チョレギ! | ナノ


「こんにちは」
「こんにちはー」
「監督さん?」
「ええ、百枝よ。もしかしてマネジ希望!?アナタみたいにキレイな子なら」
「あーごめんなさい、違うんです」
 慌てて首を振る。がっかりした顔をする監督さんにごめんなさいってもう一回謝る。
「阿部隆也の姉です。いつも弟がお世話になってます」
「あーアナタが噂の!噂通りキレイな子ねー」
「ありがとうございます。監督さんも聞いてた以上に美人さんですね」
「へ?あはは、そんなお世辞はいいよ」
 お世辞じゃなくて本当なのに。ていうか胸でかっすごっ。監督してるってことはスポーツもできるってことだよね。胸、邪魔じゃないのかな。走るとき揺れて痛いってよく聞くけどそうなのかなー。
「監督ーって、おお、阿部」
「あっ志賀ちゃん!」
「何してんの?部活行かなくていいのか?」
「もうちょっとしたら行くよ。監督さんにご挨拶しにきたの」
 そういえば志賀ちゃんが顧問なのか。監督さんと志賀ちゃんと少し話してたらわらわらと野球部員がグラウンドに入ってきた。私がそっちを見ると一瞬静かになってからどわっと爆発したみたいに騒ぎ出す。その中からこっちに走ってくる一人を見て自然と笑顔を作る。
「何しに来てんだよお前は!」
「監督さんが美人さんだって言うから見にきたの、あと挨拶」
「帰れ」
「まあまあ阿部君」
「監督、こいつ甘やかさないでください!つけあがるだけすから!」
「タカヤのばーか」
「あぁ!?」
 不機嫌な顔するタカヤの横を通って離れたところで固まってる野球部員達のところに歩いていく。
「この前はちゃんと自己紹介できなかったからね。阿部隆也の姉よ。よろしくね」
 一人一人に握手をして名前を聞いていく。
「みんなちっさいね。一年生だから当たり前か。あっでも君は高いね。名前は?」
「はっ花井、です」
「下の名前は?」
「え?梓…」
「梓君ね」
 最後の一人の子に握手しようとしたらタカヤが後ろから腕を掴んで引き離してきた。
「帰れ。練習の邪魔だ」
「分かってるって。私もそろそろ戻らなきゃ泣かれるし」
「もう来るな一生来るな」
 そこまで言わなくてもいいじゃない。監督さんと志賀ちゃんに挨拶して校舎に戻る道を歩いてく。部活サボると顧問の佐藤ちゃんが泣きついてくるから困るんだよね。早く戻ろうっと。
「なんか、すげーな阿部の姉ちゃん」
「実玖さん、だろ」
「浜田に聞いたんだけどさ、ファンクラブみたいなのもあるらしーぜ、女子限定の」
「すげー…」
「それよりもさ、…すっげーいいニオイしたな」
「お前ら人の姉貴の話で盛り上がってんじゃねーよ!」
「(なんだただのシスコンか)」
「(シスコン)」
「(人は見かけによらねーな)」
「(シスコン阿部)」

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