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「姫路野、行くぞ。」
そう言われて目が覚めた。机に置いてある時計を見ると既に午後と呼べる13時になっていた。
「それ全部終わらしたのか?」
「あぁ、はい、まあ一応。あとはゴリラの確認だけ。」
「そうか。」
そしてポンッと頭に置かれるいつものゴツゴツとした手。それがぎこちなく左右に動く。
「頑張ったな。」
いつもだったらここで「土方さんの手がァァァ!!!うぎゃああやられたァァァ!!!」などと喚くところだが今日は何故かそんなことにもならずただ静かに撫でられていた。
「お前今日変だな。」
「お互い様ですよ。」
そう言ったら土方さんは憎たらしい笑顔で返した。
「......そうだな。」
重たい腰を上げ自室を出る。縁側を歩く土方さんの後ろをついていく。その足は玄関まで行った。そして外へと出ていく。
「姫路野、お前に話しておきたいことがある。」
歌舞伎町を見回っていたときそう言われた。わたしは思わず顔を土方さんに向ける。
「昨日、人を斬って楽しかったか?」
「......そんなわけ、ないです。」
「なら、怖かったか。」
「......怖かったですね、そりゃ。」
今でも思い出されるあの赤い光景。ぴちゃぴちゃと何かが垂れる音、そして周りに転がる人だった残骸。わたしがその中央に立っていた恐怖。
「ならお前はいつまでもその恐怖を持ったまま闘うのか。」
「そうですね、人間恐怖を忘れたら何かが崩れそうですから。」
「......そうか。」
土方さんは強く真っ直ぐな眼差しでわたしを見た。何かを見透かされた気分になった。
「ならいつまでもくよくよすんな。」
「......。」
「先日の攘夷志士事件、まだ考えてるだろ?」
見透かされた。
「......そりゃそうですよ。わたしのせいで事件の真相を台無しにしてしまって。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいで。」
顔が自然と下を向く。そして見透かされた恥ずかしさと情けなさで涙が出そうになった。
「あのなァ、んなこと気にすんな。」
先に歩いていた土方さんがわたしの方を振り返る。思わず顔を上げた。
「招いた事態を嘆いたってな、腹の足しにもなりゃしねーよ。」
「は、」
「その事態と同じぐらい守って維持してんだ俺たち人間は。いつまでも±0地点に立ってんだ。」
「......±0。」
「人間そうやってバランスとってんだ。」
そう言われて肩の荷が降りた気がした。安心したのかホッと息が出た後ポロポロと目から涙が零れ落ちた。
「結果をいつまでもグチグチ言うんじゃねーよ。結果は結果として受け止めろ。」
「ふぁ、ふぁい。」
「よし。」
土方さんはそう言ってまた頭を撫でた。
「......ひ、土方さんって。」
「あぁ?」
「頭、撫でるの好きですよね。」
「......。」
「なんで、ですか?」
そう聞いたら顔を真っ赤にさせてより一層わたしの頭をぐしゃぐしゃに撫で始めた。
「ちょ、土方さん!!髪の毛がくしゃくしゃになっちゃいます!!」
「いいだろそれぐらい!!」
「よくないつか何で怒ってんですか!!?」
「お前が変な事聞くからだろーがァァァ!!」
「土方さんの方が可笑しいです!!」
「その漢字の使い方おかしいだろ!!馬鹿にしてんのかァァァ!!」
「ぎ、ぎゃあああああ!!?」
プラマイゼロ付近にいる
「(言えるわけねーだろ、んなこと。)」
「土方さんのばーかあーほおたんこなーすうー○こマヨネーズ!!」
「......マヨネーズを馬鹿にすんじゃねェェェ!!」
「ぎゃあああ!!鬼の形相で追いかけて来ないでェェェ!!」
「なら逃げんなァァ!!」
「ひょええええぇ!!」
ドダドダドダドダ
「......大串くんに何あの女の子?あいつらなにしてんの?」
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