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「あっ。」
早起きは三文の徳とかなんたら言うが本当にそうかもしれない。
珍しくめずらーしく早起きしたわたしは学校に登校したはいいが早く来すぎて誰もいないし暇だったので屋上へと歩いて行ったのだ。
ギギィと古びた音を立てながら開く扉は学校の歴史を語っている気がする。
そんなかっこいいことを思いながら屋上へと踏み入り、柵へと近づく。
そこから見える風景はなんとも美しいもので、つい息を飲んでしまうほどだった。
これが三文の徳その一。
ひとりで柵にしがみつき風景を眺めていると、
「ククッ、檻に閉じ込められたやつみてーだな。」
耳に突き刺さるようなこの声、ずっとずっと聞きたかった声。
声をした方向をみると、
「高杉く、ってなにしてんのォォォォ!?」
「......うっせー。」
後ろを振り向くとかっこよく立っているわけでもなく、彼は柵の向こう側にいた。
冷や汗という冷や汗がわたしの体から流れる。
一応これが三文の徳その二。
「まだダメだよ!!!!君の人生ここからスタートなんだからァァァァァ!!!!」
「なんの話してんだよ。」
「だだだだだって柵の外にいるから、」
「死ぬわけねーだろ、あほ。」
ニヤリと笑うその笑顔に不覚にもドキドキする。くっ心臓よ、そんなにわたしを痛めつけて楽しいかコノヤロー。
すると、高杉くんはわたしに向かっていった。
「来いよこっち(冥土に)。」
「いやァァァァァ!!」
括弧の中見えましたよ!?冥土って見えましたよォォォォ!!
「......そんな嫌がるかよ。」
「まだ死にたくないまだ冥土に行きたくない。」
「あぁ?冥土だァ?」
すると再びニヤリと笑い、言った。
「悪かねーな。」
「えええぇ!!」
やばいこのままだったら高杉くんまじで冥土行くかもしれない!(被害妄想炸裂)
「いいいいかないで!」
「じゃあこっち来いよ。」
「......落ちたらどうしよう。」
とか言いながら少しずつ柵を上っていく。これも惚れた弱味かしら?(違う)
「大丈夫だ。」
「え?」
「受け止めてやるよ。」
髪を風で靡かせ笑う高杉くんはなんだかいつもより少し子供じみていた。
柵の上で跨いで座るわたしを両手で冥土へと誘う高杉くん。
ごくり、と唾を飲みわたしは勇気を振り絞って、
「おりゃァァァ!!」
飛んだ、冥土の国へと。(しつこい)
よくわからない浮遊感、よくわからない打撃がわたしを襲う。
そして暖かいものに包まれる感じがした。
「よかったな、冥土じゃなくて。」
顔を上げると頭に手をのっけて笑っている高杉くんがいた。その笑顔はいつもの笑顔なんかではなく、優しく暖かいものだった。
不覚にも顔が熱くなる。
「う、うん。」
高杉くんは何事もなかったかのようにわたしを足と足の間に座らせ、外を眺める。
なぜ、足の間なのかよくわからないが幸せだから、まぁいっか。けど恥ずかしいな、うん。
「高杉くん。」
「あ?」
「なんで、2週間も学校来なかったの?」
「......面倒臭かったから。」
「ふーん。」
なんだそんな理由か、少し頬を膨らます。
「寂しかったとかか?」
「は!?んなわけないし別に寂しいとかそんな......。」
こと、ありますね。
言葉にできないので足の裾をきゅ、と掴む。
「まぁ、こうして楽しみもできたからな。」
「楽しみ?」
楽しみ、というのは一体?
「明日からはちゃんと来てやるよ。」
「ほ、本当!?」
あまりの嬉しさにくるっと後ろを振り向く。
勢いよく振り向いてしまったため鼻と鼻がぶつかる。
「っ。」
そうだ、私たちは今こんな近くの距離にいるんだ。
普通なら恥ずかしくてもう恥ずかしくて前を向くのに、なぜかあの瞳から目を反らすことができなかった。
とても澄んでいて綺麗な瞳をしていたから。
「凛華。」
「は、はい。」
心臓の音が私たちの空間を支配する。もう相手に聞こえてんじゃないかってくらいの大きな音で鳴り響く。
「教室。」
「......は?」
「教室、見ろよ。」
なんの教室かよくわからないがとりあえず前を向く。
「!!!?」
「みんな見てるな。」
そこには3zの教室からニヤニヤニヤニヤしながら眺める私たちのクラスメートがいた。
「ふざけんなよォォォォ!!」
柵を上り3zの教室に駆け出したのは言うまでもない。
をとめなわたし
「あー、朝から暑いネおかしいネ。今は冬ヨー。」
「きっとあれでィ、朝からいちゃいちゃしてたあいつら」
「お前らまじでふざけんなよ!!乙女だって傷つくときは傷つくぞ!!」
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