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コツ コツ



暗闇の中、自分が鳴らす靴の音だけが鳴り響く。それがなんだか不気味に感じて身を震わせる。


長い間暗闇の中にいたため視界も大分慣れた。しかし自分がいきたい場所には一向に辿り着かないが足を止めることはなかった。



「......ったく、どこだよ此処。俺が行きてー場所は此処じゃねーよ。」



無い頭をボリボリ掻いたところでなにか出るわけでもないが。こういう時にピンと閃いたらそれこそヒーローっぽくてかっこいいのに。しかも無い頭にあるのはいつだって自分のところのお姫様の笑顔だ。


......凛華のやつ、大丈夫か?


まあ信用はできないといったらできないがいざという時は頼りになる野郎の高杉に任せたから一先ず大丈夫だろう。で高杉のことだから周りの奴らを巻き込んでるだろーな。総一郎くんに貸しどれくらいつけられただろう。


そして凛華、きっと帰ったら問い詰められるだろうな。あいつらは誰だの今まで何処にいただの。



「ククッ。」



想像したら笑えてきた。あー、俺も末期だな。こんなに姫様女として愛して愛しくて切なくて。いつもならあいつのとこ全力疾走で帰って抱き締めて「大好きだ」て何回も伝えてチューする。いや、これは一種の願望か。


笑える。こんなにも俺は彼女を好きでいたのか。



「誰だ!そこにいるのは!」

「!」



ピカッと光る俺の足元。その警戒心といい服装といい多分見回りのやつだろう。そして徐々にその光は上に上がっていった。



「お、お前は......っ!」

「こんばんは、警備員。いつも見回りご苦労さんなこった。」

「なっ!」

ドカッ



なにか言う前に俺は警備員の頭を
回し蹴りでぶっ倒した。警備員は見事にノックアウト。その場に倒れ混んでしまった。


その警備員の近くに行き身に付けている服、あとなんか無線機とか警棒とか。そんなんを持って着替える。俺は数分で執事から警備員へと成り代わった。



「げっこいつ地図とか持ってねーのかよ。オイオイ、チミしっかりしろよー。」



縄で彼を縛りながらブツブツ文句を言う。そして木に括りつけたら完成。あとは誰かに見つけてもらうまで待っておきな。



「んじゃ、待たな。」



再び暗闇の中を進んでいく。その時鳴り出した俺のポケットの中の機械。誰かを確認せずに出た。



「もしもーし、銀さんでーす。」

『......聞いてねーぞこんなこと。』



イライラした口調で話すのは信用できないがいざという時は頼りになる男、高杉からだった。



「だってそのこと言ったらお前引き受けてくんねーだろ?」

『当たり前だ、誰がこんな面倒くさいこと...。』

「まあ、お前の姫様のためでもあるからよォ。」

『どういうことだ?説明しろ。』

「......奴らは姫路野企業を潰そうとしている組織のひとつだ。奴らはどこかで手に入れたんだろうな、姫路野の不正企業秘密情報を。で、それを持っているのが彼女だってことも。」

『で、姫路野と俺の拓羅となんの関係があるんだ?』

「あっらー、姫様呼び捨てなんていい度胸ーっ。」

『てめェもだろうが。』

「ハハッ、まあな。

あーっと、姫路野企業ってよォ3つの会社企業と連携してんじゃん?堂后会社、浅井田会社、でお宅のところの矢作企業の3つ。」

『まさか......、』

「そのまさかは予想なんだけどよォもしかしたらその組織、連携のところにも来るかもな。凛華が逃げ込んでくるかもしれねーとか思ってんじゃね?」

『んでそれを早く言わねェ!!』

「言っただろ?あくまで予想だ。」

『ッチ。』

「とにかくあいつらは凛華と最悪の場合は堂后お嬢様、浅井田お嬢様、矢作お嬢様狙ってくるな。」

『......なんでそこまで知っててお前が助けてやらねェ。お前んとこの姫、毎晩泣いてんぞ。』



やっぱりとは思っていたがそんなことを言われると悲しくなる。こんな時に限ってその場には俺じゃなくて高杉がいるのが悔しいと思う俺は自分勝手だ。



「......あいつを危険な目に合わせたくねーしな。」

『その言い方じゃァ姫路野の不正は確実なんだな。』

「凛華の持ってたUSB見せてもらったからな。ありゃあ隠してるつもりだが俺の目は誤魔化せねーよ。間違いなく黒だ。」

『ほぉー。』

「......とにかくよろしくな。」

『お前いつ帰ってくんだ?』

「あー、とりあえずこれ確かめ終わったら一旦帰るわ。姫様心配だし。」

『これ?』

「そ、これ。」



じゃ、と一方的に電話を切る。電話越しで何か聞こえたが聞こえないふりをした。そして目の前にある扉を静かに開いた。誰もいないらしい。そっと侵入する。



「あったあった。」



暗闇の中で不気味に光るパソコンの画面をつつく。パスワードを入力しファイルを開く。



「......やっぱり。」



とりあえずコピーすっか。


ポケットにある自分自身のUSBをさしコピーする動作を操作した。



「......。」



あー、早く凛華に会いてーな。







私の執事は自分勝手



「......ぐすっ、ぎ、さん。」

「......呼んでんぞ、銀時。」

だから、早く帰ってきてやれ。

頭を一撫でするとそいつの頬は緩んだ。



 
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