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「………?」



大きな音はしたものの一向に自分に痛みはこない。痛みではなく浮遊感を感じる。


恐る恐る目を開く。



「そんなに銀さんが好きかコノヤロー。」



銀さんの顔が近かった。



「え、や、わ。」



驚いて声も出ない。段々顔が赤くなるのが自分でもわかる。そのことでまた恥ずかしくなる。



「しっかし軽いなァお前ェ。」

「きゃ、わ!ちょ、」



ふわふわと体を投げられる。



投げられる……?



そういえばさっきから肩と太股に手の感触がある。それに横を向けば近くに銀さんの胸板。匂いもする。



「お、姫様だっこ……?」

「え、今頃かよ。」



また顔が赤くなる私。



「おおおお降ろして!」



シャツを掴み必死に言う。もう恥ずかしさで今なら死ねそうだ。



「………。」

ニヤリ、



銀さんは意地悪な笑みを浮かべた。嫌な予感がした。



「やーだね。」



的中したァァァ!!



「凛華、銀さんの頭馬鹿にしたからなァ。銀さんショックだったからなァァ。」

「ご、ごめんって!」

「謝られても、よ!」

「きゃ!」



ドサッとソファに座る。


私は銀さんの上を横に座るような態勢になった。



「凛華……。」



頬に暖かな手をあてる。銀さんはよくこの仕草をする。癖なのか、


誰かにしてたのかな。


そう思うとチクリ、と痛んだ。それは肉体的に傷ついたから痛いわけではない。


どうして?


それにここ最近の私はおかしい。自分で自分を笑えるくらいおかしい。


父様にも母様にも誰にも甘える要素を見せなかった私が、銀さんに見せているのだ。


それは計画的ではなく無意識に。思い返してみたらあの日、銀さんに夢を語った時ぐらいから私はおかしくなった。


あれもこれも全て銀さんのせいだ。


そう思いつつも今のこの時間を愛おしいと感じてしまう私はなんだろう。



「ぎ、銀さん?」



未だに頬を撫でる行為を止めない。正直くすぐったくて恥ずかしい。


けど、止めてほしくない。



「………あ゛ー!!」



ぐしゃぐしゃと髪を掻きむしる。突然叫び出したので驚く。



「おら、髪の毛やるんだろ?遅刻すっぞ。」

「う、うん。」



銀さんは私を股の間に座らせいつものように髪の毛をセットしてくれた。
 

 
 
 
 
 
私の執事は狡い人
 
 
 
「ぎ、銀さんっ。」

「なんだ?」

「その、あの、」

「?」

「頬、撫でるの、もっと、してよ。」

「………。」

「だめ、なら別に……。」

「(可愛いこと言うなよコノヤロォォォォ!!)」

 
 
 
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