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あ、やばい。で、でる.....っ!
「マ、マ、マ、マイケルジャ○ソン!!」
私の鼻がむずむずしたかと思えばなぜか急に出てきたくしゃみ。久しぶりに出たからなんだかすっきりした。
「え、それくしゃみなの凛華ちゃん。」
「ずずっ。ん?」
驚く妙ちゃんの心境がよくわからない私。なんでそんなに驚いてんの?
「原作の私のパクリネ。」
「は、違うし。そんなわけないし。私のくしゃみは祖先の祖先からいつもこうだし。」
「じゃあ、凛華の祖先はマイケルジャ○ソンを知っていたのか?」
「勿論。私の祖先舐めんなよ。」
「漢字違ってるネ。舐めたくないヨ。」
「わわわわざとだし。」
「はいはい。そうですネー。」
「あ、神楽私のこと信じてないでしょ!?そうでしょ!?」
「はなっからお前のことなんて信じてないネ!」
「ひ、ひどい!!私はあなたのこと信じて結婚したのに....!!」
「ふはは、残念だったな凛華!私はお前の財産目当てで結婚したのだ!!」
「じゃあ、今までの幸せは!?」
「すべて偽りだヨ!!」
「どこの昼ドラだよォォォ!!」
「「うるさいダメガネ。」」
「ふたりしてダメガネ言うなァァァァ!!」
相変わらずグダグダの3Z。
この前まで静かな環境に暮らしたいとか言ってた私だが、やっぱりこのグダグダがないと生きていけない気がする、と改めて思いました。
「おーい。席に着けー。」
全蔵先生が荷物を持って入ってきたので私たちの「ザ・昼ドラ劇場」は自然と幕を閉じた。
号令をして全蔵先生の授業が始まる。ま、ほとんどは授業に関係ない痔の話ばかりだが。
「最近、お尻の方が本当にやばくてね、先生ね泣きそうでね。」
それを右から左に聞き流し(歌いませんから)ボーッと外を眺めていた。
ふと後ろのほうに目線がいく。
......そういえば後ろの席、超不良君だったな。
後ろにはスヤスヤと心地良さそうに寝ている超不良君、高杉晋助がいた。
前までは不良君が後ろで「いつか絶対刃物で刺される」と内心ビクビクしながら生活していたが、この前ケシゴムを拾って話してから大分印象が変わった。
なんだが、普通に面白いひとじゃん。
じっとその寝顔を見る。
「......まつ毛長いなこの野郎。」
いいな、ずるいな。こんな女の子負けの顔をして。女の子にとって羨ましい限りだわ。
「なに見つめてんだよ。」
「いや、まつ毛長いなと.....。え?」
声がしないはずなのに声が聞こえた。
そこには今まで寝ていたはずの不良君が体を起こしこちらを見ていた。
「ごめん起こした?」
「ああ、起こされた。」
ムスッとした表情でこちらを睨む。
「ソーリ、ソーリ。」
「sorryだろ。つか謝る気ねーだろ。」
「あります、気持ちは溢れすぎて困っていますけどただ私の発音が悪いだけです。」
「ま、お前とはここが違うからな。」
そういってニヒル顔で頭を指す。
く、悔しいな。
「わ、私だって本気出せばすごいですけど?」
「じゃあ、やってみろよ。」
「......今日は舌の調子が悪いのです。また改めてお願い致します。」
「ほお?舌の調子が悪いのか?」
「そうなんですぅ。火傷したんですぅ。」
「猫舌か?」
「なんでばれたの!?」
「今の会話でわかるだろーが、あほ。」
「あ、あ、あほじゃないし!!」
「じゃあ馬鹿。」
「馬鹿じゃないし!!」
「じゃあ、発音よく言ってみろ。」
「......スォールィー?」
「ブッ!ククッハッ!」
「笑いすぎでしょー!?泣くぞ泣くぞこの野郎!!」
「泣けよ。」
「鬼!!鬼がここにいる!!」
「鬼?いい響きだな。」
私たちがこう話している時も全蔵先生の痔の話は更にパワーアップして最終的には愚痴みたいなのになっていた。
私たちは先生に注意されることもなく、ただひたすら他愛もない話を授業の終わりまでしていた。
なんでだかわかんないけど、そんな他愛のない話は私にとって最高に幸せな時間に感じられすごくいい気分になった。
......明日も話せたらいいな。
そんなことを思いながら放課後、帰り道を歩いていた。
なんてことない話
本当になんてことない話だった。
馬鹿みたいにふざけて笑って。
それがこんなにも幸せな気持ちになるだなんて知らなかったよ。
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