のううた | ナノ

掃除、小掃除、大掃除



「なんだと、やんのかコラァ!」

「上等だ!かかってこい!」


どうしてこんなことになってしまったんだろう。
ことりはハァ、とため息をついた。
学校もマネージャーも分けて、掃除をすることになった。ことりは食堂係になったのだが、少し面倒だ。青学が。

「あんた達、この親睦会で何回喧嘩したのかなー?飽きない?飽きるよね?」

桃城と海堂の間に入り、仲裁に入る。海堂目つき悪いなぁ。

「俺は真面目にやってますよ!海堂が」
「ああ?!もとはテメェが悪いんだろうが!!」
「ハァ?なに人のせいにしてんだよ!!」

華麗にことりを避け、取っ組み合いになる。これで3度目だ。多すぎだ。

「桃!海堂!いい加減にしないか!」

ごめんね、崋山さん。大石は申し訳なさそうに告げ、2人に呼びかけるが、まるで聞こえていないみたいだ。副部長なのに、威厳が無いなぁ。

「ことりー!床掃き終わったぜぃ。モップやるなー。」

「あ、うん。ありがと、」

そこにやってきたのはブン太。昨日、「俺はことりって呼ぶぜぃ。だからことりもブン太でシクヨロ。」とピースをしなが、言われてしまった。ので、ブン太呼び。
海堂と桃城が喧嘩している不戦力な青学と違って、ブン太、仁王、切原は熱心に仕事している。


「ハァ。乃亜先輩と別だった。」
「赤也も物好きじゃな。アレが好きだなんて。」

仁王はこわこわ、と切原をからかう。アレを好きになるなんて。
撫でてもらったから?優しかったから?それとも顔?


「崋山さん。」
「・・・ん?」

滝が横から覗き込む。
そして微笑する。

「また、ぼーっとしてたよ。」

彼はそう言ってテーブルを拭き始める。なんでもないよ、と短く返して、ことりは椅子を拭き始めた。

ここにきて、今日で三日目。いつ、帰れるのかな。弟が心配だ。乃亜には過保護だって言われるけど、そんなこと無い。一人っ子にはわからないんだよ。



「ことりー。差し入れぃ。」

「え、・・・うわっ。」

ブン太が笑顔で何かを投げる。なんとかキャッチできた。ガム・・・だろうか。

「グリーンアップル。気に入ってんだ。一個やるよ。」

ブン太はそう言ってガムを膨らます。かわいい。
ありがとう、と返事をして口にいれる。ほんのり甘い味がする。

ブン太といえば、お菓子が大好きとか。乃亜が大好きだから、ガムをもらった事、羨ましがるかな。まぁ、食べたけど。


「あ、俺もあげるね。」

それを見た滝がアメをくれた。棒付き。いちご味。

「いつもはジローにあげるんだけどね。」
「ありがとう。」

ポケットにしまう。ジローちゃんにあげるやつをアタシが受け取ってもいいのだろうか。でも滝がすごい笑顔だから、帰りのバスで頂こう。

「おい、滝。」

宍戸が機嫌悪そうに口を開く。切原は謝ってきたけど、宍戸は敵意むき出しの目をしている。
滝はため息をついて宍戸の方へ歩いて行った。


「宍戸さんは・・・いい人です。」

先に読み取ったのか、樺地が言う。

「大丈夫よ。」

宍戸はいい人だよね。多分気に入らないんだよ。いきなり知らない奴らがマネージャーになるの。我が者面でいるの。
わかってる。わかってるけど。多めに見てよ。アタシらなにも出来ないもの。跡部に縋るの、許してね。



