「桃谷!」
「んー?」
「10月10日って、いい響きだとおもわねえか?!!」
「・・・え?」
「10月10日ってなんの日かわかるか?!桃谷!!」
「え・・・体育の、日?」
「違うな!俺の・・・誕生日だっ!」
「そ・・・そうなんだ。おめでとう・・・?」
「さんきゅ!!また当日言うからな!頼むぞ!!」





そう言われたのが3日ほど前。
西谷君とは、今年から同じクラスになった。
名前は前々から知っていたのだが、話すようになったのはつい最近のこと。
周りと楽しく騒いで、授業中は寝て、部活には全力で。まさに男子高校生だなって感じ。
話すと言っても、挨拶や借り物程度で、それと言った趣味の話などはしない。
だから本当にクラスメイト、という感覚で接していたのだが、あまりにも突然言われたので、その時は動揺した。
でもよくよく考えれば、席が今隣だし、彼の性格上喋りたいだけなのかもしれない。

誕生日をアピールされてしまったので、何かプレゼントを渡すべきだったのだろうか。
そこまでの間柄じゃないと思うんだけど・・・。

そもそもまた当日に言う、とか、今日祝日で学校お休みじゃん。確かに部活で来るけど、そんな偶然のように出くわすだろうか。


「お!桃谷じゃねーか!ちっす!」

・・・出くわした。
私は陸上部なのだが、自主的に部活前に学校を3周している。今日はいつもより早く出てきたのだが、なるほど。彼はこの時間に来るのか。

「まだこんな時間だぞ?はえーな!何部だ?」
「陸上部だよ。いつも始まる前に軽く走ってるの。」
「まじか!やるな!桃谷!!」


なんでいちいち力強い言い方なのか。
私朝はどちらかと言うと弱いから、こう言う騒がしい人はちょっと・・・朝はね。

「ところで西谷君。」
「おう!どした!」

こんなに声を張り上げられているのに、腹が立たないのは、きっと彼が小柄なせいだろう。これで170オーバーだったら間違いなく舌打ちしてた。故に仲のいい坊主の人だったら完全に舌打ちだ。


「お誕生日おめでとう。」

簡潔に告げる。いや、これしか伝えることはないだろう。

あ、彼から言うって言ってたのに、私が先に伝えてしまった。
しかしアピールしてきた当の本人は目をパチクリさせていた。


「すげーな桃谷!!何で俺の誕生日知ってんだ!サンキュー!」
「・・・え、だって西谷君が言ってきたじゃん。」
「そうだっけか?最初に祝ってくれたのがお前だ!ありがとな!」


なはははは!と豪快に笑い、二の腕あたりをバンバン叩く。やめて、軽くセクハラだよそれ。
やっぱりアピールしたかっただけだったのか。隣の席になったことを恨もう。

「なにか、渡そうかと思ったんだけど、何も浮かばなくて。ごめんね?」
「あ?いーっていーって、そんなつもりじゃねえし!」

そう言って西谷君は満面の笑みで笑う。
・・・この人、意外と男前な性格してるんだな。背が低いだけで。・・・身長的な理由で、女子から可愛い対象にされてるのか。お気の毒に。


「・・・あ。でも、今言ったらなんかくれんのか?プレゼント。」
「え・・・まぁ、私に可能ならば。」
「今度の休みの時間俺にくれ!」


間髪入れずに言ってきたので、つい「ぐ、」と唸ってしまった。休みの時間あげてどうする。勉強か?勉強会しようってか。
勉強会なら進学クラスの方がいいのでは?


「いいけど・・・なにするの?」


それこそ本当に時間が合えば、だが。
今バレー部忙しくない?たとえ休みあっても自主練しない?この人、中学では有名だったみたいだし。

「・・・ぶっちゃけるとな。」
「あ。はい。」
「俺、桃谷のこと好きなんだ!」
「あ。はい。」

日常の会話の中で言われるそれ。

「は?!!」

今、さらっとすごいこと言わなかったか?!
あれか、友達的な好きか?!そうか!そうなのか!習性か!習性的なあれか!

「なんつーのかな。桃谷・・・可愛いよな!」
「え。いやいやいや!」
「でもあんまり会話しねーし!先ずは一日俺にくれ!そんで俺を知ってくれ!」

いやいやいや、急展開が過ぎるし、なんだこの屈託のない笑顔。

「彼氏いないだろ?いなかったよな!」
「い、いないけど。」

気になる人もいないから。
そんなこと言われても、告白のオーケーはできないぞ。

「じゃあ予定わかったら教えてくれ!」
「いや、でも、西谷君の気持ちには答え」
「取りこぼしなく!俺を知ってくれよな!」

聞けよ!
押しがすごいな!おい!
きちんと最後まで聞いてくださいな、本当に。

「じゃ、部活頑張れよ!最高の誕生日だ、サンキューな!」
「いや、ちょっと、待っ」


西谷君は私の言葉など聞き入れず、じゃーなー!と手を振って走って行ってしまった。




猪かよ、と内心呟いて、次の休みを考えながら、私は足を進めた。




猪突猛進ボーイ
(ノヤッさんなんか嬉しそうだな!) (おう!今日はいい日だぜ!)






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