「げ、お前なに飲んでんの。」

夏もそろそろ終わろうとしているところ、今日の部活も頑張ったので、ご褒美にと愛してやまないドリンクを口にしていた。
すると前から鉢合わせた二口が、ゲテモノでも見るような目で見てきた。

「なに、ってチョコミント。」

ミントぎっしり!と書かれたパッケージを彼の目の前まで持ってくる。
眉間にシワを寄せながら、二口はまじまじとそれを見た。

「お前いつもそれ飲んでるよな、うまいの?」
「美味しいよ。」

すっきりする味わいに、チョコがたくさん入ってて、噛めるし甘いしすっきりだし、一体一度に何度美味しいんだよ、最高。

けれど二口は、うげぇ、と嫌そうな顔をする。

「歯磨き粉の味だろ!」
「全然違うし!」
「お前チョコミントばっかだよな!アイスも!」
「だってチョコとミントが絶妙なハーモニーを奏でてるもん!」
「どこのグルメリポーターだよ!」

ちょっとキレられている意味がわからないから、こちらもちょっと声を張り気味になってしまったが、私は悪くない。
好き嫌いが分かれるものだけど、どうやら奴は本当に嫌いみたいだ。
舞ちゃんとはチョコミン党同盟を築いていて、特に夏は探し歩いている。

「あのね!悪いけど、チョコミントなら何でもいいわけじゃないからね?!」
「はぁ?!どーでもいいわ!」
「アイスはもうもちろんオッケーなんだけどさ!最近ブームをいいことに、チョコミントパン、とか、チョコミントシュークリームとか、チョコミントプリン、だとか!何でもチョコミントつければいいと思ってさ!そういうの違うから!チョコミントメロンパン?なにあの色!グロいから!食欲減退だから!ちょちょいと手軽に飲めたり食べられる奴だから!飲んで、『はぁぁぁ。おいしぃ、すっきりするぅ。』だから、見た目グロすぎだから!それにプリンもさ!確かに美味しかったよ!でもあのチョコミントであろう上に乗ってるクリーム?多分まずいやつでしょ?そこのクリームだけがチョコミントならもうチョコミントってつけないでほしい!カフェもさ!アイス、とかドリンク、とか、決まったサイズで手頃なのがいいの!ケーキとかパフェとか、やっぱクリームが不味そうだし、ずっと食べたいわけじゃないの!程よいサイズ感なの!冷たいからこそのチョコミントなの!私、チョコミントがつくならすぐに手を出す女じゃないから!わかる?!」

一通り、最近のブームに対しての不満を二口に言う。二口はそれはそれはもう変人を見るかのような目をしていた。わかってる、ちょっと怖かったよね、ごめん。

だがしかし、ヒートアップしたのでこのまま引き下がるわけにもいかない。なんか謝るのは癪だ。とりあえず二口に同意を求めてみる。

二口は目を細めたまま、私の手の中にあるチョコミントドリンクを見つめるだけだ。

「な、なに?」
「・・・うまいの?」

聞いてくるわりには顔はすごく嫌そうだ。ここは私が大人になろう。美味しいよ、と先程と同じ返答をした。

「へー。」

せっかく質問に答えてやったのに、彼は空返事だった。失礼なやつ。

「一口くんねぇ?」
「嫌だよ!どうせまずい!とか言うんでしょ!好物だってわかってるくせに、わざわざ
まずいってディスるやつ嫌い。」

ああ言う人種ってなんなんだろうね。
人が好きだって言ってるものをさ、わざわざ嫌な言い方する人。嫌ならその話題に触れなきゃいいと思う。聞いてるこっちも不愉快なんだし、なんでわざわざ掘り下げるのか理解に苦しむ。

「はあ?!こっちからくれって言っといてそんな気分悪くなること言うわけねーだろ!!」
「ご・・・ごめん。」

なんだ二口結構いいやつ?残り半分もないチョコミントを差し出す。
彼はそれを受け取って、目を閉じて一気に飲み干した。

「って!ちょっとなにそのゲテモノ食す時の顔!全然顔がまずいって言ってるから!しかも全部飲んだでしょ?!最低!」
「うげ。じゃあ口でも言ってやるよクソまじい!よくこんなもん飲めるよな!!」
「あんた本当になんなの?!意味わかんないんだけど!!!」

やっぱこいつ嫌なやつだ!同じクラスだけどやなやつだ!顔だけだ!お前顔だけだよ!
ドリンクの容器を雑に奪い取る。・・・やっぱり空になってた。部活のご褒美だったのに!ちょっとずつ飲もうと思ってたのに!

「サイテー!ホント最低!」
「へーへーすみませんね。」
「なにその気持ちのない謝罪!本当にムカつく!大会近くなかったらぶん殴ってたんだから!本当む、がふっ!!」

ものすごい勢いで喋っていたら、突然口を押さえつけられる。なかなか勢いがあったので、バシンといい音がした。痛い。

「あ、わり。」

勢いには二口も驚いたみたいで、普通に謝ってきた。そして手をどかして口元を見ている。腫れてないか確認でもしているのだろうか。

もう一度二口を睨みつければ、口に何かが入っていることに気づいた。

「・・・すっ、」

すっぱ・・・。
噛めるものだったので、グミだったみたいだ。しかし猛烈に酸っぱいぞ。

また、二口を睨みつける。

「それ、俺の好物。」
「・・・酸っぱい。」
「お前の好物食べちゃったし。そのグミもラスイチだし、おあいこだろ。」

・・・全然おあいこじゃない。
今度は私が彼の好物を批判する番かもしれない。







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