今年は猛暑だった。
水分補給はこまめに、とか、必要のない外出はしないこと、とか、本当に暑かった。

しかし今週は違った。
気温はもちろん高かったんだけど、今までの感覚で麻痺してしまったのか、涼しく感じた。

「去年より暑いはずなのに、快適だよねー。」

部活の帰り道で、天童君がアイスを食べながら言った。

「それ、天童がアイス食ってるからじゃねーの?」

瀬見君は天童君にそう言いながら笑っていた。そんな二人の会話に耳を傾けていたら、川西君が私の肩を叩いた。

「ん?どうしたの?川西君。」
「先輩。もう夏終わっちゃいますよ。」
「え?・・・そうだねー。早いねー。」
「瀬見さんに告白しなくていいんですか?」
「えぇっ?!」

せっかく彼が小さい声で言ってくれたのに、全員が振り返るほどの大声を上げてしまった。告白?私が?瀬見君に?

「どうした?桃谷。」

不思議そうに瀬見君が聞いてきた。

「な、・・・なんでもないよ!なんでも、ない。」

首を振って否定して、川西君に同意を求める。川西君は「そっすねー、」とやる気のない返事をした。

「本当かー?すっげぇ驚いた声だったけど、川西になんかされたか?」
「う・・・ううん。本当になんでもないから。」

こちらに近づいてくる瀬見君に、苦笑いで返した。

「・・・顔。赤いけど大丈夫か?」
「え?!ほ、本当?!あ、暑いのかな?あはは。」

もう一度苦笑いで答え、川西君に目をやる。助けて川西君。瀬見君めっちゃ近い。
しかし彼は残念なことに白布君と談笑していた。

「はぁ?!暑い?熱中症か?!」
「え!いや、ちが」
「ちょっと待ってろ。」

瀬見君はそう言うと、肩にかけていたスポーツバッグを急いで降ろし、中を漁り始めた。
「確か残ってたから・・・」と彼は呟きながら、色々なものを出し始める。
ジャージや、タオルが地面に散らばる。

「ちょっと英太君、何散らかしてるのー?」
「うっせー。あ、あったあった。」

どうやら探していたものを見つけたみたいで、瀬見君は私のところに駆け足で帰ってきた。

「ほら、スポドリ。飲めるよな?」
「・・・へ?」
「脱水症状になったらヤバイだろ、ほら。」

彼はそう言って強引にボトルを渡してきた。
とても言いづらいんだけど、赤かったのは純粋にあなたとの距離が近かったからなんだけど・・・。とも言えず、力なくお礼を言って一口頂くことにした。
だってこれ、飲みかけだし。

「あー?鈴音ちゃん英太君と間接キスだー?いやらしぃー。」
「ぶふっ!」
「うおっ?!大丈夫か桃谷?!天童も茶化すな!」

飲んでいたものを思い切り吹き出してしまった。最悪なところを見られた。
瀬見君だけじゃなくて部員のみんなに。

「ご、ごごごごめんね瀬見君!新しいやつ買ってくるから!!」
「はぁ?!別にいーって!今のは天童が悪い!」
「えー?俺は悪くないよ、鈍ちんの英太君が悪いんじゃないのー?」

ねー、と天童君は私に同意を求めてくる。
私はそれに苦笑いをして、天童君を手招く。

「な、なにが・・・かな?天童君。」

ゆっくりと彼に聞けば、彼はいつものにやけ面で小さい声で言った。

「鈴音ちゃんが英太君のこと好きなの知らないの、英太君と工くらいだよ。」

天童君はそう言ってニヤニヤしながら私の肩を叩く。・・・いまなんと?
私が瀬見君を好きなこと、知らないの、
瀬見君と・・・五色君、だけ?

「う、うっそだぁ?!」

流石にないよ!牛島君とかすごく鈍感そうだし、というかそういうのは気づいてなさそうだし。

「なに言ってんの、わかりやすすぎデショ。太一ぃ、説明してやってー。」
「え、」
「うーす。えーと、ドリンクとかタオル渡すときに、少し震えながら渡してるとことか、みんなで帰るときは必ず瀬見さんの少し後ろを歩くとか、視線の先にはずっと瀬見さんがいる、とか。」

川西君が指を降りながら数えてくる。
嘘だ。ひそひそと、こそこそと見つめていたはずだ。だってかっこいいんだもん、セットアップはもちろん、サーブも、レシーブもブロックも。
何気ない会話で笑ってるとことか、面倒見がいいとことか、全部、全部。

なんて考えていたら、また顔が熱くなったのがわかった。

「恋する女の子は可愛いよねー。鈴音ちゃんはなおさらー。」
「そ、そんなんじゃっ・・・」

天童君はニヤニヤしながら頭を撫でてくる。彼らぐらいの背だと奥のちょうどいいんだろうな。

「また顔赤いけど大丈夫か?桃谷。」
「ひゃ?!」
「・・・なにビビってんだよ。」

瀬見君が不思議そうに顔をのぞいてきたので、つい驚いてしまった。
今一度彼の顔をまじまじと見つめてみる。

「・・・。」
「・・・桃谷?」

顔が整いすぎてるんだよなぁ。声もかっこいいし、髪型も、背も全部好きだ。

「大丈夫か?」
「あ、ごめ、大丈」
「熱はないみたいだけど。」

見つめすぎたし、慌てて謝罪を入れようとしたら、なにを思ったのか、瀬見君は私のおでこに手を当てた。

あ、これヤバイ。

「ちょちょちょ!英太君ダメだよ!!」
「は?なにが」
「あああ!鈴音ちゃん!しっかりして!」
「桃谷先輩が倒れた。」
「大丈夫か!桃谷!」
「英太君の鈍ちんばかー!」







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