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がちゃっ
銀さんはパーティー会場の扉を開け、私を誘導する。中はまだざわざわと騒がしかった。
私は何事もなかったかのように入りひとつの席に座る。
「......喉乾いた。」
「え?俺が舐め「あああああ!!」」
こいつ!恥というものを知らないなっ!
「ック。」
銀さんは笑いを堪えているのだろう、変な笑い方をしていた。
「銀さん馬鹿?馬鹿だよね?世界一の馬鹿だよね?なんでそんな恥ずかしいことが平気で言えるのさ!しかも喉乾いたとそれは関係ないし!」
「関係あるけど?さっきの俺の唾液を凛華が皮膚で吸収し......。」
「うるさいわああああ!んなことするかあああ!いいから早く何か飲み物持ってきて!!」
「あとはなあ、」
「もういいから!色々謝るからもうやめてええ!」
「クハッ!弄りがいのあるやつ。」
そう言い放って銀さんは飲み物を取りにどこかへ行った。
たくっ!あいつは一体どこまで私を苛めればいいんだ!あれ?この言い方、なんかドM発言ぽいような...。いや、気のせいだよね。私ドMなんかじゃないもんね。
コツッ
下を向いてぶつぶつ言っている私の視界に黒い靴が目に入った。
「?随分早くな」
そこで言葉は止まる。それもそのはず。
そこにいるのは銀さんではなかった。
「よお、凛華お嬢様。」
「高杉、晋助......っ!」
なんでこんなやつが私のところに来てるの?
私の目の前のやつは相変わらずのニヒル顔。ぞっとする。嫌いだ。
「凛華お嬢様とやらにいくつか質問がしてェ。」
挨拶の時には敬語だった口調もいつの間にか取れ素が出ている。わたしは警戒しつつ口を開いた。
「......私が答えれる範囲なら、どうぞ。」
「じゃあ、はじめにひとつ。」
彼の顔は私の近くまで近寄ってきた。一瞬何かやられると思ったが、怪訝そうな顔を見て警戒心を解いた。
「あいつはお前が雇ったのか?」
「ち、違う。父様が雇ったわ。」
「......ほォ。」
顔が離れ顎に手を当てながらニヤニヤと笑う。
こいつ、何を考えているのか読めない。変な男だ。
「じゃあ、もうひとつ。」
「なんでしょうか。」
「あいつの過去を聞いたか?」
「過去?どうして?」
「聞いてねーのか。」
考えてみる。
そういえば私、銀さんのことなにも知らない。銀さんがいつどこで生まれどういう風に育って、そして何故執事になったのか。
「......。」
「その様子じゃァ聞いてねーらしいな。」
「銀さん、過去になにかあったの?」
「それは本人から聞け。」
「高杉。」
私の声とは違う、別の声が聞こえる。
「......なんでしょう、拓羅嬢。」
「帰りましょう、後は他の人に任せて。」
彼女は高杉の袖を引っ張り、出口へと行こうとする。
「凛華嬢。」
「はい。」
「またお会いしましょう。」
こうしてふたりは出口へと足を進め扉の奥へと消えていってしまった。
私は彼らの姿が消えるまでぼぅっと見つめていた。
「悪ィ悪ィ!遅くなっちまった!」
高そうなグラスに水を入れて持ってきた銀さんが帰ってきた。
「......。」
「どうした?そんなに喉乾いたか?」
......わからない。
「......いや、別に。」
私の執事は謎だらけ
そんなこと一切考えたこともなかった、知ろうとしたなかった。
ねぇ、銀さん。貴方は何者のなの?
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