「はぁぁぁぁぁあ〜〜〜。」
「うわっ?なんだよ桃谷。」


終わった。私の青春終わった。

そうだよね、あんなにかっこいいんだから、彼女の1人や2人、いるよな。
もてるもんね。隣のクラスの飯島さん、狙ってたもんね。

「おーい、桃谷?」
「つい聞き耳を立ててあっさり音駒に決めた中3の私を呪いたい。ねえ!呪いたいよ!夜久!」

「・・・話についていけないんだけど。」


夜久衛輔、高校生活3年間、奇跡的にずっと同じクラスの男子。いや、小さい系男子。

「お前、なんか失礼なこと考えてるだろ」
「そういうの、被害妄想って言うん・・・いった!暴力!」
「いい精神科教えてやるから病院いけ?」

こいつ・・・可愛い顔して、暴力的サディストなんだよな。
付き合いが長くなると、扱いが雑になるタイプ、な。

「で、どうしたんだよ?」


「・・・彼女、いるみたい。」
「は?」
「諦められなくて高校までついてきちゃってさ!まだ大丈夫!なんて、本当は怖いだけで、ずるずるずるずる引っ張って。実は彼女いました。とか、私片思い乙ー!」

今年こそは今年こそは、とシミュレーションしたのに、怖気づいてこんなに引きずってしまったこと、今、身を持って後悔。

「何?お前、好きな人とかいたんだ?」
「いるよ!中学からずーっと!バレンタインとかも、さりげなく机にinしたよ!告白は無理!だってかっこいいあの人の目に、私なんか映るわけないし!」

もちろん名前なんて書いてない。直接ごめん、とか、言われたくないし。
逃げまくっている。大得意。

「・・・黒尾君。」
「え、桃谷、黒尾が好きなの?」
「・・・・・・。」
「・・・照れるなよ。」

名前を聞くだけで、胸が高鳴るなんて、私、重症だ。あぁ、諦めなきゃいけないのに。

「おーい、夜久!」

何年も聞いた声が近づいてくる。
高校でやっと同じクラスになったんだ。
慌てて教科書に目をやる。うわ。目の前にいる。


「今日の英語当てられるから教えてくれ。」
「はぁ?またかよ。」
「いーじゃねぇか。減るもんでもないし。」

「・・・あ。」


会話の途中で夜久が声をあげる。そして2人が黙り出す。変なとこで話が終わったな。
横目で見ちゃえ。

「えっ・・・。」

超見てる!この人たち超見てるよ!
黒尾君すごい見てる!

「桃谷に教えて貰えば?」
「それいーな。頭よかったよな、桃谷。ヨロシクー。」
「え・・・え、?」

なんだか知らないが、黒尾君は目の前の椅子を借りて、こちらを向いて座り出した。

夜久はどっかに消えた。行かないで!そういうの無理!こういうの辛い!




「ここなんだけどよ。」

「・・・。」

うわ・・・顔近いな。その距離約15センチ。
どうしよう。顔赤いのバレちゃうかな。

「顔あけーじゃん。」
「あ、あ、赤くないっ!です!」

普通いうかな?ありえないんだけど、かっこいい!もう!


「え、あっ、えっと・・・こ、こここ、ここがこうでっ!」

何年も片思いをして、話しかけるタイミングがなくて、どうせ、クラスの冴えない女子なんだろうな、自分で言ってて悲しいな。


「で、でもいいの?」
「何が?」

心臓止まれ!・・・止まれ!
諦めるんだ。終わったんだ!

「か、彼女さんに見られたら・・・。」
「彼女?誰の彼女?」
「く、黒尾・・・く・・・の彼女!私みたいなのと話してて、」
「俺、彼女いねーけど?」

「え?」
「むしろ桃谷の方こそ大丈夫か?彼氏に怒られねえの?」

・・・彼女じゃない?なんだ、彼女じゃないのか。・・・よかった。


「わ、私はいないよ!彼氏なんて!」
「知ってる。」
「・・・え、」


黒尾君に目をやる。ニヤリ顏。たまに見るあの顔。

「チョコレート、そっと入れるくらい奥手だもんな。」

「え」

「年々グレードアップしてるし。」

「あの」




なにを言ってるの?


「去年のブラウニーは美味かったな。」

「・・・えと、」
「来年は返すからさ、」
「・・・黒尾君。」


「俺、もう待たないわ。」



黒尾君は椅子から腰を上げ、顔を近づける。そして囁く。





「好きだわ。」



あぁ、もう。

ずるい人だよなぁ。





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