( 2/2 )
「場所は先月廃ビルになった大江戸ビル6号館。山崎によればそこに攫った女子供を集めたり時々召集をしている。」
紙を何枚か捲る音がする。土方さんと近藤さんは私たちにできる限りの情報を伝える。
「そこで一番隊と二番隊は正面から挟むように待機。三番隊四番隊は裏口を塞げ。」
「「「へい!!」」」
「今回の攘夷志士は結構厄介な野郎ばかりだ。見つけ次第検挙してェが止むを得ない時は斬れ。責任は俺が取る。」
「それと今回の攘夷志士関連事件の主はそうとう手ごわい奴らしい。心してかかれ。」
「「「へい!!」」」
男たちの熱く力強い返事が部屋を響かせる。
「それと姫路野。」
「はい?」
「お前はまだ隊が決まっていないが今回は総悟と共に行動を取れ。」
「よろしくでさァ。」
「よ、よろしく?」
ガッと肩を組みニヤニヤと笑う沖田さん。この肩組みは一体なんのためにしているのだろうか?
「......それじゃ準備に入る。一番隊と二番隊は指示が出るまで待機だ。」
「「「へぃ!!」」」
こうしてわたしの初めての「仕事」が始まったのだった。
−−−−−−−−−−−−......
「......一番隊二番隊共に定位置に着きやした。」
沖田さんは無線で副長たちに知らせる。数秒後にはしばらく待機と短く言い無線を切ってしまった。
「とりあえず俺と凛華がここに着いてるから他の奴は散らばるように見張っとけィ。」
「「「はい!!」」」
こうして他の隊士たちは違う場所へと行ってしまった。というかなんでわたしと沖田さんがここに?
「ねえ、ここってひとりでも平気じゃないの?」
「......暇つぶしがいねェと暇なんでィ。」
え、わたしってそういう役割でここにいたのかよ。少し沖田さんを睨むが怪しい笑みを浮かべたのですぐに目線を逸した。
「凛華は今回初めての仕事なんですねィ。」
「まあ、一応。」
「......楽しみでさァ。」
「な、なにが?」
コロコロと石を転がしながらニヤリと笑う沖田さんに少し悪感を覚えた。ものすごく不気味だ。
と、その刹那
「誰だそこにいるのは!!」
「「!!」」
み、見つかった!!
「ありゃりゃバレちまいやした。」
その顔はヤバイと焦っているというよりもまるでこうなることを知っているかのような態度をとっていた。
「......沖田さん、」
もしかしてこの人、わざと見つかるようになにかした?
「なんですかィ?」
「別に。」
なんて悪趣味な人なんだ。
シャキンと相変わらず綺麗な音を奏でる剣を引き抜く。
「こちらとら真撰組でさァ。観念してお縄につきなせェ。」
「誰が簡単につくか!!かかれェェェェ!!」
うおおおぉぉぉおっ
30、40人はいる男共が雄叫びを上げながら一斉に斬りかかってきた。
「初仕事だぜ、凛華。」
「本当に悪趣味な人。」
ザッと隣に並び刀を構える。わたしが持つ刀は竹刀なんかとは比べ物にならないくらい重たく美しいものだと思った。
「うああああぁぁぁあ!!!」
男共の群衆に突っ込んだ後、それからの記憶はあまりない。
気がつけば、辺り一面が赤色だった。
その赤色を美しいと感じたわたしは一体誰なのだろうか。
−−−−−−−−−−−−......
「姫路野っっ!!」
「あ、土方さん。」
事件は結局攘夷志士は皆死亡してしまったため解決もなにも事は終わってしまった。これもひとつの解決法とみていいのだろうか。
土方さんはわたしに駆け寄り頬についているのであろう血をあの大きくてゴツゴツした手で拭った。
「初仕事、やり遂げれましたかね?」
「......あぁ、上出来だ。」
嘘だ、本当は攘夷志士を捕まえて検挙しなければならなかったはずなのにわたしは沖田さんは皆殺してしまった。粛清するのはあの攘夷志士なんかではなく知らない間に命を奪った
「わたしだ。」
「あ?なんか言ったか?」
ベビースモーカーの土方さんはポケットからタバコを取り出し、火をつける。
「......本当にこれでよかったのかな、って思いまして。」
ちょっと無理矢理笑顔を作ったわたしに土方さんは言った。
「よかったんだよ。」
ふぅ、とタバコの煙を吐き出す。その動作がひどくゆっくりに見えた。
「よくやった。」
「っ。」
土方さんはわたしの頭をタバコの持っていない方で掴み引き寄せる。恥ずかしさとかの前に涙を見せないよう泣いているのがバレないよう必死に厚い胸板に顔を押し付ける。
わたしは今日、人殺しになりました。
初仕事しました
「土方さん土方さん、あいつ何者ですかィ。」
「姫路野のことか?」
「へィ、あいつ面白い戦い方してんでさァ。」
「面白い戦い方だァ?」
「なんか一匹狼みてーな戦い方してやした。」
「.......。」
← もどる
|
|