「やってけるかなぁ・・・。」

「大丈夫じゃないかな。」

今度は大石だ。手に持っていた花瓶を取る。そして彼は笑顔で告げる。

「跡部君の家にお世話になるんだろ?跡部君、性格はあんなんだけど、すごく仲間思いだって、手塚が言ってたし。」

それに、

「俺たちにできる事があれば手伝うよ。その・・・気分転換とか?」

大石、いい奴だな。
なんか安心感あるな。威厳ないけど。

「じゃあ期待してる。」

凄く。
なんて言えば、彼はお決まりの「こりゃ大変。」と苦笑いをした。













「じゅ・・・重労働。」

教子は深いため息をついた。このメンバー凄く真面目?な人ばっかりで本当サクサク進んでるんだけども。流石に動きが早くて、申し訳なくて、「あ!私しまいます!」とか言っちゃったんだけども、多い。

「ね、ネットオッケー、トンボもしまった。」

なんかね、3校いるから当たり前なんだけど、多い!多すぎるし!倉庫遠い!!忍足君が手伝うって言ってたけど、みんな早いもの!私だけ役立たずは嫌だよ!

「後はボール!」

カートはあるけど、6台!何回往復すればいいの!痩せれるね、これ!最近体重増えちゃったから頑張らなきゃ!

「よーし!乃亜ちゃん風に行くなら這ってでも運ぶぞ!頑張れわた・・・きゃー!!」

カート倒しちゃった!折角みんなが早く終わらせてくれたのに!バカ!私のバカ!


「佐倉さん大丈夫?」

豪快にやったね、と幸村君が言った。み ら れ た !!

「ごごごごごめんなさい!折角皆さんが早く終わらせてくれたのに私ってばぁーっ?!」

頭下げたら後ろのカートにお尻ぶつかった!二台目ぇぇえええ?!えええええ?!

「注意力が足らんぞ。」
「ごめんなさいっ!!」

「真田、そんな事言わないの。」

ゆゆゆ幸村君!真田君は悪くないよ!私が悪いんだから!
真田君も真田君ですまないとか言わないでよ!私が悪いんだから!

「佐倉、ジャッカルがいないと意外とドジなんだな。」

柳君の目!怖い!ていうか見えてるのかな?!

「今、失礼な事を考えてる確率100%」
「いいいいいいえ!滅相もございません!な、何を仰るんですか、いやだなぁ!!」


この人たち怖い!幸村君は優しいけど!だ、誰か!

お、おおお忍足君!口元抑えてる!絶対笑ってる!意地悪!

「だ、大丈夫ですか?佐倉先輩!!」

鳳君が走ってきた。怖っ?!背が高いから迫力ある!


「幸村さんも真田さんも柳さんもすみません。うちのマネージャーなので、後始末はうちでやりますから。」

日吉君・・・心が痛い。私のミスだから、2人ともいいんだよ。

「あ、あの、私一人で十分だから。」
「このままじゃ日が暮れてしまいそうなんで。」
「日吉!そんな言い方無いだろ!いいんですよ、佐倉先輩、元々俺たち後輩の仕事だから。」

