ねことわたし | ナノ

非、現実的な毎日!



人生って発見の連続だよなぁ。
目の前で黙々とご飯を食べる赤葦くんを見ながら思った。
ねこまんまにしたほうがいい?と聞いたら人間だって言ってる、と怒られてしまった。
でも一応さんまと味噌汁。

よかった。お弁当朝作る派で。しかもお米は残ったらいつも夕飯行きにしてるので、ちょっと多めに炊いて本当によかった。
ご飯を作りながら聞いた話、いや不謹慎だけどね?このまま聞くって言えば諦めたように話してくれた。

彼は現実主義者?みたいで、普通はありえないよ、と何回か言っていた。
でも残念なことに、なんというか、慣れてしまった。


お父さんは有名な小説家で、ホラーから青春ストーリーまで何を書かせても大ヒット。名前が有名なんだろう。
確かにお父さんの小説は夢が詰まっている。まさか書いてる人が超嫁バカとは思うまい。ファンレターとかもたくさん来る。

毎日お父さんの本や、ファンタジー映画好きな母に付き合えば、自分の中の現実が麻痺してくる。扉を開けたら異世界!なんて信じて朝、部屋を出ることもある。
実際は朝からステーキを焼こうとする母がいるわけだけども。


「・・・しょっぱくない?」

食事中に聞くのもなんですが、赤葦くんは「おいしい。」とだけ短く答えてくれた。
これはとても嬉しい言葉。

さて、話は脱線してしまったが、つい先日、10年ほど飼っていた猫が亡くなってしまったらしい。10年って相当思い入れあるよね。相当の猫好きかも。だってパジャマめっちゃガン見してたし。
クールそうなわりに意外とかわいい人だ。

ショックな日々を送っていたが、数日前から21時丁度になると、猫に変身してしまうようになった、と。時間指定の少年探偵だな。
朝の5時には元に戻るみたいだけど、そこは現実的で、身体が縮む際に服は脱げると。
だから戻るときはいつも裸なんだとか。

猫になってしまう原因が本当にわからないみたいで、数日間、悩んでいるとか。
運動部らしいのだが、帰宅時間の問題で終わり次第ダッシュで帰るか、早退もした、と。
道端で変身したら困るよね、服持ってけないし。


「ごちそうさまでした。」

いただきます、のときもそうだったけど、両手を合わせて言ってくれる。律儀な人だ。お昼もそうしてるのかな。ちょっと見たいな。

昨日の段階では、一旦家に帰って、その後に猫になったらしいのだが、恐ろしく愛猫家の母が、今猫を見ると号泣してしまうため、見せられないと慌てて猫のまま出てきたらしい。なるほどむこうは猫バカか。

そこでリエーフと出くわしたと。リエーフ貴様。もともと知り合いの集団だったから、条件反射で逃げたらついてきたんだとか。振り切ろうと全力を出した時私がいて、更にリエーフに捕まりつまづかれた、と。


「猫になると眠くなるの?」
「すごく。」

確かに猫ってよく寝てる。そのときは猫体質だから、眠いのかな。朝も熟睡だったしな。

「今まではどうしてたの?」
「家で寝てたけど、母さんに見つかったし・・・また見られて悲しまれるのも、」
「お母さん思いなんだね。」
「そりゃあ親なんだし、悲しむようなことはしたくないでしょ。」
「そうだね。」

食べ終わったお皿を下げる。
さてこの後はどうしようか。

「今日はどうするの?」

またお母さんに見られてしまったら、どうするんだろうか。

「屋根で寝て、目覚ましで4時に一旦起きて部屋に戻ろうかな。」
「目覚まし消せる?」
「・・・。」

おおう。聞いちゃいけないみたいだ。
現に今日だって起きれてなかったよね、私起きたのちょっと寝坊して6時30分だったし。彼ぐっすりしてたし。
仮に屋根で寝て、戻ってしまったらだめだよね、公共猥なんちゃらだよね。

「それは、追々考えるとして・・・とりあえず学校行かなきゃ。」
「あ!そうだね!」

今からなら2限に間に合う。うちは最寄りだから、徒歩だけだし。
でも赤葦くんはどこなんだろう。
というか、何歳なんだろう。

「梟谷。」
「え!遠っ!」

少なくともうちからでは遠い。
梟谷って私立じゃん?もしかしていいところのお坊ちゃん?っていうか高校生だったのか。

「でもどうやって服とりに行くの?鍵も・・・持ってない・・・よね。」

私抱っこしたからわかるけど、首輪もそれ以外何も持ってなかった。

「・・・っ塀を・・よじ登る。」
「わんぱくか!」
「え?」
「ごめん、なんでもないです。」

わんぱく小僧か!
とか思ったけどその場のノリツッコミはだめみたいだ。そうね、そんな空気じゃないね。

でも、背も高いから、不可能ではないのかな。だって、昨日も窓から逃げたんだし、窓は開けっぱだろうし。

「でもここから遠くない?距離によっては学校すごく遅くなっちゃうよね。」

電車代とか、一旦貸すとして。
だってもうこの際仕方なくない?
私が拾わなければ、もしかしたら家に帰ってたかもだし。逆もあるけれど。
拾わずにどっか置いていったら、変な人にいじめられてたかも。だってもう見た目が。

何かのご縁として。出来れば猫になる瞬間は見たいけどね。好奇心好奇心。発見の連続!

「ちなみにここってどこら辺なの?」

赤葦くんの問いに、どこから答えればいいのだろうか。一応昨日の時間から計算して、変身時間も込みでそう遠くまで移動してないだろう、と考えると・・・区内だろうか。
区から始まる何番地、までをゆっくり言う。
最後まで言い切ると、赤葦くんは少し驚いた顔で、「ちょっとごめん」と慌てて玄関を出てしまった。
何かピンとくるものがあるのだろうか?少し遅れて出て行けば、呆れたような顔。

「どうしたの?」
「まさかとは思ったけど。」

彼は目の前を指差す。
つられて見るは、車1台分通れる道路の向こう側。向かいにある家。
漢字が難しいけど、アカアシってそう書くんだな。

「まじですか。」
「まじですね。」

2人して、なんとも言えないため息をした。







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