はいかイエスで答えなさい | ナノ

  心の奥まで読み取りなさい




少し頭を整理しよう。

同じクラスの二口君に告白された。今年同じクラスになって、隣の席で、10分休みの時や昼休み、とにかく空いた時間に少し話す程度。部活はバレー部。この間主将になったとか。舞ちゃんの情報によれば、他校の子や、街を歩いていると声をかけられるらしい。要するにモテる。

まぁ、それは置いといて、だ。


 ーーー「 俺、奈良坂の事好きなんだよね。 」


それが告白の言葉。それだけ聞けばドキッとする。
しかし『 はいかイエスで答えろよ 』だの 『OKしたらこの顔独り占めできる』だの、次に発される言葉は残念なものばかり。

『1週間だけ付き合って。』、『好きになるかもしれないだろ。』、『壁に追いやってキスでもしろ』
全くもって良い要素が思い浮かばない。
押しに負けて、1週間交際を受けてしまった自分も自分だが・・・。

「今日で5日目か。」

言われてから3日間は特に何もなかった。一緒に帰るだけ。どこか不機嫌そうな顔の後ろをゆっくりついていった。
でも4日目の昨日、少し違った。

女川君から聞いたのか、それとも舞ちゃんから言われたのか、クレープに誘ってくれた。残念なことに、甘いものはあまり好きじゃなかったので、断ってしまった。苦しそうにクレープを食べる姿には罪悪感が湧いた。間接キスだと騒ぐあたり、そういうところ気にしちゃうタイプなんだな、とも思った。口が悪いが意外とピュアだった。
でもそのあと壁に追いやられたので、ちょっと焦った。結局は何もなかったが、『やっぱ好きだ』なんて言われて、動揺しないわけがない。

それだけならまだギリギリ耐えられたけど、昨日の今日で可愛い、はないと思う。そんな言われ慣れていない言葉を、イケメンに言われたんじゃ、こっちだって焦る。

今日は割とおしゃべりな彼と目を合わせづらく、休み時間の度に教室を出ていた。
けれどそんな昼休みも、もう少しで終わる。

「・・・戻りづらいなぁ。」

お弁当を包み直して、頭を抱える。
そういえば、もう5日も経ってるのに誰も何も言ってこない。罰ゲームだとしたら、誰か冷やかしたりしに来ないのか。そもそも二口君、モテるんだし、外で彼女作ればいいのに。一体私のどこがいいのだろうか。・・・言ってて悲しいな。




「・・・あれ?奈良坂さん。」
「あ。要先輩!!」

要先輩は同じ中学の1つ上の先輩。委員会が一緒だったので、終わった時はよく一緒に帰っていた。ちなみに今同じクラスの島崎さんと付き合っている。

「久しぶりだね。」
「そうですね。」

そういえば、要先輩もバレー部だったよな。しかも前主将。つまり、二口君を主将に勧めた可能性があるってことだよね。
・・・ていうか、知ってるんだよね。二口君のこと。

「奈良坂さんは最近どう?」
「え?!べ、別に・・・普通ですね。」
「そ?そう。ならよかった。」

全く関係ないことを考えていたので、大きい声で返事をしてしまった。ごめんなさい。要先輩は苦い顔をしたが、ふと何か思い出したような顔をする。

「二口と青根、同じクラスだったよね?」
「え、そ、そうですね。」

早々に話題に上がってしまった。

「なんか・・・迷惑とかかけてない?青根はともかく、二口とか。」

それが聞いてくださいよぉ!!とは言えない。何故かえへへー、と愛想笑いを返してしまう。

「あいつ、口も悪くて、態度も悪いけど、その・・・いい奴だからさ!」

・・・要先輩、多分それ、フォローになってないと思う。要先輩が、口が悪いっていうんだから、部活でもそんな感じなんだ。
いや、違う、告白を受ける前まではそんなに口悪くなかったけど。・・・ていうか、先輩にその態度なの?でもそっちが素なのかな。