鳳君、巨人だけど、いい人だなぁ。日吉君は怖いけど。
幸村君は、じゃあお願いするね、と言って、真田君と柳君を連れて歩いて行った。

あの人達、乃亜ちゃんが言うには立海の3トップなんだって。もうオーラが違うよね。私、消滅しちゃうよ。空気重いよ。

「じゃあ、俺、他の奴運んできます!」

鳳君はそう言って走って行った。速い。やはり速い。私も運動部だけど、全然だなぁ。これでも一応副部長だったけど。



「すみませんね、こういう喋り方なもんで。」

日吉君はそう言いながら、ボールを拾う。

「ぜ、全然。日吉君の言ってる事間違ってないし・・・私、鈍臭いのかなぁ。」
「さぁ?俺にはわかりませんが。」

直球だなぁ・・。

「他は俺と鳳でやりますんで、貴女は手塚さんにでも報告しといてください。」

あはは、戦力外通告だ。これ、結構くるんだよね。いや、日吉君は素直に言ってくれるから、何も言わない人よりいいか。


「わ、わかっ」
「勘違いしないでくださいね。別に鈍臭いからとかじゃなくて、転びかねないんで。」

日吉君がこっちを見て言った。けれど、違うな、と呟いてから、また口を開く。

「このままだと、転んで怪我しそうなので、・・・いや・・・。・・・
怪我したら心配するでしょう?」
他の2人が。

そう言って日吉君は歩いて行った。・・・彼も心配してくれているのだろうか。何度か首を捻っていたあたり、かなり言葉を選んでくれたみたいだ。

と、年下に気を使わせちゃったよ。



「とりあえず、手塚君に報告を、」
「その必要はない。」
「きゃっ?!」

びっくりした・・・。後ろにいた。あ、あのね、私思うんだ、幸村君、真田君、柳君はそうなんだけど、手塚君もオーラあるよね。・・・跡部君は・・・。乃亜ちゃんが「あいつらナルシーの塊だから」って言ってて、よくわからないや。


「驚かせてしまったか。すまないな。」
「ふふ、ごめんね、佐倉さん。手塚って堅物だから。」

えー、と。確かフジ君。
そんなフジ君に首を横に振って否定する。

「わ、私ほぼ仕事増やしてしまいましたが、い、一応日吉君と鳳君が終わったら終了です。」

じ、時間差で涙出そう。と、トンボとネットはしまったもん。仕事はしたもん。

「ああ。ありがとう。」
「あ、佐倉さん。跡部に報告お願い出来る?」
「はいっ!必ず遂行してみせます!!」

これ以上迷惑をかけてはいけない!これは副部長として全速力で行く!陸上部じゃないけどね!



「・・・すごい速さで行っちゃったね。」
「空回りしすぎだな。」

「ああいう子、好きでしょ。手塚。」

「・・・嫌いではない。」












「・・・その打球、消えるよ。ってい!!」
「浴槽に石けん投げ込んでんじゃねーよ!!」

某天才プレーヤーの真似をしながら浴槽に石けんを投げ入れた乃亜は、向日に思い切り怒鳴られた。

「ちょっと言ってみただけじゃーん。ちゃんとやってるでしょー。それよりクオリティ。クオリティを教えてくださいよ。」

確かに浴槽内に石けんは投げ入れたが、タイルのブラシがけは何故か一番速い。

「中々上出来だったよ。良いデータが取れた。」
「あざっす!でもそれは彼のデータじゃなくてあたしのデータだけど!」

問題無いよ、と乾は言い、ものすごい速さでノートに書き込む。変な奴、と乃亜はポツリと告げ、ブラシがけの続きをする。


「いやぁ〜実際このお掃除ってどこが一番きついのかなぁ?やっぱ教子のコート組かな。いやいや、お風呂場だって・・・はっ?!」

独り言である。気がついてしまった乃亜はデッキブラシを落とす。カラン、と倒れた音と共に、何故か静まり返る大浴場。

「どうなされたのです、荒波さん。」

柳生がデッキブラシを掴んで渡す。彼女はそれを受け取りはせず、柳生を勢いよく見た。


「に、にににに仁王さんがお使いになられた大浴場!」
「俺ら全員使ったけどな。」

乃亜の言葉に答えたのは桑原。椅子を洗っている。

「・・・ええと、荒波さん?」
「し、ししししし神聖なる場所でございまするね?!わ、わたくしめみたいなゴミ屑が足を踏み入れてはいけない聖地か!!」

「美化しすぎだし自分のこと卑下しすぎだろ。」


困惑する柳生をよそに、乃亜はああ!と頭を抱える。それにくらべて、桑原は黙々と仕事をしている。


「ちゃんと仕事しろよなー!佐倉っちや崋山っちは真面目っぽいのに!」
「ちゃんとやってるよ!言っとくけど、この大浴場の前に全トイレやったんだぞ!あと何そのあだ名!佐倉っち崋山っち?じゃあ荒波っちか?語呂!語呂悪!」

