バレンタイン(黒尾、柳)  top



部活も引退してしまうと、意外と会話する機会が減るもので、1週間話さないことが普通となっていた。
部活のマネージャーって、引退と共に切り離されてしまうのだから結構悲しいものかもしれない。

部員同士ならまだしも、男と女っていう性別の違いも大きいのかもしれない。ほら、引退したのに一緒にいるのって、もしかしてできてるんじゃね?とか思われること多いし。実際、何組かはいたし。


私が男だったら、元チームメイトとして、今も楽しく放課後に遊びに行けたのだろうか。でも残念なことに、女だから、無理だろう。むしろ、彼らが1月まで引退しなかったことをありがたく思おう。だからこそ私も1月まで残った。それまで、マネージャとして関わってこれたのだから。

そして卒業まであと1ヶ月。もう彼と会うことはないのだ。最後のチャンスとして、普段やらないお菓子作りをした。女子はすぐ友チョコ、とチョコレート交換をするが、正直あれは苦手だった。
そんなに良べたいなら市販の買った方が安くて手間もかからないし確実に美味しいのに。それに、バレンタインだからチョコ渡して告白って、べつにいつでもいいじゃんか。成功率でも上がるのか。

けれど、そんな風に屁理屈垂れてないで、素直に便乗していればよかった。すごく苦戦した。クッキーは半分焦がしてしまったし、チョコは所々溶けきれてなかった。

結局姉に泣きついて、作り直した。今更ながら、市販のにすればよかったと後悔している。けれど、今日が最後のチャンスなのだ。泣いても笑っても、今日で、終わる。
密かに温めていたこの恋心を、今日で終わらせるのだ。

卒業してからも引きずりたくない。私は今日、彼に告白する。



はずだったのだ。







「こちらこそ、よろしくお願いします。」

放課後に呼び出した彼には先約がいたみたいだった。
私が着いてからすぐにやってきたので、慌てて隠れてしまった。彼女は、彼のクラスでよく見かける子だった。
よく夜久君と黒尾と話しているのを見かけたことがある。
呼び出し場所が被ってしまいと申し訳なく思ったが、まさか呼び出した相手も同じたとは思わなかった。

出口は2人の視界に入るため、出るに出れず、盗み聞きする形で、告白シーンを聞いてしまった。結果、まさかの両思いだ。

こんな失恋の仕方ってある?もしも、私が先にポジションを陣取っていたら、こんなことにはならなかったのでは。

もちろん、私が付き合えたわけじゃなく、正式に振られたかった。正式って何だよ、って感じだけど。
2人が恥ずかしとうに遠のいてくいくのを、物陰の際間から見届けることしか出きなかった。

終わった。こうも簡単に、あっさりと私の長い片思いは幕を、閉じた。なんておそ松な結果だったのだろう。

「泣きたいなら俺の胸貸してあげるけどどうよ?」
「は?」

夜久君がいなくなってから、黒尾がゆっくりとこちらに近づいてきた。 
目つき悪、と黒尾が言ったので、たまらずにらみつけてしまう。


「夜久は、ゴリゴリに押してたけど、女子の方がにぶくてねー。でもまぁあいつから告白したんだ。」
「・・・そ、そうなんだ。」

同じクラスだから知っていたんだろう。私、彼の事知らなかったんだな。よく、見てたのに。

「でも、あの子よく夜久君と話してたもんね。でも確かに、お似合いじゃん。」
「強がんなよ。」
「強がってないから!」

私も同じクラスだったら、もう少しチャンスあっただろうか。あの子は知ってるのだろうか、試合中の彼のかっこよさを。部活での頼もしさを。仲間想いですごくいい人だってことを。きっと、知らないだろう。
私はそれをを知っている。それを知っている私の方が、きっと彼女よりも近い距離にいたはずなのに。

なんて、変なマウントを今更取ったとこで、何も変わらないのだ。

「・・・バカみたい。」

仮に同じクラスになったとしても、選ばれなかっただろう。きっと、どうあがいても、あの子と彼だったのだ。

何が最後のチャンスだ。最初からチャンスなんてなかっなじゃないか。こんなものまで作って、自分が恥ずかしい。

「やめろよ、せっかく作ったのにぐちゃぐちゃになんぞ」
「いいよ、もう必要ないし。」

さすがに持って帰るのは嫌だ。浮かれていた自分を殴りたくなる。

「じゃあ俺にくれよ。」
「・・・何言ってるの?これ、夜々君に作ったんだよ。」

「知ってんよ。」

自分ではない人に作ったものだよ?そんなものもらっても嬉しくないでしょ。
むしろ、むなしくないのか。

「好さな子からのチョコって欲しいじゃん。たとえ義理でも。」
「・・・え?」
「せっかく夜々のためにマネージャーが作ってくれたたったひとつのチョコ、当の本人はもらえないなんて、かわいそうだよな。」

黒屋は私から強引に小袋を奪い取った。

「大体お前も、夜久とか見る目なさすぎ。目の前にこんな良い男がいるのに。」
「ちょっと、」

そして徐に封を開け、口に入れた。

「料理下手なのに、お菓子はうまいじゃん。」
「ねぇ、ちょっと待ってよ。」

情報が追いつかない。一体彼は何をしているんだろう。

「早く夜久のこと忘れれるように、俺も協力するからさ。」



来年は本命チョコ待ってます。

黒屋はそう言って、先に歩いて行ってしまった。








×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -