「あ、キンダー!」

職員室に寄った帰り、最近やたら話す一つ上の先輩と会った。委員会が同じということで、よく話すのだが、最初は散々だった。

「初めまして、桃谷鈴音です。君は、らっきょ村つめ太郎?」
と中々に酷い呼ばれ方をした。若干かすってる部分があったが、全力のボケだと信じている。


「ねえねえキンダー元気?」
「あ、はい。それなりには。」
「ひっっっっく!!!」

年上の女性というのは未知で、少し知的で近寄りがたいものだと思っていたが、三年生の先輩(男ではあるが)たちが中々子供っぽいので、俺の理想が高すぎたのかもしれない。
少なからず目の前にいる先輩は、同い年のテンション、下手したら中学生。

理想と現実は違う、というのはこういう時に使うのだろうか。

「テンション低いよ、キンダー!」
「す、すみません。」

何かと会うたびに「キンダー!」と手を振ってくる。それは遠近どの距離でもそうだ。おかげで周りの目がこちらに集中するし、及川さんや矢巾さんがうるさい。

どうやら先輩は中々人気があるみたいだ。
しかも拒まれる方がテンション上がるらしい。及川さんは逆にフルシカトされるとか。・・・国見とか紹介したい。

そして全力で嫌がる顔が見たい。
でも友人として、ここは自分が犠牲になろう。


「聞いてよキンダー。昨日焼肉行っちゃった!」
「そうなんすか?いいっすね。」
「玉子クッパ頼んだの。」
「は・・・はぁ・・・?」

最後に頼んだのだろうか。
先輩はそれだけ言って笑顔でこちらを見つめてくる。何も言わずに。

「・・・食べきれなかったんすか?」

笑顔の意図が全くもって理解できない。えーと、返事がわからない。

「私猫舌じゃん?」

知らねえよ。

「放置したらさ。汁なくなってパッサパサでね。」
「は、はあ。」

そう言ってまた笑顔でこちらを見てくる。やべぇ、全然わからん。

「玉子スープ頼んで汁足したの!」

玉子スープって言うのなら、汁もスープって言って欲しかった。なんとなくだけど。
先輩はいつも話したいことだけ話してどっかに行ってしまうので、是非、早くオチをお願いします。

「結局半分でお腹いっぱいになっちゃって、弟に食べてもらったの!」

そりゃあ米膨らんでるんだし、ていうか1人で食ってたのか。先輩意外と大食いなのか?
デザートは別腹って言うらしいし、大食いなんだな。残してるけど。

「終わり。」
「え?終わりですか?」
「そうだよ。焼肉いこって話。」


俺に残り物を食えってのか。

めちゃくちゃだな、この人。

「Kinder困ってる?困ってる?ひひっ!」

どんな笑い方だよ、本当に先輩だよな?敬って・・・いいんだよな・・・?
この人めちゃくちゃ満足そうだけど・・・。

「じゃあねー、キンダー!」

先輩はそう言って、肩辺りをとんとん叩いて歩いて行った。


たぶん、またこんな話するんだろうな。


でも、

不思議と嫌ではないんだよな。




あきない







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