「それ、俺のことフォローしてるんすか、茂庭さん。」

不意に後ろから声が聞こえたので、振り返る。今まさに話題になっている彼だった。少し息を切らして、不機嫌そうに私を見ている。

「ふ・・・二口君。」
「全然帰って来ないと思ったら、茂庭さん、ね。」

今、要先輩ってそんなに重要なんだろうか。そんなに睨まなくてもいいじゃないか。何もしてないでしょ。

「中学の先輩だったから、つい話し込んじゃった。何かあったの?」

息を切らして来たってことは、私か要先輩に用があるってことだよね。先生が呼んでるとか、誰かが探してる、とかさ。
けれど二口君はなにも言わなかった。

「おいおい邪魔してやんなよ二口。」
「はぁ?!ってなんだ鎌先さんか。」

・・・また増えた。
カマサキさん、と呼ばれたその人は、要先輩の肩を軽く叩いて笑っている。二口君が「めんどくせっ」って小さく呟いていたけど、聞かなかったことにしよう。二口君は私の隣へと距離を詰めた。


「せっかく茂庭が彼女と二人でいんだから、邪魔してやんなよ。」
「「は?」」

鎌先先輩はニヤニヤしながら言った。彼女って私のこと指しているんだよね?違います。要先輩の彼女は島崎さんです。めっちゃ美人です。

「彼女いるってのは聞いてたけど、会わせてくんねーんだもん。こんちは。」
「こ・・・こんにちは。」

違うんだけど、大丈夫かな。違いますって否定したほうがいいかな?でも挨拶されたし、とりあえず挨拶は返さないと。私が挨拶を返せば、何故か二口君は大きく咳払いをした。

「あぁ。かまち、違う違う。奈良坂さんは彼女じゃなくて、中学の後輩。」

要先輩は困った顔で訂正してくれた。鎌先さんはオーバーリアクションで驚いてくれた。本当にすみません。

「マジか、悪かったな。えっと・・・奈良坂・・さん?」
「あ、はい。奈良坂です。大丈夫です。」

二口君と要先輩を知ってるってことは、この人もバレー部かな。背も高いし。
・・・もしかして、二口君より大きいのかな?先輩のほうが。二口君と鎌先先輩を交互に見る。

「なに。」
「え!?な、なにも。」
「・・・ふーん。」

二口君はそれだけ言って、二人に視線を戻した。やっぱりどこか機嫌が悪いみたいだ。
ここで変に首を突っ込んで、今日の帰りに重たい空気になったら嫌なので、黙っておこう。

「こらこら二口。奈良坂さんを困らすんじゃないよ。」

・・・要先輩。嬉しいんですが、今は私に触れないでください。話題にしないで。飛び火だけは勘弁です。

「はぁ?!別に困らせてませんから!!」

めっっっちゃ怒ってる!!すごく怒っている!!あんなに声を張る程に、私は彼を怒らせるようなことをしたのだろうか?!つい驚いて一歩下がれば、同じく驚いた顔した二口君と目が合った。

「おいおい、何イラついてんだよ、二口。」
「・・・別に、イラついてませんけどぉ?」

一度呼吸を整えてから、二口君は言ったけれど、やはりイラついているようにしか見えない。

「ごめんね、奈良坂さん。悪いやつじゃないんだよ?二口は。」
「は・・・はぁ。」
「奈良坂もなんかフォローしろよ。」
「え?!私に振るの?!」

私一方的にあなたに睨まれてるんだけど。まずはあなたが私に謝罪するべきではないのでしょうか。

「なんかよくわかんねーけど困らすなよ!」
「ごめんね、奈良坂さん。」
「・・・いーんすよ、コイツの事は。」
「いや、よくねーだろ。クラスの女子巻き込むなよ。」

鎌先先輩と要先輩二人に怒られる二口君。
二口君は少し嫌な顔をした後、また私を睨んだ。

「・・・いーんすよ。俺たち、付き合ってるんで。」
「「は?」」
「タダのカップルの痴話喧嘩なので、茶々入れないでください。」








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