のううた | ナノ

決して迷子なんかではない


「いやぁ、すまんなぁお嬢ちゃん。」

崋山ことりは無視を決め込んだ。こいつら、煩い。

「在校生さんやもんね、ざっくりテニス部の場所教えてくれたらええから。」

こいつ、保護者か?ノリが軽い。
保護者以上に背が高いやついるけど、制服着てるから、生徒だろう。デカすぎるけど。

ていうか、テニス部になんの用だ?


「・・・あれ、」
「どないしたん?」

「ここどこだ?」

さっきと道が違う、気がしなくも無い。いやいや気のせいだよ。

「右だ。」
「右やねんな。」

保護者が先に右に曲がる。・・・あれ?

「左か!」

そっち体育館だった気がする。

「おお、左か!」

そういうと、今度は左へ歩く。・・・こいつ面白い。

「なぁ、オサムちゃん。」

金髪の男子が言う。
なんだ、目があったぞ。

「あ、上だったかも。」

とかいって。このチューリップハットどうするのかな。
おー、なんかみんなこっち見始めたな。

「せやせや、飛ぶんやったね、ってんなアホな。」

・・・ノリッコミだ。
さすが関西人、返事が早い。

「・・・なんで、頭撫でるんですか、」
「何でやろね?」
「セクハラで訴えますよ。」

馴れ馴れしいな。
軽めに睨みつけるけど、大人には通用しなかった。アタシもまだまだ未熟だな。


「ていうか自分ホンマは道わからんのちゃう?」
「せやで、よううちの監督弄り倒してくれるやん。」
「いやぁん、お笑いのセンスあるでっ。」

変な包帯、金髪、坊主が次々に言う。ばか言わないでよ、アタシ在校生だよ?熟知してるわ。

「なによ、案内してあげてるでしょ。」


多分。

「そうばい、感謝せんと。」

「・・・アンタ背が高いね。」
「最高の褒め言葉たい。」

褒めてないし。

「ちょい待ち!何自分小春に褒められとんねん!シバクぞ!」
「はぁ?なんでアンタに言われなきゃなんないわけ?いてこますぞ。」
「なんで自分まで関西弁になっとんねん。」

バンダナも包帯うっさいなぁ。
早く帰りたいんだけど。

「どうでもいいっすわ。はよ行きましょ。」

面倒臭そうだなぁ。うん、アタシも面倒。

ていうか、
「ピアス開けすぎじゃない?」
「ちょ、なんすか、近いっすわ。」

「あ、ごめん。」

このピアスはなんか動きが可愛いな。ごめんね、耳ガン見して。
あ、離れないでよ。

「ざ、財前が照れとる!」
「お赤飯やな!今日は!」
「勘違いせんといてくださいよ、先輩らマジうざいっすわ。」



・・・帰りたいなぁ。













「はいぃ?ことりがまだ帰って来ない?」

乃亜は間抜けな声を出した。

「うん、備品発注行ったの1時くらいだったんだけど・・・。」

時計の針は4時に近づいている。乃亜はその時計を眺めたあと、んー、と唸る。
三時間はさすがに遅い。

備品の売っているスポーツショップは徒歩でも20分、備品のメモは渡すだけ、帰り20分。寄り道さえしなければ、多く見積もっても一時間で帰れる。


それに、寄り道に2時間は多すぎる。

「迷子じゃないのー?」
「ことりちゃんはしっかりしてるからそれは無いよ。トラブルに巻き込まれてないといいけど・・・。」

心配そうに教子は門の方を見た。






「もう4時やん、部活終わってまうで、オサムちゃん。」
「おー、それはあかんなぁ。」

そのまさかであった。

「いつまでついてくるんですか?うっとうしい。」

終わる気配も、辿り着く気配もないことりwith四天宝寺。

「(もう4時とか、完璧に跡部にキレられるし、教子は・・・)泣くわな。」
「案内してくれる言うたやん。」
「言うてへんし。」

この包帯野郎は部長らしい。シライシ、らしい。

「だからなんで移っとんねん!」
「しらんわ、いてこますぞ。」

この金髪はケンヤ。
一番うるさい。

「自分いてこます気に入っとるやろ!」

ケンヤうるさい。


「なぁねーちゃん!いてこますって悪い言葉なんやて!」

そしてこの子が金ちゃん。
一番可愛い。この子欲しい。

「うふふー、そうよー、だから金ちゃんは使っちゃダメよー。」
「ねーちゃんはええの?」
「アタシはいいのよ、お姉ちゃんだから。」

そういってことりは遠山の頭を撫でる。遠山はニコニコと嬉しそうに笑う。


「なぁ、白石、この女金太郎にだけ態度違わへんか。」
「ちゃうで、謙也。財前にも甘いで。」

四天3-2ペアがひそひそと話す。
忍足は今一度ことりの方に目をやったのち、不服そうな顔をした。

「ちゅーかシカトされたんやけど。」
「そりゃ謙也先輩がうざいからちゃいます?」

「・・・ホンマ可愛くない後輩やな。」


小憎たらしい発言をする後輩の頭を軽く叩けば、彼は嫌そうな顔をする。それはそれは、心底嫌そうな顔を。

「俺は財前大好きやで。」

「・・・何言うとるんですか。」


白石の屈託ない笑顔に、財前は頭を掻いたのち、そっぽを向く。

「財前が照れとる・・・。」
「さすが白石やで。・・・小春!デレてもええねんでっ!」
「千歳くん、お腹空かへん?」
「腹ペコばい。」
「聞 い て へ ん し !!」

一氏はがくりと肩を落とす。







「遅えぞ崋山。・・・・・・なんで四天宝寺がいんだ。」

我らが部長、跡部景吾のお迎えでやっと、ことり、四天宝寺は安堵のため息をつくのであった。






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