「お前、スカートが短すぎんじゃねーの。」

昼食の時間、食堂へ急いでいた時に、すれ違い様に京谷に言われたセリフ。
一瞬誰に言ったのかと思ったのだが、生憎その場には男子しかいなかった。立ち止まって京谷に向き直る。

「え?」
「足出しすぎなんだよ。」
「普通だよこれくらい。」

そう答えれば、ジロリと睨まれた。
こんなこと言う奴でもないし、間柄でもない。
もう一度自分の格好を見直してみたが、そこまで短くない。

「別にパンツ見えてるわけじゃないし。」
「ああ?」
「なんで怒ってんのよ。」

思ったことを言ったまでなんだけど、お気に召さなかったのか、盛大に舌打ちをされた。

「とにかくみじけぇんだよ、直しとけ。」

それだけ言って奴は教室に戻った。
京谷にとって、何か都合が悪いのかもしれない。一応思春期の高校生だし、生足は刺激が強いのだろうか。
だったら他の女子にも言うべきではないのだろうか。
まぁ京谷に何か言われても、みんな怖い、とかで終わるのだろう。
彼の言葉を右から左へ受け流し、スキップで食堂へ向かった。







「おい。」

時間が経って部活終わり。
玄関で靴を履き替えていたら、また奴に声をかけられた。

「なに?」
「直ってねぇぞ。」

また不機嫌そうな顔で京谷に睨まれる。
再度確認するが、別に短くない。

「だから普通だってば。」
「普通じゃねぇ。」

相変わらず睨みながら言われ、少し腹が立つ。でも冷静に考えれば、こいつデフォルトこの顔だ、と気づく。
損してるな。

「別に良くない?」
「良いわけねーだろ。ジャージはけ。」
「はぁ?!やだよ!暑い!」

やけに食いかかってくるな、京谷。
全力で否定をすれば盛大な舌打ちが返ってくる。こっちがチッて感じなんですけど?
今までずっとこの長さなんですけど?別に言われる短さじゃないんですけど?
京谷は乱暴にエナメルバッグを置いて、中を漁る。取り出したのは指定セーター。

「ん。」
「はい?」

そして乱暴にこちらに押し付ける。
その勢いの強さにとっさに受け取ってしまう。

「巻いてろ」
「セーター?なんで」
「いいから巻いてろ」

再度大きめな舌打ちをしながら言われる。そう何度も舌打ちされると腹立つんだけど京谷さん。口にこそは出さないでおく。
渡されたセーターを広げる。でかい。

「なんで巻かなきゃいけないの?」

黙って巻け、と言われるのがオチだが、また口にしてしまう。
当の本人は顔で不機嫌さを教えてくれる。

「意味わかんない。」

ボソリと呟けば、ああ?と不機嫌な声とともに再度舌打ちされる。今度殴ってやる。

「わかんねーのかよ。」
「わかんないね。」

これ、キリないんじゃないかな。私が折れない限り。なんて思った矢先、京谷に上から下まで見られる。

「・・・わかんねーのかよ。」
「・・・わからない。」
「存在R指定がウロウロしてんだらか、気にしろっつってんだよ。」

存在R指定?
なんとなくあの人かな、とか思ってしまうのも失礼だが、仮にあってたとして、発言者はさらに失礼だろう。

「どっちのこと言ってんの?」
「アホ面の方だよ。」

・・・どっち?!
仮にあいつだとして、・・・いやいや、あの人かもしれない。これ以上の詮索は私が混乱するだけだ。もう何も言うまい。

「わ、わかった。」

押しに負けた感じになるが、とりあえず今日は良しとしよう。







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