バレーバカ。きっとそれは彼のためにある言葉だと思う。
「飛雄、帰ろー。」
バレー部集団が帰るのを確認し、彼がいないことに気づく。またか。そうだよね。
わかってはいるけど、一応身近にいた山口に声をかける。どうやらもう少しやらせてくれ、と自主練をしているらしい。
主将さんは止めたらしいのだが、武田先生がokを出したらしく、まだ体育館。
多分、まだ、やる。
やつを連れて一緒に帰るのが、幼馴染である自分の役目。1人夢中でサーブを打ち続けるこのバカに声をかけた。
「ああ。」
返事だけは早いこの男。言葉とは裏腹に、ボールを手にする。
「いやいや、だめだから。帰るよ、飛雄」
「おう。」
いや、だから。
ボールを高くあげる。そしてうちこむ。なるほど、まだですか。いつもそうだ、このイエスマンが。
時計を見る。まだ、まだだ。
邪魔にならないように端に座る。
中学の時、バレーに夢中になりすぎだ飛び雄は孤立した。
チームメイトからつけられた名前は自己中の、『王様』。最後にはコートから外された。
その苦しさ、わからないわけじゃない。
正直、烏野がすごく合っているのもわかる。
相棒だって出来た。
「・・・。・・・帰ろうよ。」
最強のバレー馬鹿。悪いことじゃない。そこがやつのいいとこだし、やつらしい。
「わり、あと10分。」
嘘つき。
きっと高校もバレー馬鹿だ。
下手したらずっと。
スポーツに熱中するこはいいことだ。
いいことだと思う。
「ばか。ばかとびお。」
バレー馬鹿はきっと気づかない。
気づいてくれない。
気づいても見向きもしない。
ばーか、ともう一度呟いて、
結局30分。満足するまで待った。
まちぼうけ(わりぃ、待たせた) (本当だよ!馬鹿飛雄!!)