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「......。」
「......。」
奴らを懲らしめパソコンを壊すことに成功したわたし達はそれぞれの屋敷に帰り、お互い別れを告げた。
わたし達もいつまでもお世話になるわけには行かないと思い、襲われた後の屋敷へ帰ることにした。
「お世話になりました。」
「いいえ!また頼ってくださいね!」
「わたし達はいつでも待ってんぜ!」
美兒さんと浅井田さんにそう言われて何だか心の中がポカポカとしてきて、それと同時に申し訳ない気持ちにもなった。
彼らも無傷で帰ってきたわけだが決していい思いをしたわけではないだろう。巻き込んでしまい本当に申し訳ない気持ちでたくさんだ。
そして、心の隅で終わりにしよう。そう自分自身に誓っていた。
屋敷へ帰るのは徒歩だった。銀さんとふたりで歩いているときお互い無言を貫いたままで、そ、れはまるであの時銀さんに「好きだ」と言われたあの時みたいだった。
ただあの時みたいにいい気分ではない。ひどく悲しく気持ちもだいぶ沈んでいる。
そんなことを考えているうちに屋敷は目の前までに来ていた。
「しっ。凛華隠れろ。」
銀さんはわたしの目の前へ来て腕でわたしを守ろうと伸ばす。
屋敷の前には1台の車があった。
「あの車...。」
「ぎ、銀さん...。」
「なんだ?」
「あの車、お父様の...
お父様の車だわ。」
サァっと血の気が引く。お父様が帰ってきた。わたしに不正データを持たせたお父様が屋敷に帰ってきたのだ。体は奮え体温は下がっていくばかり。
「凛華、大丈夫か?」
「......うん。」
ぎゅっとUSBが入っているポケットを強く握り締める。
そうだ、こんなところで怖じけついている暇はない。お父様がせっかくいるのだ。敵が目の前にいるのだ。
行かなくてどうする。
「銀さん...。銀さんは先に、」
立ち上がりその言葉の続きを言おうとした時だった。
突然降ってきた暖かい唇。その唇はわたしに体温を分けているようにも感じられた。心地がいい。
「執事ってのは、お嬢様の傍を片時も離れずお守りすることが役目だ。それを破棄することはできないね。」
「ぎ、銀さん。」
「お前のやりたいことはわかる。直接対決だろ?」
わたしは大きく頷く。するとスッと手を地面につけ頭を垂れた。その姿は誰かに忠誠を誓う、そんな格好をしていた。
「仰せのままに、お嬢様。私坂田銀時は生涯あなたに尽くすことを誓った身。
この命お嬢様のために使わさせて頂きます。」
「あ、ありがとう...、銀さん。」
そう、わたしはひとりではなかった。この男坂田銀時がいるではないか。どうしてひとりで解決しようとしていたのか。
わたしは確かに足手まといだ。ただその足手まといは足手まといなりに役に立とうと足掻けばいい話だ。
わたしは一歩、足を踏み出した。
私の執事と闘おう
もう少しで、もう少しで悪夢も何もかも
終りを告げるチャイムが鳴る。
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