それは木曜日の夕方だった。

「あ!高伸君だ!」

部活が遅くなってしまい、急ぎめに駅へ向かっている最中だった。今日はバイトが無い日だけど、DVDを見ると決めていた。
急げば急いだ分観れる時間は増えるのだし、その足取りは軽やかだった。

商店街に差し掛かった頃、背の高めな男子の集団が前を歩いていた。
ぞろぞろと、 ゆっくり歩いてるその人達は、道に広がってるわけじゃ無いんだけど、通るのには少し勇気がいる。

私と頭2個分、下手したらもう少しあるだろうその人達は、騒がしいとまではいかないが賑やかだった。

伊達工業の人かな。
伊達工業には1人知り合いがいる。いや、知り合い、というには図々しいだろうか。
バイト先に、高伸君という男の子がいる。入ったのは私が先だけど、彼は男の子だし、とても背が高いのね、仕事をよく助けてもらう。

大学生の先輩とかは、背が低くて取れないからお願いすると、毎回からかってくるから嫌なんだけど…。
高伸君はそんなこと無い。無口で迫力があるけれど、内面は違うのだろう。
伊達とうちの女子校は以外と近くて、いつか会うかなー、と思っていたけど、それが今日だったみたいだ。
少し距離を置いて歩いていたけど、見慣れた後ろ姿に、つい大きな声で呼んでしまった。

「ん?知り合いか?」

隣にいる金髪の人が周りに聞く。いいえ、と皆が答える。先輩なのかなぁ、なんか貫禄あるなぁ。
「あっ…ご、ごめんなさい。知り合いがいたので…つい。」

でも背が高い=迫力がある。
何人もの視線を浴びながら、目線を右のケーキ屋に向ける。あ、チーズケーキ美味しそう。

「たかのぶ…って、」
「青根っすね。」

今度は黒髪の人に、茶髪の人が答えた。
髪の色で判断してるけど気にしないもん。
その茶さんの言葉に、皆高伸君を見る。
高伸君はぺこりとお辞儀をしただけで、なにも喋らなかった。
あ、ということは、バレー部の人たちなのかそうだよね、集団だし。高伸君バレー部って言ってたし。

「えっ、青根の知り合い?その制服奥女だよね?」
「あ、はい。」
「なにー?青根の彼女、とか?」
「いっ!いいえっ!同じバイト先なんです!」
「ちっちぇー。ありんこサイズじゃん。」
「そ、そこまで小さく無いですよ!」

ひゃああ、運動部のテンションついていけないなっ。高伸君だけが口を開かないで、他の人はお喋りだなぁ。うちの高校そんな珍しいのかな?何の変哲も無い女子校だよ。

「まあまあ先輩。折角だから二人きりにさせてあげましょーよ。」

高伸君の隣にいたふたくち、と呼ばれた人が言った。でもこの楽しそうな顔は、大学生の先輩達と同じ匂いを感じるぞ!
楽しいんだな!遊んでるんだな!高校生め!

「そうだな。邪魔するのもあれだし…青根、俺たちいつものとこで食ってから帰るから、とりあえず連絡だけくれ。」

さすが茂庭さん!とふたくちさんは言って、皆で歩いて行ってしまった。
何度かこちらを振り向きながらも、ひそひそと話し声をしながら、バレー部?の人たちは歩いて行った。

「バレー部の人たち?」

高伸君はうなづく。

「ごめんね、呼び止めちゃって…もしかして皆でご飯だった?」

高伸君はうなづく。

「まじか!ごめん!ただ呼んだだけだから、用事はなかったの!ごめんね!」

高伸君は首を振ったけれど、せっかくお食事だったのに、本当に悪い事をしてしまった。
しかし無口な人だとは思っていたけど、無口すぎる。
寡黙?いやいや、健全な高校生だし、運動部だし、もっとないのかな、しゃーす!みたいな。

「じ、じゃあいくね、高伸君。」

私なんかと喋るより、部の人と早く合流しなきゃね。

「またバイトでね、高伸君!」

どうでもいいけど、高伸君、呼びはバイトが名前呼びだから。週に一回会うか会わないか位なんだけど、私の中では仲がいい方。
じゃあね。と手を振って、歩く。

「…ご飯。」
「ん?」
「ご飯…行こう。」
「でも、バレー部の人達は?」

そう聞けば!高伸君は勢いよく首を横に振る。高伸君、目力強いから、たまにびっくりするんだけどね。

「…私でいいの? 」
「…鈴音…だから…いい、」
すっごく背が大きいのに、声はすごく小さかった。

「うん!行こう!」


バレー部の人に勝っちゃった!
…なんちゃって。





これが恋だと気づくのは、また別の話。






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