「どうかね?」
【血液戦隊ネコレンジャー!】そう書かれた紙を見せながら、鈴音は山本の顔を見た。
「どうかね?じゃねーよ!なにがどうなんだよ!どうしろってんだよ!」
だん、と部室の机を叩く山本。
それに驚くのはゲームをしていた孤爪。
「・・・虎、うるさい。」
「いや、研磨、これ読んでみろって。」
「いいよ、めんどくさい。」
嫌がる孤爪に無理やり紙を渡す。
「・・・なにこれ。」
「文化祭の案にどうかな!」
「無理」
「うわー。やだ、とかじゃなくて無理かぁ。」
鈴音に紙を返しながら、孤爪はゲームに視線を戻した。
これからボス戦だから話しかけないで、と付け足して、部室の端に行く。
「えー、研磨ならオッケーくれると思ったのに。」
「1番に嫌がるだろ。お前の研磨像どうなってんだよ。」
「・・・うわ。」
「わー、福永久々に声聞いたけど開口一発めがそれ?」
鈴音の後ろから紙を覗き込んで、福永が呟く。
「どう?福永?良くない?」
「・・・」
「おーい?」
「・・・ない。」
福永の返事を目で訴えれば、とても小さい声で答えた。振られた。
「でも諦めな!どんなに嫌がっても3年がオッケーだしたら君らに拒否権はないんだよ!」
「誰がオッケーすんだよこんなの。」
なぜか引く気のない鈴音に呆れながら山本は告げる。
「そんなん主将に決まっておろうに!」
声を張り上げて言えば、呼んだと同時に主将が入ってくる。それに続いて他の三年が入ってくる。
「つーか鈴音、ここ部室だぞ。着替えるから一回でろよ。」
夜久はそう告げて鞄を置く。
「えー、大丈夫ですよ。興奮するような体つきの人いませんし。」
着替え始めている山本や福永に目線を寄越しながら、無い無いと否定する鈴音。
「お前の基準は興奮するかどうかなの?女子なんだから一回出なさい。」
「きゃー!男の人の裸恥ずかしい!」
夜久がもう一度言えば、今度はわざとらしく顔に手を当てる。
「可愛さを感じない、でも長年の付き合いで30点てとこだな。」
「低っ!長年の付き合いで低すぎる!黒尾冷たい。」
「そこ、呼び捨てタメ口マイナス40点。」
「わあ!マイナスになった!嘘ですぅ黒尾センパイ!」
「はいわざとらしいー。上乗せマイナス50ー
」
黒尾はそう告げて鈴音の額にでこぴんをかます。
いて、と小さく声を上げる。
「あー!先輩暴力だぁ!暴力はいけませんよ先輩!」
「今更先輩先輩言うな。」
「痛っ!」
黒尾はもう一度鈴音にでこぴんをくらわす。額を抑えながら鈴音は一つ上の先輩を睨みつける。
「おーおー?反抗期か?その顔好きだぜ。」
「気持ち悪い!」
「おい堂々と言うな。」
「その辺にしておけよ、黒尾。」
もう一度でこぴんをしようとする黒尾を海が制す。へいへい、と黒尾答え、ジャージを脱ぎ始める。
「動揺しない鈴音もあれだけど、そのまま着替える俺らもやばいよね。」
海はそう告げて鞄を置いた。
「それなに?」
そして鈴音が持っていた紙の存在に気づく。【血液戦隊ネコレンジャー】の紙をまじまじと見つめる。
「ぶっ、」
「おおう海が吹いた!」
「なになに?どした海。」
静かに読んでいた海が突然吹き出し、他の三年が紙を覗き込む。
「・・・はぁ?なんだよこれ。」
「我ながら傑作だと思うんですがどうでしょう。文化祭でやりましょうよ。」
「やらねーよ。」
何故か誇らしげな鈴音に対し、夜久は深くため息を吐いた。
「なになに、
『ガンガン止めるぜ!ゲスブロック!黒尾レッドぉ?』
ゲス?それ俺じゃなくね?」
「いやいや、ぽいよ、ぽい。ちなみに推測の方じゃなくて顔だから。」
「ゲス顔ってか。」
とことん可愛くない後輩を見下ろす。
「そう、そういう顔だよ。ブロックの時悪い顔してんじゃん。」
「ミドルだからしゃーねーじゃん」
「またまた!んなこと言ってたのしいくせに!」
「・・・お前は俺をなんだと思ってんの」
ひひひ、と黒尾の脇腹を突く鈴音。
「うわ・・・汗だ。」
「部活終わりなんだから仕方ねーだろ。つーかセクハラ。」
「そんなこと言って超絶可愛い美少女がやったら喜ぶくせに!」
「そうな。美少女なんていないから完全にセクハラだな。」
「勘違いしないでよね!誰が黒尾の身体なんて触るもんですか!」
「触ってんじゃねーかよ!」
「うるせえよお前ら!」
黒尾の背中に蹴り、鈴音の頭にはたきをしながから夜久が怒鳴る。
「芝山たち引いてんだろ!早く着替えた部室閉めて帰るぞ!」
「夜久先輩が1番主将っぽいー。」
「はいはいありがとう、あとそのネコレンジャーは脚下。」
冷たく夜久は告げて、孤爪に「鞄」といい持たせる。
「えー、やりましょうよー!鈴音先輩が授業サボってせっかく考えてくれたんですよ!『獅子のように気高く!蛇のようにしつこく!灰羽レッド!』」
「うるせ!授業サボるなんて尚更ダメだっつの!つーか全員レッドじゃねーか!」
「だって音駒だもん!」
「鈴音は黙ってろ!」
リーダーは夜久先輩にしよう、と鈴音は思い、メモを取り直すのであった。