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あれから月日は流れ、一体何度目の春を迎えたのだろう。そんな時を過ごしていた。


あの姫路野家不正データ事件が新聞の一面を飾らない、そこまで時が流れていた。


後日、姫路野家は不正データのことが警察に伝わり会社は起動停止処分を受けた。社員は幸い人脈の広い会社だったので堂后家などの会社に派遣させてもらった。


お母様には後日伝えた。すると涙を流し流し「ありがとう」とお礼を言われた。だがお礼を言われてもいい気分ではない。


お母様は今パリにいらっしゃる。実は密かに運営させていた独立会社の仕事が終わり次第こちらに戻ってくるそうだ。


美兒さんや浅井田さんとは以前よりも連絡を取り合っている。お嬢様という枠から外れないがそれぞれの会社の仕事を手伝い執事達と楽しく過ごしているらしい。


また矢作は現在執事共々行方不明らしい。銀さんから聞いたがどうやらふたりは似合わないが「駆け落ち」をしていて今は静かなところで暮らしているとのこと。


わたしは、というとお嬢様から一気に平凡な女子校生へとなった。周りにあったキラキラしたものがないのが嘘みたいだ。


平凡な女子校生の目線はわたしにとって新鮮なもので嫌がるどころか寧ろお嬢様の生活を嫌がるほどこちらの生活が気に入った。


じゃあどこにいるって?


実は恥ずかしながら高校を中退し、銀さんの昔の家にお邪魔させてもらっている。屋敷は家宅捜査されているので入れないため路頭に迷ったところを拾ってもらった。


わたしの今のお仕事、それは銀さんを待っておくこと。


あの侵入事件以来、足手まといだなんだとぼやいていたわたしだったがよく考えてみれば待つこともひとつの大きな仕事なのではないかと気づいた。


その時に銀さんは優しくてを差し伸べてくれた。



「銀さん!やばい遅刻だよ!」

「まじか!今何時!?」

「もう8時!急げえ!」

「うおおおお!!」



銀さんはなんの偶然か、お母様の独立会社に拾われある部署の責任者として日々働いている。忙しそうだが本人曰くやりがいがあり結構楽しいらしい。


その仕事姿を見るのがわたしは好きだ。



「いってらっしゃい!」



お父様の不正データが見つかった、お嬢様から一気に平凡な女の子へとなった、家族がバラバラになった。いろんな不幸が積み重なってのしかかってきた。


それでもわたしは寂しくないし悲しくない。銀さんがわたしの隣にいてくれる。


それに今まで叶わないと嘆いていた私の夢がもう少しで叶いそうだからかな。



「凛華!」

「なに?」

「今日の夜、ご馳走よろしくな!」

「.......うん!任せてよ!」



大好きな人と幸せで暖かな家庭を持つこと。



この短い期間でいろんなことがあったけれど、わたしはその色んなことがあってよかったと思う。


そのおかげでわたしの夢のスタートラインへと、立てたのだから。







私の執事は旦那様



これからは執事としてではなく、

旦那様として傍にいてください。

大好きな銀さんへ

凛華より



 
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