ねことわたし | ナノ

めくるめく青春の1ページ





日曜日。今日は目が覚めてもベッドの中ではなかった。つまり赤葦くんは1度も目を覚ましてない、ということ。
赤葦くんの方見て、布団はだけてたらどうしよう。
なんて思いながら、恐る恐る見てみたけど、寝相がとても良いみたいで、全くはだけていなかった。

そっと彼に近づいた。
確か彼、音とかに敏感だから、すぐ目を覚ましそう。
ちらりと覗き込んでみたら、鼻を少しすすっていた。
いや、少し、涙が出ていた。

嫌な夢でも見てるのかな。
起こしてあげるべきかな?
そう思って伸ばした手を寸で止める。

自分は生き物を飼った事がない。
10年飼ったと言っていた。
同い年だから、1年生とかから飼ってるんだよね?家族同然だよね?
悲しいよね。

自分はそれを体験してないから、わかるよ、なんて言えないけれど。

未だに眠る赤葦くんの頭を撫でる。
大丈夫だよ。
心の中で呟く。

彼がどんな夢を見てるのわからないけど、起こさない方がいいかな・・・?

意外と髪質いいな。
ふわふわしてんな。
もっと触ろう、と本来の目的からずれた瞬間、いきなり腕を掴まれた。

「うわぁ?!」
「ん・・・」

片目だけを重たそうに開けて、赤葦くんはこちらを見る。

「宇多川・・・さん。」
「ご、ごめん、なさい。」

慌てて手を引っ込めようとしたのに、彼は腕を離してくれなかった。
掴んだまま、また目をつぶってしまう。

「あ、赤葦・・・くん?」
「んー?」
「手、離して欲しいんだけど・・・」
「・・・んー。」

ね る な よ !!
あれ多分寝ぼけてたね!?夢だと思ってるんでしょ?!そうだ、絶対そう。
こうなりゃ意地で剥がしてやる。
それにしてもこの人やけにあったかくない?!
そっとおでこに空いた手を当てる。

「熱い・・、熱あるんじゃないの?」
「ない。」

なぜ断言した。
絶対にあるよ。熱いもん。

「とりあえず熱測ろ?体温計取ってくる。」
「ない。いらない。」
「そんなことないよ。ある。取ってくるから手を離して。」
「やだ。」

やだ、って。
吐き出される息が少し熱い。
目もつぶったままだから、相当に苦しいのだろう。
あまり高くないと良いんだけど・・・。

「赤葦くん、とりあえず手を離して?ね?」
「・・・・・・」

一向に離そうとしない赤葦くんの指を、一本ずつ離す。こうなりゃ地道にやるしかない。大丈夫。細かい作業好き。
熱で意識が朦朧としてるからだ。
それに風邪引くとすごく寂しくなるよね。

「あと、少しああっ?!」

親指人差し指を残したところで強く引っ張られた。
ベッドに飛び込む形になる。
危うく彼に激突しそうになったところを間一髪で避ける。避けきれてないけど。
力強すぎでしょ?!

簡単な言葉で言うならば私は今彼に覆いかぶさっている。しかも腕は掴まれたままだからめちゃくちゃ力入れて肘ドンしている。柔らかすぎないベッドでよかったよ。ウォータベッド的なやつなら2人で埋もれてたよね。耐えろ私のベッドちゃん。

この肘ドン誰か(特にトサ尾)に見られたら写真撮られてラインに晒される。バレー部に回る。んでえっちゃんに「節度」とか冷たく言われるやつ。
ぶひゃひゃひゃひゃ、と汚い笑いが頭に流れる。くそトサ尾め!

「赤葦くん!起きろ!目覚めよ!」

動いてバランス崩したら怖いから、とりあえず叫ぶ。が、

「ん。」

彼は返事だけをする。なんてやつだ!何と間違えてるんだ?!ハムか?!まさかな!

「あーかーあーしーくーんー!」
「・・・なに。」

何?とは?!
私は目覚めよ、と言っているのだ赤葦くん。へい!赤葦くん!へいへーい?!
お目覚めの時間だよ!部活は!いや、でも熱ありそうだから行かせちゃだめか。
なら尚更体温計。な?

「一旦起きて熱計ってご飯食べるの!」
「・・・うん。」
「返事するなら起きなさーい!」

叫んだものの、彼は離してくれない。
それどころか

「うるさい」

と怒られる始末。解せぬ。

「あのね?赤葦くん?話を聞いてよ?起きて。いや、起きてくださいお願いしま」
「ん。よしよし、いいこ」
「??!!」

っ!!!
後頭部を掴んで引き寄せられる。
本当に一体どうしたというんだ。
所詮は運動部には敵わないらしい。
頭からバランスを崩し、抱きしめられる形になる。
彼の顔の横ギリギリに頭が埋まる。

「あかあ」
「・・・ハム」
「ハムじゃねえし!」

耳元で囁かれてぞくっとする。
私あれだ、耳、弱点だ。
身をよじろうにも頭と肩に腕を回される。
あの、本当に勘弁してください。
心臓がばくばくいってる。
耳に息がかかって、身体がびくつく。

「っ、」
「じっとしてくんない?」
「いや、無理でしょ?!」
「秋」
「  」

さらば、宇多川。






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