季節は真冬だっていうのに、浜辺を裸足で歩き回るなんてどうかしてるって、自分でも思うけど、今日のオレは機嫌が良いから、指や爪の間に砂が入ったって、小石を踏んづけたって気にしない。海は嫌いじゃないんだ。潮臭い風も、独特の雰囲気も。


ぷかぷか浮いて、漂って、そして、


「ねぇ剣城くん、知ってる?海月ってさ、死ぬと海に溶けて跡形も無くなるんだって。土に還るって言葉があるけど、この場合は海に還るって言うのかな、どう思う?」


剣城くんはオレの足跡を消すように、4歩分くらい後ろを歩いているから、オレはいつもより少しだけ声を張らないといけない、というか、ここは3歩分の距離に居るところでしょ、なんだよ4歩って微妙だな。いや、別になんだっていいんだけど。


「だから、何だ」
「いや、別に、だからどうってことでも無いんだけどさ。」

特に返事を必要としていたワケじゃない、ただ、剣城くんの反応を見たかったのだ。


「・・・それは、今日お前がここに来たいと言ったことと、何か関係があるのか」


うん、そうだね。なんて、口には出さないけれど。
察しのいい剣城くんは、今日のオレの雰囲気がいつもとは違うことを感じ取っているんだろう。彼にしては珍しく少し動揺しているみたいだ、何かが起こることを予感しているけれど、それが何なのか掴めなくて、その原因になるだろうオレの行動も言動も掴めなくて、不審に思ってる?不安になってる?それとも怖い?ねぇ、君は今どんな気分なんだろうね?


「・・・ねぇ、剣城くん」
「何だ」
「人間ってさ、死んで土に還るって言うけど、完全に消えるわけじゃないんだよな。骨は残るし、匂いだって」
「でも海月はさ、完全に消えて、海になるんだ。海から生まれて海に還るんだよ。」


剣城くんが眉を顰めるのがわかった。


「・・・海月だったらよかったのに」


剣城くんは黙って、オレの旋毛のあたりを睨んでいる。
彼がこうする時は、オレが何を言いたいのかが解らなくて、それを考えている時だ。こういう些細な行動を読み取れるようになる位には、オレは剣城くんを気に入っているんだろう。それこそ、今日ここに剣城くんを連れて来る位、彼に好意を持っていると言っていい。まぁ、好意の伝え方がこんなカタチじゃあ、文句を言われるかもしれないけれど。


「ねぇ剣城くん。オレね、死んだ後に、誰かに骨を拾ってもらいたいとか、考えられないんだよ。何にも残したく無い。自分は死んでるのに、体の一部はどっかにしまってあるなんて、なんか気持ち悪いじゃん?」


「・・・何が言いたい」

とうとうしびれを切らしたみたいで、はっきり言えとばかりにオレを睨んで来る。もう言ってもいいかな


「うん。剣城くん、オレさ、」









「もし死ぬなら、」













ついったのお題でした。素敵だったので妄想吐き出したものを、少し修正して
お題/『海月みたいにしんでみたい、君の目の前で。』



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テーマ「人外ファンタジー」
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