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朝日がカーテンから零れる。零れた陽がわたしの顔にあたり朝を知らせてくれる。朝日とはわたしにとって目覚まし時計のようなものだ。


まだ眠たい目を擦り、そして欠伸をひとつ。涙が目に溜まり再び擦る。



「すげェ欠伸だな。」

「え。」



わたしは昨日部屋を貸してもらった。勿論一人部屋。わたし以外にはいない。しかし明らかにわたし以外の声がした。それにこの声は今までずっと求めていた、あの。



「ぎ、銀さん......。」

「おはよ。」



もう一回目を擦る。けど変わらず朝日に照らされる銀髪は目の前にいる。


ベッドに腰掛ける彼に近づき頬をペタペタと触る。間違いなくわたしは触れている。



「銀、さん。」

「凛華。」

「本当に、銀さんなの?」

「こんな格好いいやつ銀さん以外いないぜ?」

「うそ...。」



昨日一日いなかっただけなのにとても久しぶりに感じた。まるで何年も会えなかったみたい。



「馬鹿ぁ。」



安心したのかわたしは欠伸で出る涙とは違う涙が滝のように流れ始めた。それを銀さんは優しく指で掬う。



「馬鹿。」

「知ってる。」

「アホ。」

「知ってる。」

「......おかえり。」

「ただいま、凛華。」



ニコリと彼は笑いわたしを抱き寄せた。久々の温もりにただただ涙が止まらなかった。



「悪かったな、勝手にいなくなって。」

「ほ、本当よ、馬鹿ぁ。」

「俺さっきから馬鹿しか言われてねーな。」

「だ、だって、ひっく、馬鹿、だ、もん。」

「お嬢様の仰る通りです。」

「......あー、もう、馬鹿。」

「はいはい。」



優しく撫でてくれる彼の温もりにわたしはしばらくの間、甘えていた。胸に顔をぐりぐりと埋め彼の匂いを満喫していた。



「いやァ、一日離れて改めて気づいたわ。」

「?」

「俺、凛華のこと大好き。」

「......初めて。」

「あ?」

「初めて直接、銀さんに「好き」って言われた。」

「え、嘘。」

「嘘じゃない、と思う。」

「ま、通じ合ってるからいんじゃねーの。」

「そ、だね。」

「あれれ?凛華顔真っ赤だぞ。」

「うううるさいっ!!!」



よかった、またこう笑い合える時間ができて。そう思ったのもつかの間。すぐに疑問が出てきた。



「なんで、わたしを連れていってくれなかったの?」

「んなの決まってんだろ。大事な凛華が怪我でもしたらどうすんの。」

「でも銀さんだって、」



そう言って首元を触れば一本の赤い線。誰かに斬りつけられたのだろうか。それによく見ればあちこち掠り傷だが確かに怪我をしていた。


その視線を振り払うように銀さんは言葉を遮った。



「俺はいいの、男だから。凛華は女だろ?一生モンの傷とか作らせたくねーし。」

「だからって置いてかないでよ...。」

「ごめんって。もう他の執事んとこ盥回しにしねェ。凛華は俺が護る。」



約束、と小指を出されたのでわたしも小指で絡めた。そして銀さんはその小指に口付けを落とした。



「なにがあっても護るよ、凛華。」



それが誓いだったのかなんなのかわからないが彼はその時確かに自分自身に誓いを立てるように言った。



「銀、さん?」

「凛華、詳しいことはまた後で纏めて話すな。」

「う、うん。」



そしてそのまま横に倒れた。どさっとふたりの体がベッドに倒れる。



「俺さ、今は、」

ぎゅっ



銀さんはわたしを膝の上に乗せて抱き寄せた。抱き締められている体勢からわたしが抱き締める体勢に変わった。



「このままでいてェ。」

「......うん。」



彼を問い詰めるのは後にしよう。彼の閉じられる瞳にキスを落とし頭を自分の方に抱き寄せた。



「ありがとう、銀さん。」



彼の口が弧を描いたのを確認してわたしも瞳を閉じた。







私の執事も甘えん坊



神様、もう少しだけ

甘い夢に溺れさせてください。



 
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