ねことわたし | ナノ

顎が好きらしい


「ぶにゃー」

嘘つき。
起きとるやんけ。

まだ食べていなかった赤葦くんに、急いでオムライスをつくった。
登校前にお風呂に入るしか手段のないらしい彼は、なんともラフな部屋着でやってきた。

まだ食べ足りなそうな彼に、おかわりを聞けば、「食費はメモしておいてください」と律儀なことを言われた。

そうそう、変身する時って、ボンって音と共に煙が出るの。で、気づいたら猫になってる。
んで、ね。
お洋服が無造作に散らかるんです。
つい、うわぁ、って言っちゃったんだよね。そしたら赤葦くん、「ぶにゃー」って。
本当すみません。たたむからどいてください。

「赤葦くんさ、寝ないの?」
「ぶにゃー。」
「おうふ」

日本語は喋らないのですね。
そうですよね、Cat nowですもんね。
お洋服の上に乗ったまま、こちらを見てくる。
ぜんっぜんわかんない。彼が言いたいこと。

「赤葦くん、お水とかはどうするの?」
「ぶにゃー。」
「あ!いる?いります?おっけー」

とりあえず、お吸い物入れに水を汲む。どうぞ、と目の前に水を置く。
しかし読みは外れたのか。その水を飲む気配は無い。

「・・・飲まない?」

っ何も言わんのかい!
あれか?返事しなかったら、否定、でいいんですか?ん?

「赤葦くん。」
「ぶにゃー」

よしよし!返事したらおっけーでいいのね?!しかしさ、こう、見てると・・・なんていうの。貫禄?すごいよね。
俺は貴様らの歳でいうならおじいちゃんやで、小童が。
とかそんな顔してる。メスだけど。

「その・・・からだ・・・動き辛く無い?」

・・・っ無い!無いですか!無言で見るのはやめましょう!怖いので!




テレビ見てるね。
と短く告げて、ソファを指差す。相変わらずぶにゃー、と告げてそこから動かない。
わかった。服は渡してくれないのな。畳むな。な、おーけー。

昨日見損ねた映画の再生ボタンを押す。生憎えっちゃんから、ねこ人間が出る、と聞いてしまったので、口を尖らす。
そういえばお菓子があったな、と一旦停止を押して、台所にまた戻る。

「赤葦くん・・・?」

まじですか、今眠るんですか。
さっきの体制とは変わらずだが、目を閉じている。呼びかけにも返事がない。
いや、なかなか返事してくれないけれどもね。

「あかーしくーん?」
「に"ー」
「ごめんなさい。」

寝言なのに。おこじゃないですか。
え、ないがしろの呼び方、嫌い?伸ばし棒呼び嫌い?あ か あ し ってほぼ母音があだから言いづらいじゃん。

寝たら起きないじゃんか。



・・・あ。
ここで寝るの?!
カウンターキッチンの前で?!
いやいや、悪くないけども。

「悪いわ!」

昨日みたいに私が先に起きたら、全裸狂がリビングにいるとか、逃げられないじゃないか!!お弁当作れないじゃん、おうふ、裸少年つらたん、とかなる。
毛布をかけるべき?いやでも床硬いじゃん?寝返りとか、仰向けになってたらどうするの?!私もうお嫁にいけないし赤葦くんも貰い手いなくなる!!


私はテレビをそっと消して、彼を抱き上げた。相変わらず重い。
赤葦くんが泥棒しないともやはり言い切れない(失礼)ので、彼は私の部屋に入れよう。
もう見てはいけない何かに汚されても・・・仕方ない。


テレビは自室でも録画してあるから、そこでみよう。あ、でも睡眠の妨げかな?イヤホンしよう。そう思いながら、長い階段を登る。
こんな重たいもの滅多に運ばない。こともないけど、カバンは肩掛けだから、耐えれるけど、抱えるとなるとまた別だ。引き腰になるもん。


よいしょ、とババくさい発言をし、なんとか抱きしめてからドアを開ける。
とりあえず重たいのでベッドに寝かせる。今布団かけたら暑いかなぁ。
こうやって見てると、普通の猫なんだよね。なんたって、重さと見た目はあれだけど、毛並みは最高。
でも、猫ちゃんの毛ってくっつくんだよね、毛布とか服とかに。


耳の付け根をつまむ。にー、という唸り声。

「・・・かわ。」

かわいい!
顎の下好きらしいので、指で軽くくすぐる。
小さくだがごろごろーっと喉がなっているのが聞こえる。

ああ、ねこかわいいなぁ。
動物かわいいなぁ。


犬、欲しいなぁ。


こうして30分ほど癒されたあと、自分の寝床はどうしよう、と頭を抱えるのであった。






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