ねことわたし | ナノ

天然系女子の誘惑?


「おいしい!」
「そう?よかった」

昨日に引き続き。
お邪魔します、と入ってきた赤葦くんに、今日は肉じゃがを出した。
ご飯は二杯おかわりをして、最後には手を合わせて「ごちそうさまでした。」と言ってくれた。

また、食費はメモしてください、と言われたけど、ははは、と笑ってごまかした。
そしたらせめてお皿は洗わせて、となぜか客人にお皿を洗ってもらい、今、2人でリビングにいる。
まだ、時間はある。

お皿を洗ってもらえるだけで感謝なのに、ご飯のお礼、と、駅前のケーキを買ってくれた。どれが好きかわからなかったから、と、ショートケーキとチョコケーキ、計2つ。

「じゃあ1個ずつ食べようよ!」と、提案したのは私。でもこれはお礼だから、と否定していた赤葦くんをスルーして、ケーキを出した。

ここのケーキは結構好き。どっちも好きだけど、なんとか赤葦くんに選ばせて、ショートケーキを食べる。

「美味しいよ。赤葦くんも食べよう?」
「うん。」

赤葦くんは短く返事をして、一口くちにする。その表情にあまり変化は見えず、美味しいのかわからない。


「おいしい?」


自分が作ったものじゃないのに、なぜか聞いてしまう。「ん」と短く返され、この人、本来は口数少ないんだな、と知る。


「チョコも美味しいもんね、ここのケーキ!」
「食べる?」
「いいの?!」


もう一口分をフォークに乗せた状態で聞く赤葦くんに、テーブルから身を乗り出して口を開ける。

「あー、」
「え?」

固まる赤葦くんに、口を開けたまま待つ自分。少しそれを見つめられた後、口の中に甘いものが入る感覚。


「んー!おいし!」
「・・・そう。」

それだけ答えて、フォークを凝視する彼に、残り数口のショートケーキをすくう。

「はい!赤葦くん!」
「え」
「ほら!あーん!」

私だけもらうのはフェアじゃない。よくえっちゃんともやるんだし、フォークを彼の前に持っていく。

「・・・宇多川さん。」
「ほら!はやくー!」

落ちたら気まずいじゃないか。はやく食べてください。猫になる前に。

何度か私とフォークを交互に見た後に、赤葦くんはゆっくり口を開く。
確認してからフォークを戻し、残りを食べる。
最高のデザートをありがとう!

「ショートケーキも美味しいんだよ!ね?美味しかったでしょ?」
「・・・うん。」



なんか赤葦くんのノリが悪い。



「もしかしてショートケーキ嫌いだったの?!ご、ごめんね、無理やり食べさせて。」
「いや、そうじゃなくて。」

彼は首を横に振った。
そして、相変わらずチョコケーキを見つめている。食べないのかな?


「食べないの?」
「え?」

また身を出して彼に聞く。これ、えっちゃんにはお行儀悪いってよく怒られるんだよね。
ちょっと近くなった距離で、赤葦くんは少し体を引く。それでも食べないの?と目で圧力をかければ、残りのケーキを一口で食べる。

それ半分くらいあったけども。

「すごい!一口で行った!」
「・・・水。」
「あ!はい!」

急いで水を注ぎにいく。
どうぞ、と渡せばなんとなく不機嫌な顔で水を飲んだ。変わってる。

「ごちそうさま!ありがとね赤葦くん!」

改めて返事をすれば、昨日も聞いたボンッという大きな音。
目の前にいた彼はいなくなり。あの重たい猫ちゃん。赤葦猫ちゃん。





「もう9時かぁ。」

赤葦くんで時間確認とかひどく失礼だけど。お皿洗うね、と声をかけてお皿をさげる。
そっかそっか、時間見計らって最後一口で行ったんだ。

2日と続く、久々の誰かとの夕食に、幸せな気分になりながら、片付けをした。






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