はいかイエスで答えなさい | ナノ

  やらせか本気か教えなさい




「え?二口と付き合うことになった?」


中学から同じの舞ちゃんに話した。折れてくれない二口君を断りきれず、成り行きで付き合うことになった。舞ちゃんと二口君は同じ部活の部員とマネージャー。共通の友人。

「強引だね、二口。」
「ちょっと怖かった。」

お試し交際3日目。特に何もない。今までみたいな会話もない。
「わかりました」とOKを出せば、彼は何も言わなくなり、部活へ行ってしまった。それからは挨拶もしない。まるで夢だったかのように。

「で?そのあとは何かしてるの?」
「一緒には帰るよ。」
「だからあいつすぐいなくなるのね。」

一緒には帰る。でも会話はない。前よりも距離が開いたように思える。学校から駅まで20分。何の会話もしないのに、意味はあるのだろうか。

「言うだけ言って何がしたいんだろ、二口のやつ。」
「私よりも舞ちゃんの方が付き合い長いよね?わかる?」
「いや、全然。」

首を振って否定する舞ちゃんに、何も返せない。付き合うってさ、手を繋いだり、デートしたり、じゃないの?

「直接聞いてみたら?私はあなたのお飾りか何かなの?って。」
「そ、それはストレートすぎるよ。」

りんごジュースを飲みながら、舞ちゃんは言う。

「だってそうでしょ?二口はチームメイトで友人でもあるけど、【彼女持ち】って肩書きだけ欲しくて実玲に告ったんならすぐ断ち切るべき。」
「・・・そういうわけじゃないと思うけど。」

とは言ったものの、付き合いは長くない。知らないことばかりだ。私の意見を無視して押してきたのだから、本当に肩書きだけだったのかも。

「舞ちゃんは・・・彼氏さんとどんな感じ?」
「あぁ、女川?普通に恋人っぽいことしてるよ。デートだって、手もつなぐし。」

キスだってするよ、と少し恥ずかしそうに笑った。くそ可愛い人種め。
ラブラブめ!と軽めにパンチをかまして、今日の昼休みは終わった。








「遅い。」

委員会が終わり、昇降口に向かえば不機嫌そうに二口君が言った。元々連絡先を交換しておらず、遅くなることを伝えられなかった。教室でも会話しないのだからどうしようもないじゃないか。

「ごめんね。」
「ん。」

謝ればそれっきりで、彼に鞄を奪われる。毎回荷物を持ってくれる。最初は拒否していたのだが、何故か睨まれるので最近はされるがままだ。

「ありがとう。」

そう言って少し後に歩く。彼は一度足を止めて振り返る。合わせてこちらも足を止める。そして無言。


「・・・な、なに?」
「・・・べつに。」

それだけ答えて歩き出す彼を、また後ろから追う。又、無言の20分が始まる。私的には不思議だし、気まずいけど、彼はどうなのだろうか。一応、告白されたんだよね、私。つまり、彼は私のこと・・・好きなんだよね。

「・・・二口君、さ。」
「あ?」

ぶっきらぼうに加えて不機嫌。返事も怖い。

「何かの罰ゲーム?」

「・・・は?」
「何かのゲームをして、罰ゲームで私に告白してきたの?」

悪ノリ男子たちによる罰ゲームの一種だろうか。負けた奴、クラスの女子に告白な、的な。工業校で女子少ないし、うちのクラス私と島崎さんだけだし。島崎さん3年生の人と付き合ってるから、必然的に私になるし。

「・・・お前なに言ってんの?」

呆れた顔で言う二口君。それ以外考えらんないよ。何の会話もないし、むしろ前より距離あるし。

「罰ゲームだったらやめてよね。私、そういうの嫌い。」


私、あんたらの所有物じゃないから。


「・・・お前、バカだろ。」
「はぁ?!」
「好きでもない奴に告白なんてするかよ。」

だからその飄々とした態度がわからないんだって。

「そうだね。好きでもない人と付き合っちゃってる私、ばかだね。」

つい喧嘩口調になれば、先を歩く彼が立ち止まる。

「だからこれから好きになるかもしんねーだろ。」
「少なくとも今のままじゃ好きにならない。」

あと4日で終わる、とか嬉しそうにカウントしまう。そしたらもう会話もしなくなるのだろう。お試し交際?あぁ、したね、そんなこと、と笑い話になる。高校時代の面白エピソードと化する。


「じゃあ何?壁に追いやってキスでもしろって?」
「発想が唐突だし、それはないよ。」
「とりあえず試合観に来てくれ、とか誘えばいいの?」
「そういう誘われ方じゃ、じゃあ行かないってなるよ。」

どことなく駄々っ子みたいな言い方に、少し困ってしまう。
観に来てくれ、までだったら、わかったって答えれるけど。誘えばいいの?と答えを求められたら台無しだ。

「じゃあどうすればいいんだよ。」
「それは・・・わかんないよ。」
「俺だってわかんねーよ。」



それだけ言って困った顔をする。



「・・・好きなことに、理由なんているのかよ。」


小さく呟いて、また歩き出してしまう。何回目もわからない 『 好き 』 という言葉に何も返せなくなる。そのまま会話もなく、駅まで歩いた。わかったことと言えば、彼の 『 好き 』 は本気の意味だってこと。








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