「私たちってさ、」
「うん。」

テストが近いので、桃谷さんの家で勉強会になった。ともに進学クラス、ということもあり、前回の田中や西谷みたいに頭を抱えることもない。
かれこれ2時間は無言でやっていたのだが、桃谷さんが口を開いた。

「・・・付き合ってるんだよね?」

少し恥じらいながら桃谷さんは問いた。先月から、お付き合いさせていただいている。

告白は彼女から。今思えば大会だって毎回来てくれたし、大地さんの代理の時なんて、泣いてしまっていた。
それも込みで、好きだなぁと思ったし、彼女から告白して貰えるなんて、この上ない幸せだと思った。

「・・・うん。そのつもり、です。」

改めて問われると、とても恥ずかしくなるし、彼女は真っ赤になっている。時折こちらを見ては、照れ笑い。

「え、へへ。特に、理由はないんだけど。」
「う、うん。」
「幸せだなぁ、・・・って。」

もし俺が西谷だったら、完全に抱きしめてた。いや。下手したら。いやいや、
とりあえずふくらはぎつねっておこう。ニヤニヤなんてしてみろ、引かれる。

付き合うと更に好きになるんだな。

「そ、それでね、縁下くん、」
「あ、う、うん!」

西谷風ならば、縁下くん、じゃなくて力でいいぜ!!とか言えるんだけど、いかんせん、そこまでの勇気はない。

なんとなーく俺から鈴音ちゃん、・・・ちゃん?鈴音?って呼んで、そのまま力くん、的な。



「鈴音って・・・呼んで、欲しい・・・の。」

「・・・え?」

まじですか。そ、そんなさらっと言っちゃうかな。

「ご、ごめんねっ、嫌だったら全然このままでいいの。」
「いや、嫌とかじゃ、ないけど・・・。」


桃谷さんってそんなに大胆だったっけ?いや、まだ付き合って日も浅いんだ、知らない部分だって山ほどあるさ。

「好きな人に、名前で呼ばれるって・・・特別、な、感じ・・・する・・・から。」
「・・・っ、」

まじか。好きだわ本当に。何この人可愛すぎかな、可愛すぎだわ。
いやいや、俺の葛藤どうしてくれよう、多分抱きしめたらこの子ショートする、俺もショートする。


「だめ・・・かな?」

アウト。ノックアウト?ぞっこんラブ?骨抜き?全部当てはまる俺もうボッコボコだよ。





「だめなわけないでしょ、

                             ・・・鈴音。」


耳が赤くなってしまうのはもう自分でもわかってるから隠さないし、それ以上に鈴音、の、方が赤いから、結果オーライ?だろう。

この幸せを誰かに自慢したいけど胸に秘めておこう。


「ありがとう・・・ち、・・・ちから、くん。」


畜生、俺明日死んでもいい。



I Cherish You
(・・・なんか恥ずかしいね)   (そうだね)



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