巡回中突然嫌な顔をする沖田さん。視線の先を見ると、そこには傘をさし赤いチャイナドレスを着た可愛らしい女の子がいた。彼女も沖田さん同様顔を歪ませる。
「......どなた様?知り合い?」
「知り合いなんて止めてくだせェ。吐き気がしまさァ。」
「ああん!?こっちの台詞ネ!!」
バチバチとふたりの間で火花が散る。なんか嫌な予感がしたので少しふたりから離れた。
「今日こそはお前をボコボコにしてやるネ!」
「寝言は寝てから言え餓鬼。」
「餓鬼はお前ヨ!ちんちくりん!」
「......上等じゃねーかィ。」
「仕方ないから相手してやるヨ。」
ゴゴゴゴッ、ふたりから殺気という名のオーラが放たれる。わたしは苦笑いしながらそれを離れた場所で見ていた。
「あーあー、またやってるよあのふたり。」
「飽きませんね、全く。」
ふたりを知っているかのような話し声がした方向を振り返った。そこにはぐるぐる銀髪の天パとなんかいまいち足りない眼鏡少年がいた。
「あれ、あんた。」
「知り合いですか?銀さん。」
銀さんと呼ばれた人はズカズカとわたしに近づいてくる。
「あんたあれだよな、あーと。」
「......新手のナンパ?」
「いやいや違うからね!確かに君可愛いけど違うから!ナンパしなくても銀さんにはたくさんの女寄ってくるから!」
「......銀さん、あんたって人は。」
はあ、と溜め息をつく眼鏡少年。
「あっ思い出した。この前多串くんに追いかけられてた奴だ。」
「多串?生憎そんなやつは頭の中にいませんが。」
「え、だってお宅真撰組でしょ?」
「え、真撰組以外に何に見えますか?」
「す、すみません!多串くんは土方さんのことなんです!」
「......土方さん?」
そういえば先日追いかけられたこともないかもしれない、いやあるかもしれない。もしかしてそん時見られてたとか?かなり恥ずかしいじゃん自分!
「お宅も大変だったなー。」
「は、はははっ。」
とにかく苦笑いを返す。
「俺ァ、坂田銀時。んで隣の眼鏡がぱっつぁん。この近くで万事屋を経営してんだ。」
「ぱっつぁんこと志村新八です。宜しくお願いします。」
「あ、姫路野凛華です。こちらこそ宜しくお願いします。」
そう言って渡された名刺。「万事屋銀ちゃん」と書かれ隣にはご丁寧に住所まで書かれていた。
「......万事屋?」
「所謂なんでも屋です。」
「へぇー。ふたりでしてるんですか。」
「いや、もうひとり...。」
そう言って指差した方向は未だ住民を巻き沿いにしながら戦っている女の子。傘を振り回しながら沖田さんを攻撃していた。
「あの子は神楽ちゃんです。彼女宇宙最強の民族、夜兎なんです。」
「や、夜兎?」
訳のわからない単語が飛び交う中やっと聞けた語句を口に出してみる。しかしわからないものはわからない。
「オイオイ知らねーの、夜兎。」
「......初めて聞きましたねー。」
「天人の一種だよ、天人。」
「あま、?よくわからないです。」
そう言った瞬間、ふたりは開いた口も塞がらない状態になっていた。そんなふたりの状況に更に困惑する。
「旦那ァ、コイツ常識知らずのお嬢ちゃんだから。」
ドカッと頭に重たい何か。触ってみると程よく筋肉がついた沖田さんの腕が乗っていた。
「いや、でもこれは常識知らなさすぎだろ。」
「そうですよ!天人なんて常識レベルじゃないですし。」
「人間常識知らずのレベルが低すぎる奴もいるんでさァ。」
さ、帰りやしょう。そう言ってわたしの手を取り勝手に歩き出した沖田さん。わたしは半ば引きずられる形で歩いていた。
「おーい!姫路野さーん!万事屋遊びに来いよォ!」
「ドSゥゥゥ!!!次こそは決着つけてやるネ!!!」
そんな声を背にしながら私たちは歩いていった。
「......凛華。」
「なに?」
しばらく歩きパッと手を離す。そしてわたしの方に向いた。彼の顔は今までのぼんやりとした顔ではなく何時にもなく真剣な顔をしていた。
「あんた、どこから来たんでさァ。」
「......だから一番初めに会った時、言ったでしょう?とっつぁんが瓦礫の山にした中から。」
「その瓦礫の山は今どこでィ。」
「さァ?もう撤去されてるんじゃないんですか?」
「......。」
「どうしたんですか急に。わたしが常識ないのは知っていたでしょう。」
クスッ、そう笑ったら沖田さんはしかめっ面になった。
「もう一度言います。わたしはとっつぁんが瓦礫の山にした中から来ました。」
知らないわからない
「総悟、姫路野知らねーか?」
「知りやせん。土方さん書類倉庫の鍵貸してくだせェ。」
「お前にしては珍しいな。調べモンか?」
「......まぁねィ。」
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