「先輩!茂庭先輩!」
「ん?どうした?」
「鈴音って呼んでください!」
「え。」

戸締りやら雑用やらをしていたら、桃谷さんと2人で帰ることになった。
桃谷さんは頑張り屋で、ここまでで良い、と言ってもそれ以上やってしまう。
残りは俺がやるよ、と言ったのに半ば強引に手伝ってくれた。おかげで予定よりも早く終わったのだけれど。

さすがに1人で帰せない時間になってしまった。家はそんなに遠くないらしいので、送るよ、なんて俺にしては中々勇気を出した。
人懐こくて、努力家で、女子力も高い。
こういう子モテるんだろうなぁー。

ナチュラルに名前呼んでくれとか言うし、

ん?


「え?」
「鈴音って呼んでください!私、名前で呼ばれるほうが好きなんです。」

少し恥ずかしそうに桃谷さんは言う。女の子を名前で呼ぶなんて、したことないし、そんな親密な仲でもない、けど。

「えー・・・と。」
「あ!そうか!フェアじゃないですもんね!」
ぱん、と手を叩いて、首をひねる。そして数秒。
「・・・桃谷さん?」
「要先輩っ」

音符マークが付いている、というのだろうか、こういう事、経験がないからついドキッとしてしまう。
違う違う、この子はそういう子。

「要先輩!ほら、鈴音、でお願いします!」
「い・・・いや、無理。」

そう言ってしまえば、まるでしょぼくれた犬のように悲しそうに下を向く。


「要先輩・・・私の事・・・嫌いなんですか?」
「い、いや!そんな事ないよ!す、すごくがん」
「私も大好きです!」

「・・・・・・へ?」


なぜか嬉しそうに言う桃谷さん。
その言葉の意味を知ったのか、俺の言葉を理解したのか、そのままの状態で見る見る赤くなる。


「・・・先輩、何て・・・?」
「す、ごく、頑張り・・・や・・・で」
「はぁあ・・・あああ、い、あ。い、い、わ、忘れてください!今のわ、わ、忘れてくださいっ」
「へ?!あ、はっ、はい!」

涙目になりながら肩を揺らしてくる。といっても力はそんなないから、揺れないけど。

「わ、忘れてくださいね!私が大好きって言った事!」
「え、え・・・う、うん、」
「あああ!また言っちゃった!」



ああ、うん。これ、ときめくわ。





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