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わたしの朝はいつもこうだ。
銀さんが手荒に布団を剥ぎわたしを叩き起こす。その後に用意された激甘のハニートーストと激甘のココアを飲む。そして制服に着替えたら髪をとかしてもらい銀さん愛用のスクーターで学校へと向かう。
これが今までのわたしの朝だった。しかし今日は違っていた。
変わらない日常のはずだった。変わったことといえば昨日銀さんの過去について知ったこと、そして父様の不正疑惑について。(まだ本当かわからないのでとりあえず疑惑)
明日から対戦だ、そう心得て寝たのに。
「なにこいつゥゥゥゥゥ!!!?」
隣にいるのは片目眼帯した紫がかった髪色したあの高杉とかいう執事。こいつは確か矢作拓羅嬢の執事だ。こんなやつがなんでこんなところに。
「...うっせーな。静かにしろよ。」
「こんな状況で静かにできる神経を疑いたいわ!!!」
というか銀さんは?キョロキョロ辺りを見回してもどこにもいない。
「ね、ねェ高杉。」
高杉の体をゆさゆさと揺らす。んー、と寝ぼけながら目を擦る姿はまさしく猫。しかも目がつり目なだけにもろ猫、猫猫じゃねーかい。
「うっせェな、寝かせろ。」
「あんたさっきから言いたかったんだけど、ここわたしのベッドだからね。」
「ケチケチすんな。」
「ケチケチしてない。」
高杉は未だに起きる気配がない。わたしは更に体を揺すった。
「ねー、起きてよ。で、まず状況説明しろよ。」
「......朝から誘ってんのかァ?」
は?と言った時には既に押し倒された状態になっていて視界に入るのは天井と怪しく笑う高杉。手もしっかり掴まれてもう逃げられない状態。
「どうやったらそんな思考になるのよ!!!離して馬鹿!!!」
「ったく、どいつもこいつも朝から俺の睡眠時間邪魔しやがって。」
ぐいっと近づく顔。わたしは恐怖と不安で思わず目を閉じる。
「や、やだっ!!!銀さん、銀さん!!!」
助けて!!!
「......ククッ。」
すっと軽くなる手首。わたしは恐る恐る目を開けた。そこには高杉なんかいなくてただ真っ白な天井が広がっていた。
高杉は興醒めだ、とか言って煙管に手を伸ばしていた。
「愛されてんなァ、銀時もよォ。」
「なっ!!!」
顔が赤くなったのが自分でもわかるぐらい真っ赤になった。恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
「まあ、そんなに名前呼んでも奴はここにいねーよ。」
その言葉に頭が真っ白になった。
「い、いないってどういう、」
「さァな?」
ククッとまた怪しげに笑う。わたしはそんな高杉を見てみないふりしてベッドから起き上がろうとした。
「っと、させねーよ。」
「きゃっ!!」
手首を掴まれベッドに押し倒された。わたしはわけがわからず頭に疑問符を浮かべる。
「離して!!銀さんをどこにやったのよ!!」
「おいおいその言い方じゃ俺が拐ったみてーだな。」
「そう言ってるの!!」
キッと睨むと呆れた目でわたしを見てきた。この顔ものすごく腹が立つ。
「誰があんな馬鹿拐うか。メリットもねーのに。」
そう言う高杉の顔が嘘をついているようには見えなかった。
「じゃ、じゃあ銀さんは...?」
「......自分の足で出掛けた。」
「どこに?」
「それはお前が一番よくわかってんだろ。」
そして脳裏に昨晩見た銀さんの顔が思い浮かんだ。
「ゆっくりおやすみ。」
「......置いて、かれた?」
「さァな。」
けど、ふぅと煙をはく高杉が一言。
「俺は今日一日中お前を外に出すな、とお願いされた。」
「......え?」
なんで、一体、どういうこと?
私の執事は何処
銀さん、あなたはわたしを置いていって高杉に見張らせて一体何がしたいの?
ねえ、いまどこにいるの?
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