菊丸がぶすり顔で言う。
それに対して乃亜は、柳生からデッキブラシを受け取り、お礼を言ってから作業を再開させた。しかも2倍速。
そして続けながら菊丸に言う。


「今呼び方の話じゃないし。それにあんた誰。」
「名乗ったのにか?!ちょっとサボった分、こうやってスピード上げてるのに、なんて仕打ちだ!」

「ま、まぁまぁ、英二も荒波さんも落ちついて。」

乃亜と菊丸の間に入ってきたのは河村。困った顔で2人を止める。

「そうですよ、今は掃除の時間ですよ。」

柳生も止めに入る。


「やぎゅう。」


「・・・和牛みたいに言わないでください。」

「や牛・・・ジャッカル・・・地黒・・・クロ・・・黒毛?黒毛和牛!焼肉!焼肉ペア!焼肉!仁王さん!!」

柳生の後ろで黙々と作業しているジャッカルを見つめる乃亜。流石ハーフ。真っ黒だ。その発想から最終的に仁王に持っていく。恐ろしい頭だ。

「・・・何故、仁王君なんです?」

「焼肉好きでしょ?男子は。男子=仁王さんだから。」

乃亜は満足そうに告げ、浴槽内っ、と嬉しそうに浴槽の方へ歩いて行った。



柳生は首を傾げ、ため息をついて作業を再開させた。


「浴槽内、洗う!あたし洗う!」

はいはい!と乃亜は手を上げる。

「好きにしろ。流すぞ。」

そう言って跡部が動こうとした瞬間、

「芥川アターック!!」
「ぐはっ?!え?!」


何事かと振り返ろうとしたが時既に遅し、振り返る事も叶わず、乃亜は浴槽の中に豪快に飛び込んだ。

いや、正確には芥川が猛スピードで抱きつき、バランスを崩した乃亜は、芥川と共に浴槽の中に落ちた。


「・・・ジロー。」
「ゴホッ。びっくりした・・。」
「んー!気持ちEー!」

呆れ顔の跡部に対し、乃亜は困り顔だ。そんな2人を他所に芥川は楽しそうだ。

「くそくそジロー!仕事増やしてんじゃねーよ!」
「何だよー!別に向日は仕事増えて無いだろー!」

怒る向日を他所に、芥川は正論?を言う。そして乃亜を抱きしめる手は止めない。

「あのー、離してくれないかな?溺れる。」

「・・・溺れちゃおっか!」
「は?いや、まっ・・」

ザバァッ、と言う音と共に芥川は乃亜を抱きしめたまま浴槽に潜り込む。もちろん予想していなかった乃亜の手のバタつきが見える。

跡部は深いため息をしたのち、浴槽内に入り込む。そして芥川を引き剥がす。

「遊ぶのは後でにしろ。」
「ちぇー。」

「ゴホッ・・ゲホッ。(あいつ、見た目の割に力やばい。)」

制服重いー!などと言いながら、とりあえず芥川から離れる乃亜。そして、あ、と言葉を漏らす。

「どうしたんだい?」
「着替え、無いわ。」

パジャマは百合さんから貰った。でも今持ってるのは鈴ノ宮の制服のみ。え?3日間着っぱなしかって?のんのん!洗って貰ってますよ。で、干したてを着ていたんです!今日このまま買い物の予定なのに。

「パンツまでびしょしょだ。」
「・・・はしたない事言うんじゃありません。」

スカートをバサバサと動かし、少しでも乾かそうとするが、ただ、重い。スカートの中に更にショートパンツも履いているが、何も守れなかった。

「着替えるぞ、ついて来い。」
「わっ!」

どこから持ってきたのか、跡部がバスタオルで頭を拭き始める。

「ちょっと待って、痛い。」
「・・・。」

ちょっと乱暴ではあるが、世話焼きなんだろうか。乃亜は一応されるがままで考えた。
まだ、俺様の部分も見ない。


漫画の中と少し。ほんの少し違うかもしれない。








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