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ガチャッ
いとも簡単に開いた扉に少し警戒しつつ、忍び足で中へ中へと入っていく。使用人は先程の爆発音のあったところへ行ったのか屋敷の中は蛻の殻に近かった。
「凛華!」
「え!?」
ぐいっと引っ張られわたしは銀さんの腕の中。しかしその恥ずかしさよりも引っ張られた直後の発砲の音の方に注目してしまった。
わたしがさっきいた場所には黒い何がめり込んでいた。
「ちっ。」
「くそ、野郎め!逃がすか!」
銃を懐にしまった男を銀さんは全力で追いかける。わたしもその後に必死に追いつくよう全力で走った。
追いついた銀さんは男の襟を掴み床に思いっ切り倒した。ガンッと痛い音と共に男は床に仰向けの状態で倒れる。
「コイツァちょうどいい。案内してもらおうか、社長室とやらまで。」
「クッ、誰がそんなこと...。」
「いいんだぜ別に。抵抗すればこの屋敷ごと爆発するまでだ。」
「屋敷ごと!?」
そんな大掛かりの爆弾、いつつけたのだろうか?
「さあ、案内してもらおうか。」
「......くっそ。」
男は一言そう吐き歩き出した。
ここでわたしはわかった。あぁ、あの爆弾のことはこの男を脅すための嘘の話なのだと。そんな大掛かりな爆弾をそんなすぐにつけれるわけないのだ。
「......ここだ。」
しばらく歩いて着いた場所は社長室と金色のプレートで書かれたものが扉の上に置いてある、見た感じ如何にも社長室のところだった。
「ご苦労様でーす。」
「ガッ!」
首のところを銀さんは力強く叩き男を気絶させる。男に申し訳なく思い手を合わせてからわたしは社長室の扉を手にとった。そこに銀さんの手も添われる。
「ふたりで、な。」
「...うん!」
ギィッといとも簡単に開いた社長室の扉。わたしはその扉を力いっぱい開いた。
「おい、随分外が騒がしいが何事だ....!?お前らは!?」
「こんにちはー、社長さーん。」
ニコニコと手を振る銀さん。しかしその目は別のものに支配されていて決して笑顔と呼べるものではなかった。
「まさか!貴様らのせいか!」
「勿論。俺の大事なお嬢様を誘拐しようとしやがって。」
「こ、根拠はあるのか!根拠は!」
「こっちはデータ全部揃えてきてんだよ。お前ェが犯人なのも確信済みでな。」
「クッ!」
「さあ、パソコンを壊させてもらおうか。」
ニヤリ、そう笑う銀さんはいつもの銀さんではなくどこか別の遠くの人みたいだった。わたしはただそれをぼうっと眺めることしかできない。
「クソ!あと少しだったのに!!」
ガチャッ
「!?」
男は懐から出した銃を構える。それはわたしの方向に向いていた。安全装置を外し引き金を引く。
「!!」
「凛華!」
「もう、終わりだァァ!!」
わたしの方へ飛び込む銀さん。わたしはそれを押しのけ身を低くする。
「!?」
バンッ
銃音はわたしの耳を掠り床へと減り込む。社長が緩んでいる隙にテーブルに手をつけ足を思い切り振り下ろす。
「舐めんじゃないわよ!!!」
ドガッ
「ぐぼえ!!」
脳天から勢いよく足を振りおろしたわたしはその場に着地。攻撃を受けた社長は目を白く向きドタリと鈍い音を立てて倒れる。
「今の時代、お嬢様は守られるだけじゃダメなのよ。ふんっ。」
「凛華!!」
青白い顔をわたしに向けて駆け寄る銀さん。
パンッ
「!」
頬に鋭い痛みが走ったのと同時に体全体が暖かいものに包まれた。わたしは銀さんに叩かれ、そして抱きしめられたのだ。
「っかやろう...。心臓止まった。」
「ご、ごめん。でもあのまんまじゃ銀さん撃たれてた。」
「わかってた、わかってたけどよォ。」
ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。わたしは自然と涙が溢れ銀さんのスーツを少しずつ濡らしていった。
「怖かった、お前が撃たれると思って...怖かった。」
「うん、ごめんね。」
「もう、危ない真似はしねェでくれ。心臓止まりそう。」
「わかった。その代わり銀さんもよ?」
「...俺ァ、大丈夫だから。」
そして一言「馬鹿野郎」と呟き、後頭部を持たれ再び引き寄せる力を強めた。わたしはそれに答えるように手を背中に回した。
あぁ、わかった。今回のことでわかったよ。
わたし、足手まといだ。
私の執事の足手まとい
「あー、こちら姫路野家。パソコン壊しに成功。繰り返す...。」
今まで銀さんの隣で一緒に戦いと思ってたけど、
それは銀さんにとってとても足手まといのことで
さらに銀さんの命を危うくしてしまうことだった。
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