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「ったくよー、風邪なら風邪って言えばいいのによォ。どうして言わないかねェ、凛華ちゃん。」

「………。」



銀さんに一本とられた私は学校を休み、大人しく寝かされていた。



「次からはちゃんと言うんだぞー。」

「………。」

「わかったかァ?」

「……わかんない。」

「あぁ?」

「わかんないよ。」



きょとん、とした顔で銀さんは作業を止めこっちを向いた。



「人に頼るときにはどうしたらいいの?」

「……お前ェ、人に頼ったことねーのかよ。」

「ケホッ。いつも自己解決よ。だって、」



頼れる人が周りにいないんだもん。


そう言うと銀さんは少し苦笑いをし、私の熱い頭を大きな手で撫でてくれた。



「頼れる人が周りにいなかったんじゃなくて、周りに頼れる人がいなかったんだよな。」

「………。」

「お前はいつもひとりで頑張ってたんだよな。」

「私、頑張ってたのかなー。」

「今までのことを自己解決させたんなら、そりゃあ大層頑張っただろーよ。」



そう言ってさらに頭を撫でる。なんだか心地がいい。



「でもそれは今日でやめろよ。」

「?」

「ここにいるからな、凛華が頼れるやつ。」



ニカッと歯を出して笑う。そのくしゃっとした笑顔は素敵だった。



「遠慮なんかいらねー。いつでも頼れ。」

「……いつでも?」

「いつでも。」

「……なら、なにもしないで。」



布団から手を出し、銀さんの袖を掴む。逃げないように。



「なにもしないで、こうして頭、撫でててよ。」



あぁ、やばい。今日の私はかなりの素直で甘えん坊さんらしい。言いたいことがバンバン言えちゃうわ。



「……仰せのままに、凛華お嬢様。」



銀さんは私が寝付くまでずっとあの大きな手で頭を撫でてくれた。
 
 
 
 
 
 
 
私の執事は魔法使い
 
 
 
ピピピッ

「36.5度……。」

「下がったじゃねーか、よかったな。」

「銀さんが頭撫でてくれてたおかげだよ。」

「!」

「ありがとう。」

きっとあなたの言動ひとつひとつが魔法として私にかかったんだよ。

だからこんなに素直にお礼が言えるんだ。

 
 
 
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